部品や技術、開発アプローチを導入
メルセデス・ベンツが1月に公開したEVコンセプト「ビジョンEQXX」で披露された技術が、市販車に導入されることが明らかになった。
【画像】メルセデス・ベンツ・ビジョンEQXX【EQEやEQSと写真で比較】 全87枚
メルセデスの広報担当者は取材に対し、このクルマに採用された技術や、18か月という超短期間で開発されたプロセスが、市販車に反映されることを認めた。
「EQXXは、限界を押し広げ、将来の市販車の可能性を探るために設計された研究車です。市販車のための青写真なのです。ここから生み出される多くの革新的な技術は、間もなく当社の市販車に導入されるでしょう。特定の部品や技術だけでなく、非常に機敏で学際的な開発アプローチや、開発で使用されるソフトウェアとデジタルツールも含まれます」と同社は述べた。
EQXXコンセプトは、エネルギー効率に重点を置いて開発され、「航続距離は1000km以上(現行EQSより270km多い)」を達成すると謳われている。
メルセデス・ベンツが公表してきたデザイン研究の最新作であり、既存のEVの限界に挑戦するコンセプトである。開発プロジェクトでは、新しいアイデア、プロセス、イノベーションを生み出し、将来のEVに採用することを目的としている。
メルセデスの最高技術責任者(CTO)であるマーカス・シェーファーは、1月の発表の場で、EQXXが実走行可能なプロトタイプであり、既存のインフォテインメント・システムMBUXも搭載していると述べ、市販化の可能性をほのめかしていた。
驚異的な効率性 空力と電池技術
チーフデザイナーのゴードン・ワグナーは、EQXXが新型EQEよりも「少なくとも1セグメント小さい」と述べており、もしこのまま市販化されるとすれば、小型~中型EV用の新しいMMAプラットフォームを使ってCクラスと同等のEVになると考えられていた。
EQXXは、ドイツ国内のすべての交通法規に適合し、大人4人が乗れるにもかかわらず、空気抵抗はCd値0.18以下と、空力効率の新記録を樹立したとされている。これはEQSのCd値0.20を大きく下回る数値だ。
EQXXの開発プログラムには、F1マシンのパワートレインを製造する、英国のメルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズが大きく貢献していると言われている。また、デザイナーやエンジニアには、パワートレイン以外の重要な部分を見直すよう求められた。
1kWhあたり10kmという航続距離は、メルセデス・ベンツEQSのWLTPサイクルの約2倍に相当するほか、ガソリン車では120km/l以上の燃費に相当するという。これは新開発のモーターとリチウムイオンバッテリーによるもので、後者は100kWh弱とEQSより小さい。
中国のバッテリーメーカーCATLが供給するセルを使用した新バッテリーは、EQSの107.8kWhパックに比べ「50%のサイズ」であり、495kgと約35%軽量化されたとしている。
メルセデスによれば、この高シリコン含有バッテリーは900V以上で動作し、「アクティブ・セル・バランシング(各セルから均等にエネルギーを取り出して、巡航時の効率を高める方式)」が特徴だという。
さらに、ドライブトレインの熱を車内の暖房に利用し、車体下部のプレートで空気の流れを利用して冷却することで、大幅な省力化を実現したという熱管理システムも新たに開発されている。
メルセデスは、EQXXのバッテリーから得られるエネルギーの最大95%が車輪に到達すると主張している。一般的なICE車の効率は約30%である。
航続距離に最も重要な要素とは
最高出力204psのコンパクトな新型モーターは、軽量のカーボンファイバー製サブフレームに搭載され、1速トランスミッションを介して後輪を駆動する。
このモーターは、開発中のハイブリッド・ハイパーカー、AMGワンのものを参考にしたパワーエレクトロニクス・システムによって制御されるが、新世代のシリコンカーバイドを使用することにより、現行のEQシリーズに搭載されているシステムと比べて損失を大幅に削減しているとのことだ。
EQXXの開発チームを率いるイェルク・ブルツァーは、次のように述べている。
「EVの航続距離は簡単なようで、複雑な技術的課題です。一番簡単な方法は、搭載するバッテリーを大きくこと。しかし、これではサイズと重量の関係で、メリットが少なくなってしまいます。ビジョンEQXXでは、効率を新たなレベルに引き上げることに成功しました」
EQXXのフロントは、前縁が低く、短いボンネット、シェイプされたフェンダー、大きなホイールハウスなど、スポーツカーのような外観を呈している。メルセデスの特徴であるグリルは、フロントバンパーの星のグラフィックに置き換えられ、ヘッドライトはフルワイドのLEDライトバーで結ばれている。
軽量化と空力効率を最大限に高めるため、ボンネットにはメルセデスのスリーポインテッドスターが刻印されている。また、「第9世代」と呼ばれるサイドミラーと、新開発のエアロホイールが装着されている。
ノーズ部分に駆動系部品がないためAピラーがかなり前に出ており、ホイールベースも2800mmと長く、室内スペースを最大限に活用できる。
リアでは、2015年の「コンセプトIAA」で初めて披露した可動式空力パーツの発展型を取り入れている。速度が上がるとディフューザーが自動的に伸び、空気の流れを整えて、高速走行時の乱気流を低減させるものだ。
また、ボディはフロントからリアにかけてわずかに細くなっており、リアトレッド幅はフロントより50mm狭い。
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みんなのコメント
懐かしいー