クルマ好きを魅了する自然吸気の5.9L V12
映画007「カジノ・ロワイヤル」で派手なスピンを披露したアストン マーティンDBS。クライマックス・シーンでボロボロにされた姿へ、胸を痛めたクルマ好きもいらっしゃったことだろう。
【画像】誰もが認める美貌 アストン マーティンDBS 現行のスーパーレッジェーラと復刻版DB5も 全101枚
アストン マーティンが、これほど心を奪う理由は何なのだろう。優雅でありながら堂々としたスタイリングは、間違いなくその1つ。だがそれと同じくらい、サウンドも素晴らしい。
滑らかに伸びたボンネットの下に閉じ込められているのは、5.9Lの自然吸気V型12気筒エンジン。誰もが夢中になる、忘れられない咆哮を周囲へ撒き散らす。最高出力は517psで、動力性能の面でも圧倒されるものがあった。
ヴァンキッシュやV12ヴァンテージにも搭載されたユニットではある。だが、包まれたボディを問わず、クルマ好きを魅了してやまない名機といっていい。
DBSではレッドラインが6900rpmに設定され、0-100km/h加速は4.3秒。最高速度は307km/hを実現していた。ターボエンジンとは異なり、回転の上昇とともにエネルギーがみなぎっていくさまは痛快そのものだ。
開発ベースになったのはDB9で、もちろんドライビング体験も極上。特に6速MTを組み合わせれば、心地良い変速フィールとともに、大排気量エンジンを直接操っているという濃密な楽しさに浸れる。
クーペのDBSと、コンバーチブルのDBS ヴォランテは、確かに軽いクルマではない。ボディサイズも大柄ではある。それでも、操縦性はかなり磨き込まれたものだった。
想像より安い優秀なグランドツアラー
サスペンションはボタン1発で公道向けの柔軟な状態から、サーキット向けの引き締まった状態へ一変。ステアリングの反応は正確で、ブレンボ社のブレーキが強力な制動力でハイスピード・ドライブをバックアップしてくれる。
重めの車重にハイパワーなFRレイアウトだから、トランスアクスル・レイアウトだとしても、トラクション不足に陥ることはある。濡れた路面では、3速でもホイールスピンを招きかねない。トラクション・コントロールの警告灯は、見慣れたものになるだろう。
DBSは優秀なグランドツアラーでもある。ロードノイズは古い舗装でなければ充分に抑えられ、風切り音もうるさくない。高速道路をヒタヒタと走るような場面では、V12エンジンは穏やかに必要なエネルギーを発生する。不必要に静かだと感じるほど。
そんな有能なボンドカーは、きっと高いに違いないとお考えかもしれない。実際は、想像するほどではない。安くはないものの、英国ではそこそこの状態で6万5000ポンド(約1072万円)程度から探すことができる。
Eセグメント・サルーンの上級グレードと同等の価格で、アストン マーティンを手中に収めることができる。翼を広げたエンブレムに魅惑的なフォルム、没入型のドライビング体験や孤高のサウンドも、独り占めすることができる。
いつかはアストン マーティンをとお考えなら、行動に移すべきは今かもしれない。近年の同ブランドで最も洗練された1台を、許されるうちに味わってみてはいかがだろう。
新車時代のAUTOCARの評価は
DBSは理想的なDB9といえる。よりシャープに研ぎ澄まされたクーペであり、公道との相性は高いまま。運転する時間が伸びるほど、走る距離が増えるほど、アストン マーティン史上最高のグランドツアラーだと実感するだろう。(2008年2月13日)
専門家の意見を聞いてみる
アダム・パウダーハム氏:チルターン・アストン社代表
「DBSはアストン マーティンの歴代ラインナップでも、最も広く名の通ったモデルの1つ。時代を超越した美しさが与えられています。抑揚あるボディラインに勇ましいフロントマスク、カーボンファイバー製のトリム類など、その美貌は誰もが認めることでしょう」
「最近の英国では、DBSを実際に運転して楽しんでいるオーナーが増えています。同時に、クラシックカーとしての価値を急速に高めてもいます。消耗が激しいことは事実ですが、定期的なメンテナンスに掛かる小さくない費用を惜しまないで欲しいですね」
「当社では、直近3か月の間に12台のDBSを整備しました。クルマによって必要な作業内容は異なり、乗られ方や状態によって大きく変わってきます」
「ワークショップの技術者は、誰もがDBSは素晴らしいクルマだと認めています。アルミ製VHプラットフォームの量産モデルとして、最も美しいクルマだともね」
