現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ついに黒字化を実現したテスラの原動力「排出権売り上げ」は長続きしないかもしれない

ここから本文です

ついに黒字化を実現したテスラの原動力「排出権売り上げ」は長続きしないかもしれない

掲載 更新 2
ついに黒字化を実現したテスラの原動力「排出権売り上げ」は長続きしないかもしれない

コロナ禍にも関わらず生産台数は大幅増加に

テスラが2020年第4四半期及び2020年暦年での決算を発表。はじめて黒字決算となったことが話題となっています。

2020年の生産台数は50万9737台、販売台数は49万9620台。総売上高は315億3600万ドルで、注目の利益は7億2100万ドル(約750億円)と発表されています。単純に利益率を計算すると2.3%ほどになります。この数字自体は自動車業界の平均的な数値からすれば、かなり低いレベルといえるでしょうが、黒字化したことは大きなニュースです。

決算発表された数値を見ていくとテスラならではのユニークなビジネスモデルが見えてきます。

・自動車部門売上高:272億3600万ドル(208億2100万ドル)
・うち排出権売上:15億8000万ドル(5億9400万ドル)
・総売上高:315億3600万ドル(245億7800万ドル)
・純損益:7億2100万ドル(▲8億6200万ドル)
・フリーキャッシュフロー:59億4300万ドル(24億500万ドル)
※()内は2019年実績

自動車部門のほかにソーラーパネルなどの事業も行なっているため総売上では315億ドルを超えますが、自動車部門が売上(272億ドル)の柱になっているのはご想像の通り。自動車部門が2019年比で64億ドルも売上を増やしているのは、生産台数の増加(2019年は約38万台)がそのまま影響しているといえます。

さらに四半期ごとの生産台数を見ると、2020年の第1四半期は10万2672台、第2四半期にはおそらく新型コロナウイルスの影響で8万2272台と減り、第3四半期は14万5036台、第4四半期も17万9757台とぐんぐん増加しています。このペースで増えていけば2021年はさらに生産台数が増えることが予想されます。

生産台数の増加が排出権の売り上げを押し上げていた

決算発表における数値の中でテスラならではといえるのが「排出権売上(regulatory credits)」でしょう。ご存知のように、これはCO2排出権を他社に販売したもので、全車がゼロエミッションであるテスラにとっては大きなビジネスとなっています。そして、生産台数が増えたことでクレジットの売上も増加しています。

2019年と2020年の純損益を比べると、15億8300万ドルの差があるわけですが、それはまんま排出権による売上といえる状況で、排出権ビジネスがテスラ黒字化の肝になっているわけです。今後テスラの生産台数が増えて排出権の売上が高まれば、同社の黒字体質化は盤石のものとなりそうですが…そう簡単にはいかないかもしれません。

近い将来、自動車メーカーは排出権を購入しなくなる

というのも、どこの自動車メーカーも電動化を進めており、将来的には排出権を購入する必要がなくなることを目指しています。長期的にみると、今の状況はあくまでも一過性のものであって、排出権の売上を前提にビジネスモデルを構築することは危険なのです。

そもそも、テスラはまだまだ成長期にある企業であって、新工場などに投資をしている段階です。2020年は中国・上海のギガファクトリー(完成車工場)からのデリバリーがはじまり、ドイツ・ベルリンにもギガファクトリー(完成車工場)を作るなど多額の投資をしています。ですから、まだ本質的には投資を回収して黒字化するフェイズにないともいえるのです。むしろ、前年比で10億ドルも増えた排出権によって黒字になってしまったという見方をすべきかもしれません。

文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)

