BTCCイギリス・ツーリングカー選手権の2020年シーズン第4戦が8月29~30日にスコットランドの高速トラック、ノックヒルで開催され、前週に続き好調を維持したアシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/レーザー・ツール・レーシング)が、2戦連続でディフェンディングチャンピオンのコリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/チームBMW)を抑え切り、見事なポール・トゥ・ウインを飾っている。
今季からインフィニティにスイッチした2017年王者サットンは、第2戦での勝利に続き第3戦でも優勝を決めるなど、早くもタイトル候補の一角として名乗りを挙げ、2015年にファクトリーマシンとしてBTCCを戦っていた“復帰組”のインフィニティQ50BTCCに、まだ一線級の戦闘力があることを証明してきた。
BTCC第3戦:インフィニティQ50が早くも2勝目。新型フォーカスSTは異例の初勝利
そのサットンは、この高速サーキットの予選でも早々にペースセッターとして主導権を握り、セッション中盤までに50.535秒の最速タイムをマークする。
その後、ホンダのファクトリーチームであるチーム・ダイナミクスで長年エースを務める大ベテラン、マット・ニール(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/ハルフォーズ・ユアサ・レーシング)の大クラッシュにより30分以上の赤旗中断に見舞われると、セッション再開後にサットンのタイムを更新するマシンは現れず。マシンスイッチ4戦目にして、サットンがQ50BTCCに初ポールポジションをもたらす結果となった。
迎えた日曜レース1のスタートは、ポールシッターのサットンが危なげなくホールショットを決めると、その背後では2番グリッドにいたジェイク・ヒル(ホンダ・シビック・タイプR/MBレーシング・アクセラレーテッド・バイ・ブルースクエア)を出し抜き、セカンドロウ3番手のウエスト・サリー・レーシング(WSR)ターキントンが、予想どおりFRのトラクションを活かしてインフィニティの背後に上がってくる。
すると、11番手スタートで若手トム・オリファント(BMW330i Mスポーツ/チームBMW)やステファン・ジェリー(BMW130i Mスポーツ/チーム・パーカー・レーシング)らとバトルを展開しトップ10入りを伺っていたジョシュ・クック(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)が、シケインで大クラッシュ。
マシン後部からバリアへと激突したシビックはリヤセクションを失うほど大破し、ここで車両回収とコース修復のためセーフティカー(SC)が導入される。
数周を経て作業終了でリスタートが切られると、ここからはFRサルーン2台によるマッチレースが開幕。セクター2で迫るターキントンのBMWに対し、サットンのインフィニティはヘアピンからストレートへの立ち上がりで圧倒し、ファイナルラップまでテール・トゥ・ノーズのドッグファイトを展開する。
しかし、最終ラップの最終コーナーで背後のBMW330i Mスポーツがわずかにインサイドを伺ったものの、インフィニティQ50BTCCをパスするには至らず。
これでサットンが早くも今季3勝目をマークし、選手権首位のターキントンが2位、そして最後の表彰台となる3位には、レース終盤にトム・イングラム(トヨタ・カローラBTCC/Toyota Gazoo Racing UK・ウィズ・ギンスターズ)からの猛烈なプレッシャーを凌ぎ切ったヒルのFK2シビックが入っている。
続くレース2は首位2台がふたたび直接対決を演じる展開となり、スタートでサイド・バイ・サイドに並んだインフィニティQ50BTCC、BMW330i Mスポーツの2台は、インサイドを守ったサットンが首位を守ってオープニングラップを終えると、その背後ではふたたびのドラマが。
■レース2も序盤から波乱の展開に
5番手から好発進を見せた好調ロリー・ブッチャー(フォード・フォーカスST/モーターベース・パフォーマンス)を警戒した3番手ヒルが、ディフェンシブなラインをとった隙を突き、4番グリッドのイングラムが3ワイドの攻防を制して前へ。行き場を失ったブッチャーのフォーカスは、グラスエリアにマシンを落とす形となる。
さらに、ターン3となる高速右コーナーの“Scotsman(スコッツマン)”でマイク・ブッシェル(ボクスホール・アストラBTCC/パワー・マックスド・レーシング)とジャック・ビュテル(メルセデス・ベンツAクラス/カールーブ・トリプルR・レーシング・ウィズ・マックツールズ)が絡むと、そこにBTCレーシングのクックが巻き込まれてこの日2度目のSCに。
レース1からの短いインターバルながら、なんとかクックを送り出そうと広範囲にダメージの及んだマシンを懸命に修復したBTCレーシングのクルーにとっては、最悪のアクシデントに見舞われる。
リスタート後も首位2台のバトルに変動なく、3番手イングラム、4番手ヒルのオーダーで進み、5周目には5番手にいたブッチャーがセクター1で仕掛けるも、これが裏目に出てコースオフしグラスエリアを滑走。オリファントやダン・カミッシュ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/ハルフォーズ・ユアサ・レーシング)にポジションを奪われることに。
さらにその後もアンディ・ニート(フォード・フォーカスST/モーターベース・パフォーマンス)のクラッシュで再度のSCとなるも、首位攻防を0.662秒差で制したサットンが27周を走破して2連勝。イングラムが3位表彰台を確保した。
「何度も言うが、正直言ってこのインフィニティQ50BTCCは、僕がこれまでドライブしてきた中でも最高の部類に入るツーリングカーだね」と、新しい愛機に最上級の賛辞を送ったサットン。
「ポールの優位性をそのまま勝利に変えられたのは素晴らしいことで、コリンを2戦連続で抑えることもできた。レース2は明らかにプレッシャーが増し、スタートから何度もミラーでの確認を強いられたから、コリンが臨む展開だったよね」
「僕はおそらく、レース1の4~5倍はディフェンスをさせられたけど、幸いなことに(レースの)残り4分の1くらいでコリンがわずかにミスを犯した。おかげでマージンが得られたんだ」
週末最終ヒートのレース3は開始早々に複数台が絡むマルチクラッシュが発生し、ふたたびSC出動の荒れた展開となるも、スタート早々にリバースポールシッターのセナ・プロクター(ヒュンダイi30ファストバック Nパフォーマンス/エクセラー8・モータースポーツ)をかわしたブッチャーが今季2勝目を獲得。
前戦は勝者クックの再車検失格により初優勝を得ていただけに「これが新型フォーカスとの正真正銘のシーズン初勝利」に。2位プロクターに続き、3位にはトム・チルトン(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTCレーシング)が入っている。
ここまで連戦の続いたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権はここで3週間のブレイクを挟み、第5戦は9月19~20日の週末にイングランド南岸のハンプシャー州に位置するスラクストンで再開。英国が誇る最速サーキットでの勝負が待ち受ける。
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