Audi Q3 / Q3 Sportback
アウディ Q3/Q3 スポーツバック
ニッポンの至宝。トヨタ センチュリーが徹底する「おもてなし」性能 【Playback GENROQ 2018】
人気のコンパクトSUV&スポーツバックを国内初試乗
そのコンパクトなボディサイズとプレミアムな立ち位置から日本戦略車として大きな期待を寄せられている新型「Q3/Q3 Sportback」が、とうとう上陸。この「35 TDI quattoro」に試乗することができた。
その発表は2018年夏だから、随分長くかかったものだ。しかし8年ぶりにフルモデルチェンジした姿をこの目で見ると、やはりその目新しさには大きく心惹かれた。
搭載されるエンジンは2.0リッターの直列4気筒ディーゼルターボ「2.0TDI」。ユーロ6D-TEMPの基準をクリアしたこのエンジンは、150ps/3500~4000rpmの最高出力と、340Nm/1750~3000rpmの最大トルクを発揮し、7速Sトロニックを介して4輪を駆動する。
現時点での日本仕様はこのほかに、ガソリンエンジン仕様の「35 TFSI」が存在する。これに搭載される1.5TSIは最高出力で150ps/5000~6000rpm、最大トルクは250Nm/3500~4000rpmを発揮。駆動方式はFFとなっていたが、今回はSUV/Sportback共にディーゼルエンジンの試乗となった。
居住性の大幅な向上が印象的な新型Q3
ボディバリエーションは前述の通り2種類で、よりコンベンショナルなSUVボディとなる「Q3」と、クーペボディの「Sportback」を用意。まず最初に試乗したのはQ3のSラインで、その足下にはスポーツサスペンションと19インチホイールが奢られていた。
新型でまず何より新しくなったのは、その顔つきだろう。Qシリーズのファミリーフェイスとなるオクタゴンシングルフレームグリルは、そのトリムがつや消しのシルバーフレームとなり、バンパー脇のエアインテークやサイドステップにも、多角形トリムが施されていた。フラグシップSUVであるQ8ほどの迫力はないが、先代後期モデルよりも押し出し感のある、なおかつクリーンな見た目である。
ボディサイズは全長×全幅×全高が4495×1840×1610mmで、ホイルベースは2680mm。試乗車はSラインとなるため全長が5mmほど長いが、標準モデルで先代(2.0TFSI quattoro)と比べるとその全長は95mm長く、全幅は10mm広く、全高は35mm高い。そしてホイールベースは実に75mmも長く、ここに居住性の大きな向上が見られた。
キビキビと爽快な走りと俊敏な操舵応答性をみせる
ちなみにクーペモデルであるSportbackは、Q3 SUVよりも全長が10mm長く、対して全高は45mm低い。あと10mm低ければ標準的なタワーパーキングに入庫可能だが、現実的には全幅がパレットぎりぎりという感じだろうか。ラゲッジ容量は、通常時で530リットル。リヤシートを倒すとQ3ではこれが1525リットルまで、Sportbackでは1400リットルにまで拡大される。
Q3を走らせた印象は、ひとことキビキビと爽快だ。試乗車は足まわりを引き締めているせいもあったが、ボディの大型化を感じさせないほどに操舵応答性が俊敏である。
ここには標準状態で14:1、そしてこれを回すほどに切れ角を増やして行くプログレッシブステアリング(フルロックで11.4:1)の効果が大きいようだ。Q3サイズのコンパクトSUVであればコスト的にはもちろん、こうして前輪で切れ角を増した方が後輪操舵で回し込むよりも後席乗員の乗り心地を確保できるのかもしれない。
ボディサイズは拡大したが、ひとまわり小さなボディを走らせている感覚だ
エンジンは低速から、ほどよい力強さを発揮する。ガソリンエンジン車(1530kg)よりさらに重たい1700kgの車重ゆえ、圧倒的なトルクの押し出し感とまではいかないが、出足軽やかにゼロスタートを決め、常用域まですみやかに速度を乗せてくれる。
今回は高速巡航を試す機会はなかったが、その分ワインディングを走らせると、これがまた見事だった。このクワトロ(ディーゼルエンジンに標準装備)はFFベースの4WDだが、前述したステアリングのほどよいクイック感や内輪ブレーキの連携が、ノーズをコーナーの内側へと極めて自然に曲げ込んでくれる。
そしてアクセルを徐々に踏み込んでいくと、実にバランスよくトラクションをかけていく。サスペンションが常に大地を捉え、4輪全体で曲がりながら進んで行く感覚は、さすがアウディ! と唸らされる部分。ボディサイズの拡大を意識させるどころか、ひとまわり小さなボディを走らせている感覚である。またこうした時在感は、雪道でも大きく役立つだろう。