関連タグ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

【MotoGP】「苦しいフィーリングは変わらない」マルケス、カタルニア・サーキットに再び苦戦。トップ争い厳しい?|最終戦ソリダリティGP
【MotoGP】「苦しいフィーリングは変わらない」マルケス、カタルニア・サーキットに再び苦戦。トップ争い厳しい?|最終戦ソリダリティGP
motorsport.com 日本版
“渋滞都市”京都が大変化!? 壮大な「堀川通バイパストンネル」計画が進行中 悲願の「信号ゼロ」実現までどこまで進んだのか
“渋滞都市”京都が大変化!? 壮大な「堀川通バイパストンネル」計画が進行中 悲願の「信号ゼロ」実現までどこまで進んだのか
くるまのニュース
ピレリF1、2026年レインタイヤの初テストを実施。アルピーヌのドゥーハンが走行
ピレリF1、2026年レインタイヤの初テストを実施。アルピーヌのドゥーハンが走行
AUTOSPORT web
ブレイズの二輪電動モビリティ「LIFE EV」、名古屋市のふるさと納税返礼品に
ブレイズの二輪電動モビリティ「LIFE EV」、名古屋市のふるさと納税返礼品に
レスポンス
【ラリージャパン2024】SSの電力をFCEVで発電、環境に優しい大会めざす
【ラリージャパン2024】SSの電力をFCEVで発電、環境に優しい大会めざす
レスポンス
ホンダMotoGP、最終戦で特大サプライズを起こせるか? プラクティス4番手で予選Q2進出のザルコ「グリッド1列目、2列目も狙える」
ホンダMotoGP、最終戦で特大サプライズを起こせるか? プラクティス4番手で予選Q2進出のザルコ「グリッド1列目、2列目も狙える」
motorsport.com 日本版
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】点差は関係なし。“三つ巴”の6位争いへ「緊張感のある場で戦えるのはありがたいこと」
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】点差は関係なし。“三つ巴”の6位争いへ「緊張感のある場で戦えるのはありがたいこと」
AUTOSPORT web
狭い「大型車通行不能区間」にトンネル完成! 飛騨の“難所”にバイパス16日開通 高山線と東海北陸道の“中間”をゆく
狭い「大型車通行不能区間」にトンネル完成! 飛騨の“難所”にバイパス16日開通 高山線と東海北陸道の“中間”をゆく
乗りものニュース
日産が「新型セダン」世界初公開! “全長4.9m”超えるビッグな「新型N7」が市販前に登場! 斬新な「一文字ライト」採用し2025年上半期中国発売へ!
日産が「新型セダン」世界初公開! “全長4.9m”超えるビッグな「新型N7」が市販前に登場! 斬新な「一文字ライト」採用し2025年上半期中国発売へ!
くるまのニュース
クムホ、VW『パサート』・シュコダ『スパーブ』に新車装着用タイヤを供給
クムホ、VW『パサート』・シュコダ『スパーブ』に新車装着用タイヤを供給
レスポンス
マカオ2勝目に挑むBMWのファーフス、新加入に苦労も「グリッドを埋めるために参戦するわけじゃない」
マカオ2勝目に挑むBMWのファーフス、新加入に苦労も「グリッドを埋めるために参戦するわけじゃない」
AUTOSPORT web
もしも993型「911」をポルシェがいまなお作っていたら…がコンセプト! 勝手に作ったリマスターモデルが2億円近い価格で落札! 人気の秘密は?
もしも993型「911」をポルシェがいまなお作っていたら…がコンセプト! 勝手に作ったリマスターモデルが2億円近い価格で落札! 人気の秘密は?
Auto Messe Web
ノエル・レオンが最速。佐藤凛太郎が11番手/マカオFRワールドカップ フリー走行2回目
ノエル・レオンが最速。佐藤凛太郎が11番手/マカオFRワールドカップ フリー走行2回目
AUTOSPORT web
最強のテスラがポリスカーに、1000馬力の「モデルS プラッド」正式配備も…SEMAショー2024
最強のテスラがポリスカーに、1000馬力の「モデルS プラッド」正式配備も…SEMAショー2024
レスポンス
トヨタ “超スゴイ”「クラウン」が集結!? “300馬力”超えの「特別仕様車」とは!?「リミテッドマットメタル」大阪で実車展示
トヨタ “超スゴイ”「クラウン」が集結!? “300馬力”超えの「特別仕様車」とは!?「リミテッドマットメタル」大阪で実車展示
くるまのニュース
トヨタがSEMAショーに出展! あらゆる形態のアクティブなライフスタイルを称えるコンセプトモデル
トヨタがSEMAショーに出展! あらゆる形態のアクティブなライフスタイルを称えるコンセプトモデル
バイクのニュース
12/19申込締切【中国NEVの新競争軸2025】特許情報起点で炙り出す~SDV、自動運転、通信、スマートコックピット~
12/19申込締切【中国NEVの新競争軸2025】特許情報起点で炙り出す~SDV、自動運転、通信、スマートコックピット~
レスポンス
すべての国産車が高くなるワケじゃない!? 名車になり損ねた国産スポーツ三菱GTO
すべての国産車が高くなるワケじゃない!? 名車になり損ねた国産スポーツ三菱GTO
ベストカーWeb

みんなのコメント

2件
  • この人財務諸表の見方も知らないのね。
    自動車関係者って本当?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村