世界的な半導体不足やコロナウイルスの感染拡大によって、国産、輸入車メーカーの新車の納期遅延が長期化している。
2022年1月に登場し、販売開始後1カ月で約7万台を受注したトヨタノア/ヴォクシーは、ガソリン車で4~5カ月、ハイブリッド車は6カ月以上。登録車で2021年の新車販売台数No.1に輝いたトヨタヤリスはガソリン車が4~5カ月、ハイブリッド車は3~4カ月となっている。
新車大幅納期遅れで中古車が高止まり!!! 要注意車種の実態と現場の悲鳴
また、軽自動車の新車販売台数No.1に輝いたホンダN-BOXは5カ月程度。5月に販売開始される予定の新型ステップワゴンは、ガソリン車、e:HEVともに5カ月程度となっており、年内納車は厳しくなりつつある。
このように新車の大幅納期遅れによって、中古車に人気が集まっている。一時は高騰も伝えられていた中古車相場だが、最新の状況を解説する。
文/萩原文博、写真/トヨタ自動車、萩原文博
中古車相場は高止まりしている状況
軽自動車ではアルトラパンが値上がり傾向だ
中古車のオートオークション運営会社で最大手のUSSでの2月の成約車両単価、すなわち1台あたりの平均落札価格が100万6000円を記録。集計を始めた1999年4月以降初めて100万円を突破し、中古車相場の高騰が伝えられた。
しかし、3月の平均落札価格が91万1000円に下落すると、この下落の要因がロシアのウクライナ侵攻によって輸出がストップしたことが影響と報じた。
中古車販売店を経営し、オートオークションに足を運んでいる知り合いに話を聞くと、中古車相場は高止まりしているという。その高止まりの最大の理由は新車の納期遅延であることは明らかというのだ。
オークションで価格が高騰しているのが、軽自動車を中心とした高年式、低走行距離の登録済み未使用中古車。車検のタイミングでクルマの買い換えを予定したユーザーの多くが、新車の納車前に車検が切れてしまうというケースが続出し、納車の早い登録済み未使用車を購入しているということだ。
そして、もう一つ中古車相場が高騰している理由が低価格車をレンタカーなどで転用している販売店が増えたことだ。コロナ禍となり、公共交通機関を利用して出掛ける人が減る一方で、プライバシーが守られるクルマで出掛ける人が増えている。
これまで、海外に輸出されることが多かった低価格車をレンタカーに使用するため、こういったクルマがオークションに出品されなくなったことも中古車相場高騰の要因となったのだ。
コンパクトSUVを中心に値上がり車種が拡大
割安感の高いトヨタラッシュが値上がり傾向
中古車相場は高止まりしているものの、すべての車種が値上がり傾向を示しているわけではない。例えば、コンパクトSUVで人気のトヨタヤリスクロスは3カ月前の中古車の平均価格は約264万円だったが、現在は252万円まで値落ちしているし、ヤリスも約168万円から約165万円へと値落ち傾向となっているのだ。
人気の高いモデルが値落ちしている一方で、このような車種も値上がりしているのか!という現象も見ることができる。ここからは、値上がり傾向を示している車種をピックアップする。
まずは、人気のコンパクトSUVのトヨタラッシュ。ラッシュはダイハツビーゴの兄弟車として2006年~2017年まで販売された。全長4,005mm×全幅1,695mm×全高1,690mmという5ナンバーサイズのボディに、最高出力109psを発生する1.5L直列4気筒エンジン+4速ATを搭載。
駆動方式はFRと4WDという新興国向けの整備しやすさを考えたレイアウトを採用しているのが特徴だ。
現在、ラッシュの中古車は約150台流通していて、平均価格は約76.7万円。3カ月前の平均価格は約66万円だったので、3カ月で10万円の値上がりとなっている。中古車の価格帯は約29.8万~約169.9万円。
次も、コンパクトSUVから日産ジュークをピックアップ。ジュークは2010年~2019年まで販売され、国産コンパクトカーSUVブームの火付け役となったモデル。
ジュークのボディサイズは全長4135mm×全幅1765mm×全高1565mm。デビュー当初は最高出力114psを発生する1.5L直列4気筒エンジンを搭載したFF車のみだった。
その後、最高出力190psを発生する1.6L直列4気筒ターボエンジンを搭載した16GTを追加。この16GTには4WDモデルも設定されている。さらに、ローダウンスプリングを採用し、全高を1,550mmに下げて立体駐車場に対応させたアーバンセレクション。
カスタマイズモデルのニスモを追加するなど多彩なグレード構成を誇っている。
現在、ジュークの中古車は約1,200台流通していて、平均価格は約87万円。3カ月前の平均価格は約81.8万円だったので、5万円以上値上がりした。中古車の価格帯は約28.8万~約244.8万円で低価格車が中古車市場から姿を消している。
続いては2021年9月に一旦販売終了となり、2022年4月にハイブリッド車となって復活したスズキのコンパクトSUVのエスクード。
現行型エスクードのボディサイズは全長4,175mm×全幅1,775mm×全高1,610mm。デビュー当初は最高出力117psを発生する1.6L直列4気筒エンジン+6速ATというパワートレインを搭載していた。
2017年に最高出力136psを発生する1.4L直列4気筒ターボエンジンが追加され、途中からこちらが主力エンジンとなった。
駆動方式はデビュー時にはFFと4WDが設定されていたが、途中で4WDのみとなった。「ALLGRIP」と呼ばれる4WDシステムを搭載し、高い悪路走破性を実現している。
現在、現行型エスクードの中古車は約151台流通していて、平均価格は約226.3万円。3カ月前の時点では約210万円だったので、16万円の値上がりを記録。中古車の価格帯は約110万~約277.4万円となっている。
値上がりしているのは、コンパクトSUVに限らない。コンパクトサイズミニバンのホンダフリードは約5,000台中古車が流通しているが、平均価格は3カ月前の約170万から現在は176万円へと値上がり。
軽自動車では中古車が約5,500台流通しているアルトラパンの平均価格は3カ月前の約64万円から現在は約70万円まで値上がり。しかも中古車の流通台数は大幅に減少しているのだ。
値落ち傾向を示している車種も、中古車が最も売れる大需要期の3月に多くの中古車が売れてしまった結果の値落ちということも考えられるし、ここで紹介した車種のほかにも人気ミニバンのアルファードなど値上がり傾向を示している車種は多い。
一般的には需要期が終わり、ゴールデンウィーク明けには中古車相場は値落ち傾向に転じるのだが、今年は期待薄のようだ。
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