フルモデルチェンジしたメルセデス・ベンツ「Cクラス」のステーションワゴンに小川フミオが試乗した。
伝統のワゴン
一部では絶滅危惧種なんて言われているステーションワゴン。でも実際は、クルマとしては多機能で、みすみす見逃す手はない。メルセデス・ベンツの新型Cクラスに設定されたステーションワゴンに乗ると、“こりゃスポーティで楽しい”と、改めて感心した。
読者のかたにも、いちど体験しては? と、勧めたい今回の試乗車は、1993cc直列4気筒ディーゼルターボ・エンジン搭載のC220dステーションワゴンで、かつ「アバンギャルド」仕様だった。
試乗車は、さらにスポーツサスペンションや18インチ専用ホイール、シート表皮を含めた専用インテリア、「スターパターン」と呼ばれるグリルを含めた専用のスタイリングパッケージなどからなる「AMGライン」というパッケージ・オプションが組み合わされていた。
スタイリングは、ボディ全体に丸みを帯びて、いわゆる“かたまり感”がより強くなって、広い荷室を誇示するような、以前のステーションワゴンとはあきらかに違うデザイン・コンセプトと感じられる。サイドウインドウのアウトラインも、クロームの縁取りが一筆書きのような、きれいなカーブを描いていて、“クーペ的”ともいえるぐらいのスタイリッシュさだ。
それでいて積載性は高い。リアシートのバックレストをすべて倒すと、ラゲッジルームは1510リッターにひろがる。このバックレストは、ラゲッジルームサイドにあるスウィッチを押せば、瞬時に倒れるので便利だ。
ラゲッジルームのフロア下には小物入れもあるし、トノーカバーや荷崩れを防ぐネットなども標準装備。さすがは長年、ステーションワゴンを手がけてきたメルセデスだけあって、使い勝手はよく考えられている。
スポーティな走り
最高出力147kW(200ps)、最大トルク440Nmというだけあって、エンジンのフィーリングは充分パワフル。しかも、ごく低回転域で電気モーターが作動し、駆動トルクをくわえるので踏み始めから、期待以上の出足のよさだった。
エンジンは静かだ。ディーゼル・エンジンに特有の“カラカラ”といったノッキング音は聞こえてこない。高速になると、タイヤハウスあたりからのロードノイズがやや気になったものの、それは、ほかが静かだから相対的に目立ったのかもしれない。
足まわりがしっかりしているぶん、ハンドリングのよさはこのクルマの特徴だ。太めのグリップ径をもつAMGライン専用のステアリング・ホイールの操作に対し、車両の反応は良い。カーブでは、ボディのロールが抑えられて、ドライバーである私の思ったとおりの走りが出来た。
さきに触れたとおり440Nmもある最大トルクは1800rpmから発生するので、アクセルペダルの踏みこみあるいは力の抜きかた、ともに鋭敏に応えてくれる加減速のよさも、操縦性の高さに寄与している。
やや低めの回転数(4400rpmぐらい)からレッドゾーンが始まるエンジン回転計だけがディーゼル・モデルであるのを教えてくれているようなものだ。エンジン回転計を気にしないひとなら、どんなエンジンかわからないかもしれない。
(市場の状況が許せば)2030年から販売する全モデルをEV(電気自動車)にするとしているメルセデス・ベンツでありながら、1892年にルドルフ・ディーゼルが発明したディーゼル・エンジンをここまで磨き上げているのは、驚嘆だ。
良き選択
音声認識によるコマンドで、ナビゲーションやオーディオやエアコンなどさまざまな操作が出来るMBUXも精度が上がっているし、“ドライバーの思いどおりに使えるクルマ”という印象を強く持った。
ラゲッジルーム以外のクオリティや使い勝手はセダンとおなじだ。物理的なスウィッチを可能な限り減らし、ほとんどの操作や設定をセンターの大型液晶パネルで操作するが、慣れるとこれも扱いやすい。
C220dステーションワゴン・アバンギャルドの価格は705万円。1.5リッターのガソリンエンジン搭載の「C200ステーションワゴン・アバンギャルド」は677万円で、並行して販売される。
個人的には、トルキーな走りを味わえる今回のディーゼルモデル、かなりいいと思う。それでいてWLTCモード燃費は18.2km/L。どこまでも走り続けたくなるステーションワゴンだ。
文・小川フミオ 写真・田村翔
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みんなのコメント
因みにデザインは好みとは言え、内装も外観も、Sクラス始め上位モデルではなく、明らかにAクラスーBクラスの同類ですね。
なんともチグハグだが、このテイストを「先進」とか「モダン」とか思い込ませて富裕・高齢ユーザーに押し付ける戦略ならば成り立つということか?
これはミニバン率が圧倒的な日本に限定された事でしょ
ただ多趣味だったり犬を飼ってたりすると走行が安定してる上にラゲッジの広いステーションワゴンは最良な車でしかない