6月28日、アストンマーティンは1000馬力に上る最高出力を発揮するV12自然吸気エンジンを搭載した究極のハイパーカー『Valkyrie AMR Pro(ヴァルキリーAMR Pro)』を発表した。
このクルマは当初、“世界三大レース”のひとつに数えられるル・マン24時間レースで勝利することを目標に設計されたもの。アストンマーティンがこの計画を延期した後、ヴァルキリーAMR Proはレースのレギュレーションや公道での走行に係る一切の制約から解放され、究極のパフォーマンスを追及したマシンとして誕生に至った。
アストンマーティンの1000馬力超ハイパーカー『ヴァルキリー』が公道デビュー
アストンマーティンは2019年、現在トヨタとグリッケンハウスが参戦し2022年にははプジョーが、2023年にフェラーリが加わる予定のル・マン・ハイパーカー(LMH)規定への参戦を目指し、レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズとマルチマチックと共同で『アストンマーティン・ヴァルキリー』のレースカー開発に取り組んでいた。
この計画は、後に実現した同社のF1参戦開始にともない“延期”されることになったが、究極のハイパーカー開発は継続された。2018年のジュネーブ・モーターショーで最初に公開されたオリジナルコンセプトは、公道仕様のヴァルキリーから最大限のパフォーマンスを引き出すことを目標としていたが、今回発表された新型ヴァルキリーAMR Proは、ル・マン・プロジェクト、つまりレースに最適化されたシャシーとエアロダイナミクス、パワートレインがフィードバックされたものだ。
なお、WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスへの参戦が延期されたことにより、レギュレーションによる制約から解放されたことで、このクルマのパフォーマンスはル・マン24時間レースで勝利するために設計されたマシンのパフォーマンスを凌駕するものとなった。
ニューマシンのシャシーは従来仕様からホイールベースが380mm延長され、トレッドはフロントが96mm、リヤでは115mm拡大された。また、リヤウイングなどのアグレッシブな空力パッケージを装着し全長も266mm拡大され、アンダーボディの処理と前後のウイングがもたらすエアフロー効果により、並外れたダウンフォースを生み出すことを可能にしている。そのダウンフォース量はロードゴーイング版ヴァルキリーの2倍に達するという。
パワートレインは公道仕様にも搭載される、コスワース製の6.5リットル自然吸気V型12気筒エンジンをベースに改良を加えたものを採用。このエンジンはレッドゾーンが11,000rpmに設定され、最高出力は1,000bhp(約1013PS)に達する。超軽量なカーボンファイバー製ボディやカーボンファイバー製ウィッシュボーン・サスペンションなどを採用し徹底的な軽量化が図られた車両においては、バッテリーを含む電動ハイブリッドシステムが降ろされている点もポイントのひとつだ。
■アストンマーティンF1ドライバーも開発テストに参加へ
新型ヴァルキリーAMR Proのスペック、およびパファーマンスは後日アナウンスされる予定だが、車両開発における目標は1周13.629kmのサルト・サーキットを3分20秒でラップすることとされた。これは同モデルが世界最高峰のスポーツカーレースを戦うル・マン・ハイパーカーを上回る性能を備えていることを意味する。
このクルマはシミュレーションツールを使用した広範囲な開発作業が完了し、まもなく実走行テストが開始される。このテストでは2021年シーズンのF1を戦うアストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームのドライバーも参加し、車両の動的セットアップを煮詰める作業が実施される予定だ。
その後、2021第4四半期にデリバリーが開始されるヴァルキリーAMR Proは、2台のプロトタイプカーと40台の限定モデルが生産される。このハイパーカーの購入者にはFIA公認サーキットでアストンマーティンが主催する“サーキット・デイ”に参加する権利が与えられる。同イベントには、サーキットおよびピットレーンへのアクセスの他、ヴァルキリー・インストラクター・チームによるサポートやFIA公認レースウェアの提供、VIPディナーなどが含まれている。
「アストンマーティン・ヴァルキリーのプログラムは、エンジニアリング面における大きなチャレンジだった」と語るのは、アストンマーティン最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアース。
「アストンマーティンとそのテクニカルパートナーの情熱と専門知識を結集した他に類を見ないプロジェクトの結果、“一切の制約から開放された”サーキット専用バージョンが生み出された」
「ヴァルキリーAMR Proは、純粋なパフォーマンスに対するアストンマーティンの取り組みを示すクルマであり、このパフォーマンスDNAは、将来の製品ポートフォリオにも反映されることになる。このクルマは、比類なきスタイル、比類なきサウンド、比類なきドライイブ体験をもたらすだろう」
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