2020年は全4戦の短期集中決戦となるTCRスカンジナビア・シリーズこと、STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権が8月14~16日の週末に開幕。最新モデル『CUPRA Leon Competición TCR(クプラ・レオン・コンペティションTCR)』を投入したPWR Racingの王者ロバート・ダールグレンに対し、Lestrup RacingやKågered Racingのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR勢がそれぞれ勝利を飾るなど、チーム王者Brink Motorsportを含めたPWR包囲網が機能。また、WTCC世界ツーリングカー選手権の2012年王者で、今季からSTCC参戦を果たすロブ・ハフ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/Lestrup Racing)も、連続表彰台を獲得するなど上々のデビューを飾っている。
スウェーデン・カールスタッド近郊に位置し“カールスクーガ・モータースタディオン”としても知られるゲラーローゼン・アリーナ。その伝統的トラックを舞台に8月までずれ込んでの開催となった2020年シーズン開幕戦には、北欧ツーリングカー界の実力者全14台が揃った。
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その先陣を切って1本目の公式練習からコースレコードを更新したのは、2017年と2019年のSTCCドライバーズチャンピオンでもあるダールグレンで、CUPRA RacingオフィシャルパートナーでもあるPWR Racingが、新型モデルで幸先の良い公式セッションデビューを果たした。
しかし2回目の公式練習と続く予選で意地を見せたのは、アウディRS3 LMSの3台体制を敷くBrink Motorsport勢で、プラクティス2ではハンス・モーリンが、公式予選ではトビアス・ブリンクがラップレコードを更新。Q2で1分05秒923の最速タイムを記録し、王者ダールグレンをわずか0.010秒上回ってのポールポジションを決めて見せた。
その背後となるセカンドロウ3番手にはこれがSTCCデビュー戦のハフが続き、首位から0.101秒差と扱い慣れたゴルフGTI TCRで好タイムをマーク。その背後には、ダールグレンの僚友でSTCC史上初の女性ウイナーでもあるミカエラ-アーリン・コチュリンスキーが入り、世界王者ハフとの差もわずか0.002秒差の4番手とワールドクラスの実力を披露した。
加えて、彼女がドライブする新型クプラ・レオン・コンペティションTCRはスウェーデン到着が遅れたため、ニューマシンとはわずか2日間のテストのみで迎えた開幕戦だった上に「実は昨晩から食中毒に苦しんでいて、今朝は本当に大変だった」というコンディションでの4番グリッド獲得と、27歳のコチュリンスキーが開幕前公式テスト最速の実力を遺憾なく発揮する結果となった。
■VWのワン・ツー・フィニッシュかと思われたが……
明けた日曜午前11時過ぎからスタートを迎えたレース1は、今季から改訂されたスポーティングに従い予選Q1結果のみでグリッド確定となり、ポールポジションにはオリバー・セーデルシュトレーム(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/Lestrup Racing)が着き、フロントロウにハフが並んでのスタートに。
しかしチームメイト同士で対照的な発進となり、ホールショットを決めたセーデルシュトレームに対し、ハフは蹴り出しが悪く一気に5番手にまで飲み込まれてしまう。
代わって2番手に躍進してきたのがQ2最速男のブリンクで、オープニングから力強いペースを見せたアウディは、勢いそのままに最終コーナーで若手セーデルシュトレームも仕留め、早々にトップを奪ってコントロールラインへと戻ってくる。
一方、新型クプラのPWR勢は苦しい戦いを強いられ、ダールグレンは5周目にハフとの勝負に敗れると、その後は2台目のアウディRS3、モーリンとのバトルに。すると8周目にダールグレンをかわしたモーリンは、続けざまにコチュリンスキーとアンドレアス・アールベルグ(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/Kågered Racing)らもパスするなど躍進を見せ、この際のバトルでコチュリンスキーは新車のリアサスペンションを破損するダメージを負ってしまう。
するとこの大暴れを合図に実力者たちの挽回が始まり、タイヤを使い切ったモーリンにダールグレンが逆襲し、ふたたび5番手のポジションを奪還。一方、首位を行くブリンクのアウディにも異変が起き、右ヘアピンの“Ejes(エイエス)”でミスを犯し、ふたたびセーデルシュトレームに首位を奪われる。
一方、4番手を走っていたハフも周りのドロップダウンを合図に反撃を開始し、11周目にはエミール・パーソン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR/Kågered Racing)を仕留めて3番手へ。さらに前を行く2番手ブリンクとの差も縮めると、アウディ首位陥落となった同じエイエスコーナーでボディを擦り付けながらオーバーテイク。これでハフは2位浮上を果たし、Lestrup Racingがワン・ツー体制を築き上げる。
しかし、レーススチュワードはこの際の動きが「危険行為」に該当するとしてレースタイムに5秒加算のペナルティ裁定を下し、チーム側からはレース後の抗議が出されるも覆らず。2位に7秒のマージンを築いた若手有望株のセーデルシュトレームが開幕戦で初勝利を飾り、2位ブリンク、3位パーソンに続き、ハフは4位でSTCC初戦を終えた。
■レース2もタイム加算でリザルトに変動あり
同日午後14時からのレース2は予選Q1とQ2の合算タイムがグリッドに反映され、ブリンクのアウディがポールからスタート。フロントロウにダールグレン、セカンドロウ3番手からハフのゴルフが1コーナーに向け加速していく。
17周のレース終盤までこのポジションに変動はなかったものの、2番手ダールグレンはハフからの猛追を受け、つねにミラーでの確認を強いられる厳しい展開に。その背後では6番手スタートだった前戦勝者セーデルシュトレームが華麗なオーバーテイクショーを演じ、ハフの背後にまで浮上してくる。
そのままトップチェッカーを受けたのはアウディRS3 LMSのブリンクだったが、レース中盤にはスチュワードから「ジャンプスタートによりレースタイム20秒加算」のペナルティが宣告されており、ブリンクは最終的に9位まで陥落。
これでダールグレンが新型クプラでのSTCC初優勝を達成し、2位にハフ、3位にセーデルシュトレームと好調Lestrup勢が並んでの表彰台に。
4位にはコチュリンスキーのCUPRAが入り、レース1のマシン破損から「新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響により、スペアパーツ供給が不足しているための止む無くの判断」として、PWR Racing共同オーナーとして参戦するピーター“ポーカー”ウォーレンバーグJr.のマシンからパーツ移植をして修復。エキゾーストの固定が上手くいかず手負いの状態ながら、未出走となったウォーレンバーグJr.の分も取り返す力走を見せた。
そして午後15時40分からの最終ヒート、レース3は前戦トップ8リバースグリッドの優位性を活かしたポールシッターのアールベルグと、4番手発進のマティアス・アンダーソン(ホンダ・シビック・タイプR TCR/Honda Racing Sweden)がスタートから逃げ切り、そのままチェッカー。
注目はその後方で4WAYバトルを展開したPWR Racing対Lestrup Racingの争いで、軍配はなんとLestrup勢に上がり、ハフが連続表彰台となる3位、セーデルシュトレームが4位に続きドライバーズとチームの両ランキングで2位以下を突き放すロケットスタートを決めている。
続くSTCC第2戦は早くもシーズン折り返しの1戦となり、8月28~29日にスウェーデン北東部シェレフテオのドライブセンターアリーナで争われる。
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