トヨタ自動車が国内市場に投入する車種数は50を超え、品揃えでは競合他社を圧倒する。さらに、1000万台超を売る世界市場に目を向けるとトヨタが「非公表」とするほど数が多く、日本ではお目にかかれない車種も多い。北米や中国向け「カムリ」や欧州向け「C-HR」など、日本で販売を終了した車種も海外では独自の進化を続け人気を博している。電気自動車(EV)では中国や欧州向けに国内未導入車種を展開する。競合他社では海外生産車を〝逆輸入〟するケースが増えているだけに、トヨタでもこうした車種の日本導入を望む声は絶えない。
カムリは、1980年にスペシャリティクーペ「セリカ」のセダン版「セリカ・カムリ」として国内で登場。2代目から前輪駆動(FF)を採用したことで広い室内を実現した。海外における人気は絶大で、米国のセダン販売では首位を維持する。日本向けは2023年に販売を終了したが、海外向けは11代目へと改良し、「プリウス」や「クラウン」に似たフロントマスクを採用した。このモデルは日本でも生産・輸出をしているだけに、国内での再販が期待されている。
トヨタ、2025年の世界生産 2年ぶり1000万台超 相次ぎ新型車投入 HV人気も追い風
世界戦略SUVとして16年にデビューしたC-HRは国内向けが1代きりで生産を終了したが、欧州市場では23年に2代目を投入。初代にはなかったプラグインハイブリッド車(PHV)を用意したのが特徴で、位置情報を活用して欧州大都市の低排出ガスゾーンに入ると自動的に電気自動車(EV)走行に切り替わる「ジオフェンス機能」も備える。
アジアではピックアップトラック「ハイラックスチャンプ」が売れている。タイの〝国民車〟として親しまれてきたハイラックスの原点に回帰し、荷台架装の拡張性を持たせるとともに車両価格を45万9000バーツ(約210万円)に抑えた。23年のジャパンモビリティショーでコンセプトモデルが紹介されていただけに、国内投入が期待されているモデルだ。
EVでは、中国市場向けに比亜迪(BYD)、一汽トヨタ自動車の3社で共同開発した「bZ3」を23年に投入している。欧州ではスズキからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける「アーバンクルーザー」を発表。計画の25年から遅れる見通しだが、米国ではケンタッキー州の工場で3列シートSUVの生産を開始する。
国内市場では、ホンダ「WR-V」やスズキ「フロンクス」、三菱自動車「トライトン」など海外から輸入したモデルの販売が好調だ。トヨタでは20年5月から全車種併売がスタートし、徐々にではあるが国内取り扱い車種は減少している。足元では需要が供給を上回る状況が続き長納期化や受注停止が顕在化する中で、海外の魅力的な車種に国内でも熱視線を向けられるのは仕方がないことかもしれない。
(福井 友則)
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