■スーパーカーもエコを意識する時代に突入?
ポルシェから「カレラGT」が発表されてから7年。2010年のジュネーブ・ショーに、ポルシェは再び興味深いコンセプトカー「918スパイダー・コンセプト」を出品した。
桁が違う… 5007馬力の12000ccエンジン搭載 ドバイ製スーパーカー登場
エアロダイナミクスをさらに追求したそのボディスタイルからは、それがカレラGTの正常進化型であることは容易に想像できたのだが、世界を驚愕させたのは、その運動性能のみならず環境性能にもあった。
最高速は320km/h、0-100km/h加速が3.2秒以内、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェを7分以内でラップする運動性能を持ちながら(6分57秒)、同時にECEモードで3L/100km(約33km/L)の燃費と、70g/100kmのCO2排出量をも実現していた。
それはハイエンド・スーパースポーツ、いわゆるハイパーカーが誕生した瞬間ともいえた。
●2015 ポルシェ「918スパイダー」
ポルシェ918スパイダー・コンセプトは、なぜここまで優秀な運動性能と環境性能を両立することができたのか。
それはハイエンドに位置するスーパースポーツカーとして初めて、PHEVのシステムを搭載したからにほかならなかった。ポルシェはコンセプトカーの発表時に、2013年からこの918スパイダーの量産をおこなう計画を発表し、その計画は予定どおりに実行されることになった。生産台数は車名にちなんで918台である。
簡単に918スパイダーのパワーユニットを解説しておこう。
パワーユニットの核となるエンジンは4.5リッターV型8気筒で、これはレーシングカー「RSスパイダー」用のエンジンをさらに改良したものである。
最高出力は608psとされ、これにフロントに129ps、リアに156psの2基のEモーターを組み合わせる。システム全体では、最高出力887ps、最大トルク780Nmを誇った。
搭載されるバッテリーは6.8kWのエネルギー容量を持つ138kgのリチウムイオンバッテリーだ。918スパイダーは、最終的に0-100km/h加速2.6秒、最高速度345km/hを実現している。
完全なゼロエミッション走行となるEV走行は、満充電からならば約50kmが航続可能であった。これはカスタマーにとって十分に満足感が得られる数字だ。
■およそ1億円で落札された「918スパイダー」
ポルシェ918スパイダーのデビューに前後して、ハイエンドのスーパースポーツにも続々とPHEVモデルが誕生する。
マクラーレン「P1」やフェラーリ「ラ フェラーリ」などがそうである。ただし、P1のEVのみでの航続可能距離は約10km程度、ラ フェラーリにいたってはEVのみでの走行はできないので、918スパイダーとの差は大きいといわざるを得ない。
●2015 ポルシェ「918スパイダー」
今回の「オープンロード」オークションのポルシェ・コレクションに出品された918スパイダーは、2014年に新車登録されたワンオーナーカーである。
生産順では389番目となるこの個体には、魅力的なオプションが数多く与えられている。
たとえば、ポルシェのリキッドクロームブルーメタリックのエクステリアカラーとシルバーのアクセントが採用されたモカブラウンレザーでトリミングされたインテリアのエレガントなカラーコーディネイトは、918台中わずか3台しか存在しない例であるという。
前後のホイールはヴァイザッハ・パッケージのものだが、オリジナルのホイールも出品車に含まれている。そのほかのオプションには、フロントエンドリフターといった、日常で使用する際に必要不可欠な装備もセットされている。
デリバリー以来、スイスで所有されてきた出品車は、2018年11月に走行距離4454kmの時点で、ポルシェ ゼムトラムツークによって最新のサービスが実施されている。
その後の走行距離はわずかに1000km程度というから、コンディションは内外装ともに良好であるため、落札者を失望させることはないだろう。
参考までにRMサザビーズによる予想落札価格は、97万5000-110万スイスフラン(邦貨換算約1億1400万-1億2870万円)であった。
918スパイダーはコレクターズアイテムとしても人気が高く、なかなか手放すオーナーも少ないために、オークション・マーケットにもたまにしか見ることがない。そのため、今回のオークションでも23ビットと入札数こそ多かったのだが、残念ながら最高ビッドは予想落札価格に届かず、新車価格とほぼ変わらない91万スイスフラン(邦貨換算約1億600万円)であった。
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