購入時に気をつけたいポイント
エンジン
初期型のDBSの場合、吸気マニフォールドの吸気音に耳を傾ける。音が変化するように聞こえても、回転数が変わらなければ正常だ。後期のDBSでは、そのマニフォールドに改良を受けている。
走行機会が少ないクルマの場合は、オイルサンプ・ガスケットからエンジンオイル漏れすることがある。
トランスミッション
初期のMTでは低速走行時にクラッチを接続し、鳴かないか確認する。異音が出ているなら、パッドの素材に問題がある証拠といえる。
タッチトロニックと呼ばれるATは、シフトセレクター・ボタンで正しく切り替わるか確かめる。初期型では正常に動かず、警告灯が灯る場合がある。システム・リセットで警告灯は消せるが、正規ディーラーや専門店での点検が必要。電気的な作業で完治は可能だ。
ブレーキ
ブレーキディスクをハブ側に固定する、12本のボルトの状態を確かめる。手荒く乗っていると加熱が原因でボルトが痛み、ディスクが緩むことがある。ボルトはブレンボ社から新品を取り寄せられる。ディスクもパッドも安くないため、早めの点検と対応が重要。
サーキットで熱心に運転しなければ、ブレーキは11万km程は保つ。
サスペンション
ビルシュタイン社のダンパーは液漏れする場合がある。その原因は、シール材の隙間から侵入した汚れ。後期のDBSでは、それに対応するためダブルシール化されている。
ボディとシャシー
ドアハンドル付近に、雨水の侵入が原因で生じる水ぶくれがないか確かめる。早めに対応しないと、状態は悪化する一方。給油口付近に溜まった雨水は、荷室や燃料タンク内に流れ込んでしまうことがある。
コンバーチブルでは、水が原因で電動のフードラッチが故障することも。高価な部品なため、事前に正しく動くか確かめたい。
知っておくべきこと
初期のDBSは2シーターで、リアにパーセルシェルフを装備した6速マニュアルのクーペだった。2+2レイアウトは高価なオプションで、選択された例は極めて少ない。6速MTは2011年まで生産されている。
タッチトロニックIIと呼ばれる6速オートマティックは、2008年に登場。その時点で2+2が標準仕様となっている。コンバーチブルのヴォランテは、2009年に発売された。
英国ではいくら払うべき?
6万5000ポンド(約1072万円)~6万9999ポンド(約1154万円)
初期型のクーペとヴォランテを英国では探せる価格帯。走行距離は8万km前後。ATが多いようだ。
7万ポンド(約1155万円)~7万9999ポンド(約1319万円)
初期型のATが中心だが、走行距離が短くなってくる。5万km以下の例も出てくる。
8万ポンド(約1320万円)~9万9999ポンド(約1649万円)
後期型のDBSを英国では選べるようになる。カーボンブラック・エディションなど、特別仕様車も含まれる。
10万ポンド(約1650万円)以上
走行距離の短い、状態の良いDBSを英国では選べる価格帯。執筆時にはアルティメット・エディションも売られていた。
英国で掘り出し物を発見
アストン マーティンDBS(英国仕様) 登録:2008年 走行距離:6万1100km 価格:8万4995ポンド(約1402万円)
希少な6速マニュアルのDBS。走行距離は長すぎず、望ましい条件で妥当な価格といえる。これ以上の価格の例は強気すぎるように思う。
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みんなのコメント
デザインも最新型よりも落ち着いていて、アストンらしい。(エクステリアもクールなメーター周りの内装も)
今のもカッコはいいが、ややフェラーリ等を意識したコンセプトになってきていると思う。
カジノロワイヤルでこのDBS見たときは、本当にカッコよいと思ったし、ある意味DB5の新しい解釈のような衝撃を受けた。おそらく当時ゴールドフィンガーを見た人は同じようなインパクトを受けたと思う。
慰めの報酬のオープニングで、トンネル内のDBSのパーツがチラチラと写り、その後いきなりクオーンと加速しながら敵から逃げるあのシーンは最高。
とにかく優雅さがあり周囲と被らないのが良かったのですが。
サイドブレーキレバーが運転席右側(ドアとの間)にありドアを閉めると手を入れるのが面倒でしたね。
それと周囲と被らないというのが気に入っていたのに地元ヤクザの親分と完全に被ってしまい、繁華街に車で行くと勘違いされ人相の悪い人達に何度もお出迎えされました。