グローバル規模の地図情報テクノロジーの専門企業であるトムトムは2023年3月22日、恒例になっている世界の交通状況の調査結果をまとめた年次レポート「トムトム・トラフィック・インデックス」2023年版(調査期間:2022年1月1日~2022年12月31日)を発表した。
2022年の世界56カ国・390都市を調査対象としたこのレポートでは、従来の都市ごとの渋滞状況に加え、クルマの運転にかかるコストや、クルマの運転により生じる環境への影響も追加している。
■ 運転コストの上昇
過去数年のコロナウイルスの世界的な拡大の間は在宅勤務が普及していたのに対し、昨今は多くの人々がオフィスに戻る傾向が強まっており、前回調査比で62%の調査対象都市(390都市中242都市)で移動にかかる時間が増加した。
またロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格上昇なども影響し、世界中でインフレが激化し、気候変動の危機が進行する中、トムトムは交通量の増加に伴う経済および環境への影響について調査した。この調査では、世界的に自動車のコストが上昇しているにもかかわらず、大半の都市で自動車が主要な交通手段でありつづけていることが明らかになっている。
2022年は、サプライチェーンの混乱、悪天候、投資の減少などの複数の要因によりエネルギー価格が上昇し、さらにロシアのウクライナ侵攻が状況を大きく悪化させた。また渋滞の発生に伴い、燃料消費量も増加している。
その結果、今回のレポートの結果では、世界中のドライバーはガソリンを満タンにするために2021年より平均で27%多く出費せざるをえず、ディーゼル車を運転するドライバーは、2021年より48%多く出費(特にヨーロッパで軽油の価格が高騰)した。燃料価格が高騰する中、香港エリアは最も運転コストがかかる都市となり、ピーク時に毎日通勤するドライバーは約1000USドル(約13万円:朝・夕のピーク時に往復20km走行した場合の平均値)を費やさざるをえなかった。
日本の都市における運転コストは2021年比で平均11%~14%上昇しており、これはトムトム・トラフィック・インデックスの調査対象都市の平均上昇率を大きく下回っており、日本の都市での運転コストは、香港での運転コストの半分以下となっている。その原因は政府の石油会社への補助金によりガソリン・経由の販売価格が抑えられているからだ。
■ 日常化した日本の都市部の渋滞
世界的に見ると、最も渋滞している都市(超都心を中心に半径5km以内のエリア)は、イギリスのロンドンであり、10kmの走行に平均36分以上(時速17km)必要とし、またラッシュアワー時のロンドンの平均速度は14km/時であることが分かった。都市圏(都市とその近郊地域を含むエリア)ごとでは、コロンビアのボゴタ地区が最も渋滞しており、10kmの走行に平均24分40秒かかることが分かった。
日本では、世界の多くの地域と異なり、都市と都市圏で比較したときのそれぞれの移動時間に大きな差はなく、日本の都市部は非常に密集、混雑していて移動時間がよりかかることがわかった。10km走行するのに、札幌エリアでは24分20秒、名古屋エリアでは22分10秒、東京エリアでは21分40秒かかっている。また、札幌エリア、名古屋エリア、東京エリアの3つの都市圏が最も運転に時間がかかる都市圏のトップ10にランクインしており、日本の都市部の交通渋滞は日常化している。
さらに、今回のトムトム・トラフィック・インデックスでは、日本が10kmの走行により時間がかかっているのは、世界の他の地域に比べて渋滞が多いからだけではなく、高速道路が少ないなど道路網の整備が遅れていることが原因であることが判明した。その結果、交通量の多い時間帯の平均走行速度は、世界で最も低い水準にとどまっている。
柔軟な働き方の普及に伴い、多くの人がリモートワークやハイブリッドワーク、フレックスタイム制を選択できるようになった。一般的には、ラッシュアワーにクルマで移動する人が減れば、その時間帯に交通渋滞により生じる時間的・金銭的な影響は減ると予想される。しかしながら、世界の都市でラッシュアワー時の交通渋滞に巻き込まれる時間はこの1年で増加する一方である。例えば日本では、ピーク時の交通量は都市圏では全体的に減少しているが、多くの都市の中心部では増加しており、札幌では81時間もの時間(朝・夕の往復20kmの走行での平均値)を失っている。このことから、週に1日テレワークをすることで、札幌のクルマ通勤者は49時間の時間を節約することができるといえる。
また、トムトム・トラフィック・インデックスでは、ラッシュアワーに運転した場合のCO2排出量への影響も把握することができた。例えば、ロンドン市民が毎日ガソリン車で通勤する場合、年間1.1tのCO2を排出している。これは、週に1日テレワークをすることで、227kgの排出量を削減することができるということができる。
■ トムトム・トラフィック・インデックス2023年版で導入した新しい調査手法
今回のトムトム・トラフィック・インデックスでは、調査手法を変更した。2023年版では、1km走行あたりの走行時間、コスト、CO2排出量を評価し、都市内の10kmの移動にどれくらい時間がかかるかをシミュレーションしている。
また、今回初めて、都市(urban ultra-center:超都心を中心に半径5km以内)と、都市とその近郊地域を含む都市圏(metropolitan area:人口の集積度により範囲は異なる)の2つのゾーンの分析に取り組んだ。
この手法により、トムトムはより現実の運転状況に近い交通に関する洞察を得ることができている。また、インフラ(高速道路の比率、信号機、速度制限など)が基準速度を上回っている都市と下回っている都市を特定し、都市間の運転状況をより正確に比較できるようになりっている。この新しい手法は、ドライバーが道路交通のために失う時間とお金を定量化し、ドライバーが移動方法を見直し、人と環境に有益な情報を得た上で選択するための基礎となるのだ。
都市部のモビリティは気候変動、疫病、経済発展などの問題に大きく影響を受けており、トムトム・トラフィック・インデックスは、世界中のモビリティパターンのバロメーターとなっている。6億台にもおよぶ通信接続デバイスから収集されるトムトムの交通データは、人の動き、経済活動レベル、世界貿易の水準などの判断をする信頼性の高い指標となっているのだ。新型コロナウイルスの世界的な感性拡大以来、トムトムの交通にまつわる知見は、アナリスト、民間企業およびマスメディアにより、今日の流動的な世界情勢を理解するために活用されている。
オンラインで公開されているトムトム・トラフィック・インデックスでは、2022年の世界各都市における道路交通状況の変化を閲覧することができる。また、最も混雑する日や時間帯を確認し、移動に最適な時間帯を確認することもできるのだ。
・トムトム・トラフィック・インデックスの詳細と国別データ:https://www.tomtom.com/traffic-index/
・世界渋滞都市ランキング:https://www.tomtom.com/traffic-index/ranking/
トムトムは、カーナビゲーション(現在ヨーロッパで販売されている乗用車のダッシュボード内接続型ナビゲーションシステムの10台中7台がトムトム・トラフィックを搭載)、スマートフォン、パーソナルナビゲーション機器、テレマティクスシステムなど、6億台以上のデバイスから交通流データを取得している。
トムトムは毎日、これらのソースから世界中で610億以上の匿名のGPSデータポイントを収集し、総走行距離35億kmをカバーしている。このリアルタイムデータはアーカイブされ、すぐに履歴データとしてアクセスできる。トムトムはこの履歴データに基づいて、1日の各時間帯や曜日ごとの速度プロファイルや交通パターンを評価することができるのだ。トムトムの交通データには、過去10年間で580億時間の運転時間が蓄積されている。
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トムトム 公式サイト
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