10月30日(水)、バーレーンのバーレーン・インターナショナル・サーキットでは、WEC世界耐久選手権最終戦となる第8戦に向け、参戦する各チームが準備を進めた。ハイパーカークラスのタイトル決戦として注目を集める8時間レースは、11月2日(土)に決勝を迎える。
ここでは走行前日の水曜のパドックから、各種トピックスをお届けする。
■新ラインアップで臨むアルピーヌ
バーレーン8時間レースの36台のエントリーリストには、9月の富士での前戦から比べて多くの変更がある。
これには、2号車キャデラックVシリーズ.Rのラインアップにセバスチャン・ブルデーが加わったことや、ニコラ・ラピエールがドライバーの任務を退き、チームのスポーティング・ディレクターに就任したことに伴うアルピーヌのラインアップ変更などが含まれる。
アルピーヌのチーム代表、フィリップ・シノーは、ル・マン24時間レース以来ラピエールの引退計画は知っていたものの、レースがまだ残っている中でのこのフランス人の引退の決断は「少し驚きだった」と語った。
「バーレーンのレースに出ないと言ったのは、勇気のあることだ。誰も彼を強制しなかった。論理的な説明は不可能だ。ある日、目が覚めて、決断のときが来たと感じたら、そのときが来たということだ」
また、バーレーンでラピエールの36号車のシートにシャルル・ミレッシを35号車から移すという決定について、シノーは次のように付け加えた。
「ドライバーの体格の点では、実際はそれが都合がいいのだ。マシンが(ファクトリーのある)フランスにあったら、決定は違ったかもしれない。だが、マシンは船に乗っていたので、このようにすることにした。今回はこの新しいラインアップをテストする機会でもあるので、とても興味深い」
■GMのトップマネジメントが変更に
バーレーン大会の数日前、現在GMのスポーツカーレース・プログラム・マネジャーであるローラ・ウォントロップ・クラウザーと、コルベットGT3プログラム・マネジャーであるクリスティー・バグネが、今年末でその任を解かれることが発表された。
クラウザーはエンジニアリング・グループリーダーとしてGMのグローバル・ハードウェアシステムおよび統合チームに再配置され、バグネは、シニア・アナリストとして企業戦略部門に移る。
クラウザーのポジションに後任はなく、その業務はキーリー・ボスン(キャデラック・レーシング・プログラム・マネジャー)とジェシカ・デイン(コルベット・レーシング・プログラム・マネジャー)に分割される。GMの広報担当者によると、これらの新任ふたりは、GMのモータースポーツ競技エンジニアリング担当ディレクター、マーク・スティローの直属となる。
■ポルシェはリザーブドライバーを用意
マシュー・ジャミネは今週末、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのリザーブドライバーを務める。
このフランス人ドライバーは、来年、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のレギュラードライバーを務める傍ら、特定のレースでWECの5号車ポルシェ963にサードドライバーとして加わることになっている。
■近年、バーレーンで負け知らずのトヨタ
トヨタは2017年から続くバーレーンでの無敗の連勝記録を誇っている。2018年は開催がなかったが、2019年に現在の8時間レース・フォーマットでバーレーンがカレンダーに復帰して以来、トヨタはこのイベントでは負け知らずだ。
今週末にトヨタが勝利を挙げれば、、日本のブランドはポルシェを逆転してマニュファクチャラーズ・タイトルを獲得することになる。ポルシェがポールポジションのボーナスポイントを獲得したとしても、トヨタがレースで勝利すれば、トヨタにタイトルが転がり込む計算だ。
トヨタの勝利の見通しについて、7号車のマイク・コンウェイは次のように語った。
「昨年は、かなり速く走ることができた。タイヤのデグラデーションは、通常、僕らにとって有利だ」
