「人とくるまのテクノロジー展2022」を見学していると、電動化全盛の今ならではの多彩なビジネスモデルが展開されていることがわかってきた。たとえばF1譲りのマクラーレン製EV用パーツを発見。もちろんOEMが中心なのだろうけれど、1台から購入できる。ということは、予算が許せばスーパーEVのワンオフ製作も、もしかして可能なのか?
F1シーンで磨かれた「高効率」の真価を、試してみたい
「McLaren Applied(マクラーレン アプライド)」は、F1チーム マクラーレンの関連会社である「McLaren Applied Technologies」が開発、製造している電装パーツブランドだ。リリースされるハイエンドモータースポーツ用電装部品にはもちろん、F1グランプリで磨かれたノウハウがふんだんに注ぎ込まれている。
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今回、人テクで展示されていたのは、EV用高性能モーターを効率的に駆動させるための機能を備えたインバータ「IPG 5」だ。SiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)を利用することでクラス最高レベルの効率と軽量化を実現している。
結果として超高速充電が可能なステーションを活用して充電時間を短縮できるほか、航続距離の拡大、重量とコストの削減なども可能になるという。「インバータ」というと色気のない真四角な弁当箱が思い浮かぶが「マクラーレン」と言われるとどこか普通じゃないオーラが漂っているような気がしてくるから不思議だ。
これらマクラーレン アプライドの製品を日本に輸入しているのが、アジア地区輸入代理店を担う「株式会社PUSE(ピューズ)」。もちろん基本的な顧客は完成車、自動車部品、素材メーカーなど。加えて、電力会社や自治体、教育機関などからの自動車や、バスほかのビジネスビークル系の受託開発とエンジニアリングサポートを行っている。
私のような一般人にはあまり直接的なご縁はないな、と思いきや、「お金に糸目をつけない財力をお持ちなら、個人の方でもEV製作をサポートさせていただきます」と言われて、俄然興味がわいてきた。間違っても「おいくらですか?」とは聞けないけれど、妄想するのは自由だし。
特別なクルマを楽しむ、という意味ではEVってレーシングカーに似ている?
大変失礼千万ながら実は当初、ピューズと言われてもピンとこなかった。だが、なんと40年近く前から電気自動車開発に携わってきたという。実は母体は「東京R&D」だということがわかって、納得がいった。
レースファンにとっては、オリジナルのマシンや、F3000のシャシ開発、少量生産のスポーツカー「VEMAC」のコンストラクターとして知られている、東京R&D。その一方で、創業してほどなく1984年には電気自動車開発にいち早く着手し、電気バイクやスクーターといったオリジナルモデルを発表したほか、マツダ カペラカーゴを改造した電池交換システム付EVといった野心的なスペシャルモデルを、開発・登録してきた。
1999年12月に東京R&DのEVシステム事業部が「PUSE」がとして独立、電装システムやバッテリー、モーターといったユニットの開発を手掛けるとともに、電気自動車のトータルシステムインテグレーション事業が本格化していく。
市販モデルをベースにEV、EVバス、EVトラックの架装を請け負いながら、電力会社や大学の研究室などの開発・研究へのサポートも積極的に取り組んできた。慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスを中心とする38の企業体が関わった8輪駆動の電気自動車「エリーカ」の開発も担っている。
さまざまな分野で「電動化」が重要なトレンドとなる中で、EVの受託開発についての長い経験と卓越したノウハウを持つピューズの存在感は、ますます大きくなっているようだ。
と、ちょっと堅苦しい話が続いてしまったけれど、ピューズに任せておけば、マクラーレン アプライド以外にも、高性能、高品質な電動車両用コンポーネントを使ったコーディネイトをサポートしてくれるし、いろいろな意味で頼りになる存在であることは間違いない。
そういえば今回の展示会では、レースシーンでの活躍や優れたチューニングパーツメーカーとして認識されているHKSがブースを出展、EVコンバージョンの提案を行っていた。「速さ」を極めてきた老舗もまた、内燃機関の効率を高める技術としての新しいバルブレイアウト技術やプレチャンバーなど、「CASE」への取組みを機に新しい業態を模索しているようだ。
ところでマクラーレンのインバータだが、もしも個人からの注文が入ったらぜひ教えてください、とお願いしておいた。たぶんないかな・・・ないだろうなぁ・・・。
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