Sラインが持つシャープさは、若い購入層には喜ばれるかも
惜しいのはディーゼルエンジンのレスポンスだと、7速デュアルクラッチの切れ味を活かしきれないこと。ここはきっと1.5TFSIに軍配が上がると思われる。
乗り心地は少し硬め。高周波は巧みに遮断されているのだが、フロアからは低周波ノイズが割とはっきり入ってくる。大径化されたタイヤから伝わるザラザラ感が、熱間成形スチールを始めとした高強度スチールに響いている印象。高級感という意味ではA4以上のクラスが持つ静粛性、そのヒエラルキーを超えられない。ここ数年アウディが目指す、EVシフトにも通ずるしなやかさと静粛性は表現されていなかった。
だがこれも、ターゲット購入層の若さ(20代後半~40代)を考えれば納得か。むしろSラインが持つシャープさの方が、彼らには喜ばれるのかもしれない。また、よりしなやかな乗り心地を望むなら、標準仕様の足まわりに17もしくは18インチのオプションホイール(鍛造)を組み合わせればよい。
ボディ形状の微妙な変更が走りに現れるスポーツバック
格子グリルをハニカム柄としたSportbackは、その微妙なボディ形状の変更が、走りにもじわりと現れているように感じた。重心移動の少なさが影響しているのか、まず身のこなしが若干落ち着いている。つづら折りのワインディングなどは、スッと自然に切り返せる。こうした動きは、高速巡航でもう少し大きく現れるだろう。落ち着きのあるSUVに対して、スポーティなSportback。その見た目の印象と運転感覚が反対なのは、物理の法則によるものか。だからこそSportbackは、Q3 SUVよりもアベレージを上げて走らせることができる、とも言える。
そうなるとSUVとSportback、どちらを選ぶか?
ホイールベースは同等で、後部座席は5cm弱ほどSUVの方がヘッドクリアランスが広い。身長171cmの筆者が後部座席に座った印象はSportbackでも不満なし。女性や子供なら、なおさら問題はないように思われる。となるとリヤシートを倒したときのラゲッジ容量差(125リットル)だが、それでも十分な実用性と美しさのバランスから筆者は断然Sportback推しである。
ともあれ現代的なイケメンルックと実用性、そしてクワトロらしい走りを両立したコンパクトSUVが、ディーゼルでも600万円を切る価格から狙え、ガソリン仕様であれば400万円前半からというのは魅力的。オプションを足すと一気に現実へ引き戻されそうな気もするが、そこは賢く選ぶべし。遅れてきたQ3は、ここで再びアウディの稼ぎ頭となることだろう。
REPORT/山田弘樹(Kouki YAMADA)
PHOTO/長谷川 徹(Toru HASEGAWA)
【SPECIFICATIONS】
アウディ Q3 35 TDI クワトロ S line
ボディサイズ:全長4495 全幅1840 全高1610mm
ホイールベース:2680mm
車両重量:1710kg
エンジン:直列4気筒DOHCインタークーラー付ディーゼルターボ
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
最高出力:150ps(110kW)/3500–4000rpm
最大トルク:340Nm/1750–3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:4WD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ウィッシュボーン
タイヤサイズ:前後235/55R18
車両本体価格(税込):543万円
アウディ Q3 スポーツバック 35 TDI クワトロ S line
ボディサイズ:全長4520 全幅1855 全高1565mm
ホイールベース:2680mm
車両重量:1710kg
エンジン:直列4気筒DOHCインタークーラー付ディーゼルターボ
総排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
最高出力:150ps(110kW)/3500–4000rpm
最大トルク:340Nm/1750–3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:4WD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ウィッシュボーン
タイヤサイズ:前後235/50R19
車両本体価格(税込):563万円
【問い合わせ】
アウディ コミュニケーション センター
TEL 0120-598-106
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