日産は2025年1月10日、東京オートサロン2025でR32型スカイラインGT-R(BNR32型)をEV(電気自動車)化したコンセプトモデル「R32EV」を参考展示した。
この取り組みは、日産の技術者が30年前に自分がワクワクした走りの魅力を現代の技術で再現し、30年後の未来にもR32型GT-Rが持つワクワク感を受け継いでいきたいという思いからスタート。社内の有志メンバーがR32型GT-Rの魅力を再現するために試行錯誤しながら作り込んだ車両をお披露目したいということで、今回の東京オートサロン2025で参考展示することにしたという。
R32EV製作チームリーダーの平工良三氏は次のように語る。
「私は仕事(パワートレーンのスペシャリスト)のなかでは昨今、電動車に乗ることが非常に多くて、最近ではe-4ORCEなども担当させていただきましたが、電動車に乗ると非常によくできていて、運転しやすく快適と感じることはあります。その開発のなかで、たまに30年くらい前の例えばR32GT-Rのようなクルマを運転すると、やはり種類の違う高揚感を感じることは今でもあります。それがワクワクするような感覚とは何だろうなということを電動車の時代に築いていきたい、きちんと残していきたいというのが始まりでした。
R32GT-Rに乗っているお客様は数多くいらっしゃいますが、その方たちは非常に幸運で、まだいまだにR32を運転する楽しさだとか、フィーリングを自分で体感できます。ただ、このクルマは数が減っていて、よい状態で乗れるクルマはこれから減っていきます。例えば30年後、もしくは40年後ということを考えると、この楽しさを体感できる方というのは非常に数少ないのではないかと想像できます。もちろん、残す努力はするのですが、一部の限られた方は残っているクルマを体感することはできるかもしれませんが、一般のお客様は例えばR32GT-Rのような楽しさを体感することは難しいだろうと思います。
そこで、30年後のお客様でも、昔こういうクルマが日産にあって運転する楽しさを提供していたんだよというのを体験しようと思えば、やはり電動化で同じような楽しさを再現するということがいいのでは、と思って考えています。従来のガソリン車のようなアナログ的なクルマを、デジタルのEV電動車でどこまで再現できるかに挑戦しました。言わば「クルマのデジタルリマスター版」のようなものとも考えています。30年後も同じような、完全に同じとは言わないのですが、エッセンスとしてのガソリン車を運転するおもしろさを何とか再現できないか、残せるようにできないかと考えたのが事の発端です」
さて、車両の概要は以下のとおり。
・ベース車両:R32型スカイラインGT-R(BNR32型)
・全長×全幅×全高:4545mm×1755mm×1340mm
・車両重量:1797kg
・モーター最高出力:160kW×2基
・モーター最大トルク:340Nm×2基
・乗車定員:2人
・駆動方式:ツインモーター4WD
・駆動バッテリー:リチウムイオン電池(リーフ ニスモRC02)
・燃料:電気
・タイヤサイズ:245/40R18
パワートレーンは日産リーフのモーターを前後に搭載し、電動車ならではの緻密な制御を行うことで、エンジン車特有の加速感を再現することを目指したという。4WDシステムもR32GT-RのアテーサE-TSから前後2モーター4WDへと変更。駆動バッテリーはリーフ ニスモRC02と同じものを使用し、車両重量に合わせてモーターの出力/トルクをチューニングすることで、パワーウェイトレシオ、トルクウェイトレシオをR32GT-Rに合わせている。
外観はR32GT-Rのものをそのまま生かしているが、車両重量が増加しているため、ストッピングパワーを確保する理由から、R35型日産GT-Rのブレーキシステムを装着。ブレーキサイズの拡大に合わせて、R32GT-Rオリジナルの5本スポークホイールのデザインを再現した18インチアルミホイールを新作した。サスペンションには小変更を加えて、全体のバランスを保つようにしている。
インテリアはステアリングやシフトノブはオリジナルを再現。シフトノブは本来MTだが、EVであるためにATのシフトパターン(P-R-N-D)となっており、形状や材質はオリジナルに近いものに仕立てている。メーターとセンターコンソールには液晶パネルを採用。画面上の計器類やコントロールパネルでR32GT-Rのオリジナル表示を色褪せない形で忠実に再現している。シートは特注のレカロシートを装備し、後席部分は駆動用バッテリーの搭載にあてている。
そのほか、R32EVには、名機RB26DETTの音や振動を表現した専用のサウンドシステムを搭載。アイドリングの音から空吹かししたときの音や振動、さらにはパドルシフトでシフトチェンジしたときのエンジン音の変化も再現している。
◆◆◆
「私が入社した当時はR32が現役でしたが、その当時のメンバーだけではなくて、R32が出たころはまだ生まれていないメンバーもこの活動には参画しております。昔のクルマのおもしろさ、30年前の楽しいクルマの運転を体感できるメンバーが若手のなかにもいて、そういうメンバーもいっしょにやっております。この取り組みは商品化のための活動ではありませんが、今後も日産の技術を磨いていきたいと思います」(平工氏)
日産の新たな“古いクルマとのかかわり方”を模索する取り組みに注目である。
〈文=ドライバーWeb編集部〉
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みんなのコメント
新しい車に魅力が無く、過去の遺産にすがるしかないという
今の日産の現状を良く表している展示車だと思う。