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スズキVストローム250SX試乗「オフも走れる」じゃなく「オフも遊べる」軽量250ccアドベンチャー

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スズキVストローム250SX試乗「オフも走れる」じゃなく「オフも遊べる」軽量250ccアドベンチャー

スズキ Vストローム250SXは「単気筒、フロント19インチ、軽量ボディ」

2023年8月に発売されたスズキ Vストローム250SX。SX=スポーツ・クロスオーバーをコンセプトとし、19インチのフロントホイールを採用するなどオフロードの走破性を高めているのが同車の特徴だ。インドで生産が行われ、56万9800円という求めやすい価格も注目を集めているが、実際のオフロード走破性は? それだけでなく、アドベンチャーモデルならではのツーリング性能は?
プロライダー・鈴木大五郎氏の試乗レポートを以下お届けする。

【画像15点】スズキVストローム250SXの装備、機能、足つきを写真で見る

人気のVストロームシリーズに新たに加わったVストローム250SXは、同じく250ccのエンジンを搭載したVストローム250とは大きくキャラクターの異なるマシンだ。Vストローム250がGSR250をベースマシンとし、並列2気筒エンジンを搭載しているのに対し、Vストローム250SXは単気筒エンジンを搭載したジクサー250がベース。
250ccクラスとは思えないほどゆったりとした余裕あるキャラクターでツーリングライダーから高い支持を受けるVストローム250と比較して、もっとスポーティでアクティブなマシンとなるよう設計されている。

Vストローム250SXのベースとなったジクサー250についてまず振り返ると、手頃な価格が一番の魅力だと考えている人は少なくないように思える。確かに、さまざまな要因によってデビュー当初よりもやや値上がりしたとはいえ、いまだにこのクラスでは圧倒的にリーズナブルな価格設定だ。しかし、その中身を検証すれば実に完成度の高いマシンであり、それこそが人気の源だというのが個人的見解である。

そんなマシンをベースとしたVストローム250SXだが、そのスタイリングからはジクサー250が原型だと想像できないほどの変貌を遂げている。シート高は835mmで、一見フレンドリーとは言えない。開発陣によると走行性能、そして快適性を第一に考えた設定とのこと。
手頃な価格で販売されるマシンであり、より多くのユーザーに興味を持ってもらえるハードルの低さもマシン開発のポイントとなるはずだが、シート高をいたずらに下げず、走りに妥協しなかった開発陣の姿勢には好感が持てる。一方で、実車にまたがると非常にスリムで足を下ろしやすく、足着き性も十分考慮していることが分かる。ローシートの設定もある。

かつてのスズキ油冷エンジンとは違う、新方式の油冷エンジン

搭載される単気筒エンジンの冷却方式は「油冷」。スズキのお家芸でもあった油冷だが、過去のものとはまったくシステムが異なるものだ。シリンダーヘッド裏やピストン底部にエンジンオイルを噴射する過去の油冷マシンが水冷マシンに移行していったのは、パワーと熱量、排ガスなどのバランスを確保するのが難しくなってきたのが大きな要因。

一方、燃焼室周囲に「オイルジャケット」を設けた新時代の油冷エンジンはさまざまな要求をクリアしていて、さらに250ccという排気量であれば水冷化するよりもメリットが多いとのこと。ヘッド周りが非常にコンパクトに設計され、シンプルなことが軽量さにもつながっている。デザインもかわいらしく、安っぽい機械といった印象がないのもポイントが高い。

セルボタンのワンプッシュでエンジンをスタートさせる。軽い操作感のクラッチレバーを握り、ギヤを1速にシフト、発進。この時点でしっかりとトルクが感じられることが印象的である。エアクリーナーのインテークカバーを廃止している以外はFIも含めてジクサー250とまったく同じセットアップのエンジンというが、足まわりや車重の違いによるものか、こちらのほうがより滑らかな感触だ。

ジクサー250では高回転域になるとやや振動が多くなる印象があったが、それが抑えられている。しっかり回せるポテンシャルが備わっているのもうれしい。トルク型のエンジンではあるが、引っかかりがなくスムーズに回転上昇していくので、ついつい1万回転のレブリミッターに当ててしまうこともあった。リミッターの介入は唐突なものではなく、走りに影響を及ぼさない設定だ。

■Vストローム250SXに搭載される249ccOHC4バルブ油冷単気筒エンジン。最高出力26ps/9300rpm 最大トルク2.2kgm/7300rpm。従来のスズキ油冷エンジンと異なり、燃焼室周囲にオイルジャケットという回路を設け、水冷エンジンにおける冷却水のようにエンジンオイルを循環させエンジンを冷却する。

スズキ Vストローム250SXのオフロード性能、ツーリング性能

車体は、軽快ながらキビキビとしたレスポンスと乗り心地の良さを両立している。荒れた路面をものともしないキャラクターは、アドベンチャーというよりもスーパーモタード的とも表現できるであろう。アクセルワークにサスペンションの動きが同調して、フワッ、フワッと車体が反応していく感触も楽しい。ストローク感豊かな足周りには走破性だけではない恩恵が感じられる。

