■航空宇宙産業の技術が「ボライド」に
ブガッティが発表したサーキット走行専用車の「ボライド」には、現在彼らがもつ最先端技術のすべてが採用されているといってもよい。
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そのなかでもとくにブガッティが強調するのは、リアミッドに1850ps仕様のW型16気筒4ターボエンジンを搭載しながら、車重をわずか1240kgに抑え、0.67kg/psという驚異的なパワー ウエイト レシオを実現したことである。その結果、最高速度は500km/h以上、完璧ともいえるハンドリングで類い稀な敏捷性も手に入れた。
「ボライドで実現した多くの技術的ハイライト、とくに軽量化技術は、現在ではたしかに特別なものであるのかもしれないが、それらは将来的には生産車に移行することができる」
そう語るのは、ボライドの開発プロジェクトとともに、ブガッティの新技術責任者に任命された、フランク・ゲッケである。
まず、鉄筋コンクリートの柱と同じくらいの強度をもち、かつ超軽量な部品を想像してみて欲しい。革新的なブガッティのエンジニアが率いる技術のおかげで、これが可能になったのだ。
その新しいプロジェクトは、2017年から金属材料とその製造プロセスを開発しているヘンリック・ホッペによって主導された。彼は、ブガッティの新技術部門に属し、また博士課程の学生でもある。
彼は3Dプリンターによってチタン製のブレーキキャリパーの計算方法論に関する修士論文を書いたが、この段階ですでにそれは、「シロン」よりも43%も軽く、そして同じレベルの剛性が確保されていた。
「一般に3Dプリンティングと呼ばれる選択的レーザー融解プロセスを通じて、内部から硬く仕上げられた新しい中空の複雑な部品を、非常に軽量に、また硬く作り出すことができます。
私たちは、ハイパーカーのコンポーネントの数を増やすことで、これらの利点を利用しています」と、ホッペは語る。
博士課程の研究では、エンジニアはさらに高度な領域へと研究を進めることとなる。ホッペはコンセプトからデリバリーに至るまで、製造プロセス・チェーンのサイクルに伴うコストと時間の関係を考慮した、新しいシステムを開発している。
これまでは、これらのタイプの部品はおもに航空宇宙産業で使用されていたが、ホッペらの努力の結果、自動車でも特定の部品で用いる可能性が高くなった。
■「ボライド」のテクノロジーは、今後のロードモデルへフィードバックされる
ブガッティは、複雑な3次元構造を持つコンポーネントを強化するために、この革新的な3Dプリンティング技術を「日常的に」使用している。バイオニクスの分野の原則を適用して、プリントされたコンポーネントに骨のような構造を与えるためだ。
さらに薄い壁、中空の内部、細かい分岐が各々のコンポーネントには備わっている。たとえば、ボライドのチタン製3Dプリントプッシュロッドは、わずか100gという重量で、最大3.5トンもの力を伝達できるようになった。
「考えられるすべての分野で革新的な機能を増やしながら、クルマの重量を減らし続けます」と、ヘンリック・ホッペは今後のプランを語るが、同時に「ブガッティは材料、製造プロセス、部品の面で最高品質基準を要求していますが、同時に商業的に実行可能な商品でなければなりません」とも、現実的な意見も付け加えている。
* * *
もう少し、ボライドのストイックなまでの軽量化を知る数字を紹介しよう。それは、ブガッティが3Dプリンティングの世界において、技術的リーダーであることの証でもある。
2018年、世界最大の3Dプリントチタン部品であるチタンブレーキキャリパーがブガッティから発表されたのが、ブガッティにとっては初の3Dプリンティングの製品化といってもよいだろう。
そして3Dプリンティングは、ボライドでブガッティの完全な技術的専門知識の妥協なき作品を象徴する技術ともなった。
ブガッティの新技術責任者フランク・ゲッケは次のようにコメントしている。
「3Dプリンティングによって生み出されるコンポーネントは、非常に軽量で堅牢、かつ耐久性があり、生産車での使用に最適です。ブガッティのカスタマーは将来的に、ほかのモデルでこれらの最先端技術を見ることになるでしょう」
ボライドのホイールは、モータースポーツで使用されるターボファンと同様に、さまざまな機能を有している。
素材は超軽量マグネシウム合金で、ターボファンは厚さ0.48mmの3Dプリントチタンで作られたセンターボールと、カーボン製の内側のブレードを持つ0.7mm厚のカーボンプレートで構成され、ブレーキの冷却やフェンダー内からのエアの排出、リフトを最小限に抑えるために機能する。ちなみに後輪の18.25インチサイズ(前輪は14.25インチ)のターボファンの重量は、400gにも満たない。
フロントウイング用の取り付けブラケットは、やはりブガッティによってプリントされたもので、重量は600g。この重量で800kgまでのダウンフォースに耐えることができるという。
ビッグサイズのリアウイングは、320km/h時に最大1.8トンものダウンフォースを生むが、そのセンターフィンの内側には積層、およびプリントされたチタン部品が内蔵されており、それだけのダウンフォースに耐えるにも関わらず、重量はわずかに325gに抑えられている。
ボライドは前述のとおり、公道走行が不可能なサーキット走行専用車だが、その先進的な技術を継承したモデルの誕生は、多くのカスタマーが望むところだろう。
1850psの最高出力を誇る8リッターW型16気筒4ターボエンジン、わずかに1240kgの重量、0.67kg/psという驚異的なパワー ウエイト レシオと500km/h以上の最高速。
繰り返すが、これは夢ではなく現実のスペックだ。そしてこのスペックを実現するための革新的な3Dプリンティング技術。現代の最先端自動車産業テクノロジーの結晶ともいえるのが、ブガッティ・ボライドである。
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みんなのコメント
そのスピードに耐えるタイヤを製造出来るのも凄いんだよね。