「もちろん、他の全員がこの1年で改善する時間があったので、同じようになるとは言えないが、低速コーナーとタイヤのデグは通常、僕らが有利だ。これまでここでこれほど成功してきたのは、それが理由だと思う」
ル・マンを欠場した彼と、僚友の8号車はドライバーズ・タイトル争いには加わっていないが、8号車のブレンドン・ハートレーは厳しいシーズンを2勝目で締めくくりたいと語っている。
「今年は多くのことがうまくいかなかった」とハートレー。
「たとえば富士ではセーフティカーのせいで優勝のチャンスを失い、ペナルティで表彰台を逃した。ル・マンのことも思い出される。来年はそれを過去のものにしたい。今週末からそれが始まるんだ。少し残念な年だったが、冬休みに良い気分で入ることができたらいいね」
■ランキング4位を争う4メーカー
マニュファクチャラーズ選手権のランキングでポルシェと18ポイント差のフェラーリは、たとえポール・トゥ・ウインを達成したとしても、最高位のトヨタがトップ3に入らず、かつ最高位のポルシェがトップ6に入らない場合にのみ、タイトルを手にすることができる。
一方、トップ3メーカーに続く『ベスト・オブ・ザ・レスト』を非公式に争うアルピーヌは、BMWに3ポイント差をつけている。もし両ブランドが同点で最終戦を終えた場合、現状では富士で2位を手にしたBMWがこの争いを制すことになる。
キャデラックとプジョーもこの“4位争い”に残っているが、アルピーヌに勝つには最低でも3位でフィニッシュする必要がある。
■ポルシェでのラストランとなるJOTAの目標
バーレーンではハイパーカーのドライバーとマニュファクチャラーのタイトルのみが争われる。そのほかの3つのタイトル、すなわちFIAワールドカップ・フォー・ハイパーカー・チーム(ハーツ・チーム・JOTA)とLMGT3のドライバーとマニュファクチャラー(マンタイ・ピュアレクシング)は前戦・富士で確定している。
ハーツ・チーム・JOTAは富士で12号車ポルシェがタイトルを手にしたが、チームの共同オーナーであるサム・ヒグネットは、チームはこのプライベータークラスでのワン・ツーを狙っていると述べた。
現在このワールドカップでは83号車フェラーリ499Pがランキング2位につけており、JOTAの38号車がわずか7ポイント差で追っている状況だ。
「バーレーンでは、スパで12号車が経験したこと(総合優勝)を再現しようと大奮闘するだろう」とヒグネット。
「フェラーリ、プロトン、そして我々がチャンピオンシップで接戦を繰り広げているので、38号車はワン・ツー・フィニッシュを狙ってプッシュを見せるはずだ」
■今戦もミディアムとハードの2スペック
ハイパーカークラスにタイヤを供給するミシュランは、再びミディアムとハードという2種類のタイヤコンパウンドをバーレーンに持ち込んだ。ソフトコンパウンドが使われなかったレースは、これで4回連続となった。
なお、LMGT3チームにおいては、グッドイヤーの『ミディアム・プラス』と呼ばれるより硬いスペックを導入する計画が棚上げされたことにより、バーレーンでも引き続きドライ用タイヤはミディアムの1スペックのみとなる。
■サラ・ボビーは来季いよいよ『シルバー』に
FIAのドライバーカテゴライゼーションリストの最新版によると、シルバー評価のドライバー3人、コリン・カレサーニ、ジョーダン・ラブ、マニュエル・マルドナドは、2025年にゴールド・ステータスにアップグレードされることを回避するための控訴に勝訴した模様だ。
注目すべきは、LMGT3ドライバーのサラ・ボビーとアレックス・マリキンは、今月初めの最初の暫定版リストで示されたとおりに、2025年にはシルバー・ステータスへとアップグレードされる予定だ。
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31日木曜日は、現地時刻12時15分(日本時間18時15分)からフリープラクティス1、17時30分(同23時30分)からフリープラクティス2が、それぞれ90分間行われる予定だ。
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