試乗を行った群馬県の嬬恋エリアは農業が盛んな地域で、農作業車が落とした土がカーブの途中に落ちていたり、路面にヒビやうねりがあったりと、場所によってはなかなかスリリングだった。しかし、まさにここで開発を行っていたのでは?と思えるほどマッチングが良好で、気持ち良く走り抜けられた。また、オフロード寄りにも感じられるパッケージングだが、ワインディングをロードスポーツモデル並みに攻め込んで走らせることができるという楽しみも持っている。しかもイージーにそれを味わえるというのもポイントだ。

スズキからリリースされるマシンは2.3kmという、世界中のサーキットを見渡してもなかなかお目にかかれないロングストレートを持つ竜洋テストコースで性能を磨き上げられる。その恩恵か、スズキのマシンはほぼ例外なく直進安定性が優れているのだが、Vストローム250SXもやはりしっかりテストしたとのことで、高速走行でも危うい挙動はまったく感じなかった。また、同時にエンジンの耐久性も培われているであろうから、その信頼性もお墨付きと言える。

標準装着されるマキシス製タイヤもいい仕事をしており、グリップ力とともにクッション性=乗り心地の向上にも寄与している。また、このタイヤはオンロードのみならず、ダート路面でのグリップ性能にもこだわったという専用設計。実際、ちょっとしたオフロードであればタイヤの心配をすることなく走り抜けられるだろう。試しにフラットダートでわざとタイヤを滑らせて走らせてみても、スライドしていく感覚も唐突なものではなく、コントロール性の高さを感じさせてくれた。

これはジクサー250に対し、長く設定されたスイングアームの恩恵もあるだろう。エンデューロコースやモトクロスコースのような起伏が激しい、あるいは路面がぬかるんでいるようなシチュエーションでは「イージー」とは言えないかもしれないが、そのような状況は、より本格的なアドベンチャーマシンであっても難所となるであろう。軽さとコンパクトさによって、実はかなりの走破性を発揮するのである。
一点、要望があるとすればリヤのABSだけでもカットできる機能が備わっていれば、ダート路面での走行性能ということだけでなく、より楽しい走行をすることに結びつくと思われるが、これは今後に期待である。

日常の足からツーリングシーンまで幅広くカバーする性能を持っていると同時に、ライディングを楽しむという非常にシンプルかつ普遍的な要求をしっかりと満たすバランスの良さがこのVストローム250SXには備わっていた。Vストロームファンだけでなく、中型二輪クラスで新たなマシンを物色するライダーにとっても魅力的なマシンとなっている。

「ここが気に入った!」
コストパフォーマンスが高く、そのうえで走りに妥協を感じさせないところがいい。エンジンは、ハイパワーではないが多くのシチュエーションで使いやすいキャラクターなのがグッド。ダート走破性もただ「走れる」だけではないプラスαの性能がある。軽くてスリムであり、多少荒っぽくも扱える車体なので日常的に使いやすい。

「ここが気に入なる」
リヤABSカット機能はぜひ欲しいところ。ダート上でよりコントロール性が向上し、楽しさも高まるはず。また、このバランスのまま400~500ccまで排気量を上げたマシンも見てみたい。エンジンは性能だけでなく見た目も好みなので、これを生かしたさらなる派生モデル、例えばスクランブラーやフラットトラッカーの登場も期待したい。

■スズキ Vストローム250SXの足着き&ライディングポジション
ライダーは身長165cm。シート高は835mmとやや高めで、腰高な印象。これは運動性能を重視してのこと。スリムかつ軽量な車体によってフレンドリーさは損なわれておらず、前後左右への体重移動もしやすい。ハンドルバーを変更するだけで、スタンディングでの走行も幅広い体格のライダーにフィットするはずだ。

スズキ Vストローム250SX主要諸元

【エンジン・性能】
種類:油冷4サイクル単気筒OHC4バルブ ボア・ストローク:76.0mm×54.9mm 総排気量:249cc 最高出力:19kW<26ps>/9300rpm 最大トルク:22Nm<2.2kgm>/7300rpm 変速機:6段リターン

【寸法・重量】
全長:2180 全幅:880 全高:1355 ホイールベース:1440 シート高:835(各mm) タイヤサイズ:F100/90-19 R140/70-17 車両重量:164kg 燃料タンク容量:12L

【価格】
56万9800円

【車体色】
チャンピオンイエローNo.2、パールブレイズオレンジ、グラススパークルブラック

レポート●鈴木大五郎 写真●佐藤正巳/平島 格 編集●上野茂岐

鈴木大五郎:AMAスーパーバイクや全日本ロードレース選手権など数々のレースへの参戦経験、そして、国内外さまざまなメーカー・カテゴリーの市販バイクの試乗経験を持つ二輪ジャーナリスト。アドベンチャーモデルにも多数試乗し、造詣が深い。

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みんなのコメント

6件
  • sab********
    SX、エンジンが良くできてるので、スーパー林道も行けなくはないのですが、Fサスのストロークが短すぎて底打ちするので、攻めた走りをすると怖い目に遭う。
    ユルいオフで遊ぶのは楽しい。
  • hab********
    オフにおいては”軽さは正義”
    ここから外装減らしてオフ車作りましょうよ、スズキさん。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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