ポルシェのLMDhファクトリーディレクターであるウルス・クラトルは、6月15~16日にフランス、ル・マンのサルト・サーキットで開催された第92回ル・マン24時間レースの結果を嘆き、ポルシェ963がライバルに対してトップスピードで苦戦したと語った。
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)は、LMDh規定のファクトリーカーで総合4位と同6位に入った。WEC世界耐久選手権の第4戦として行われた同レースではプライベーターのハーツ・チーム・JOTAも2台の963を走らせ、総合8位と9位で完走を果たした。
力走のトヨタ、わずか14秒及ばず。ドラマに溢れた激戦制し、フェラーリ499Pが連覇達成/ル・マン24時間決勝
ポルシェ963は2年連続で総合表彰台に届かなかったが、さまざまなメカニカルトラブルやオペレーション上の問題に直面した2023年のル・マンデビューイヤー(5号車:16位、6号車:22位、75号車:リタイア)に比べると、今年の戦いはそれにかなり近づいたと言えるだろう。
「惜しかった」とクラトルはレース後に記者団に語った。
「優勝まであと40秒だった(編注:トップと37.897秒差。3位の51号車フェラーリ499Pとは1.167秒差)」
「なんと言ったらいいのだろう。トップ10に4台が入ったと言っても、誰も気にしないだろう。そういうものなんだ」
ポルシェ勢に何が足りなかったのか、と問われたクラトルは、ドイツメーカーのLMDh規定ハイパーカーのトップスピード不足を指摘した。
マシュー・ジャミネ、フェリペ・ナッセ、ニック・タンディがドライブした4号車ポルシェ963(PPM)は、TOYOTA GAZOO RacingのトヨタGR010ハイブリッドに匹敵する344.5km/hは記録したが、WECのレギュラーカーである5号車と6号車ポルシェ(いずれもPPM)は、トヨタ勢や2年連続でル・マンを制したフェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)と比べて直線ペースで苦戦を強いられた。
6号車ポルシェ(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール組)のトップスピードは337km/hとかなり遅く、5号車ポルシェ(マット・キャンベル/ミカエル・クリステンセン/フレデリック・マコウィッキ組)はさらに低い336km/hとなっている。この2台のワークスカーについて、同氏は別のエアロ戦略をとっていた可能性があることを示唆した。
「我々は明らかにトップスピードが足りなかった」とクラトルは述べた。
「どういうわけか他のマシンのほうが速かったんだ」
「週末の前に誰もが大声で叫び、喚いていたよりもはるかに(競争力が)接近していたにもかかわらず、ポルシェ963はトップスピードを欠いていた」
「ル・マンでトップスピードがなければ、それは失敗だ。それが現実であり敗因のひとつだ」
「ふたつめの要因は、おそらくその時点で最適ではないタイヤ選択をしてしまったことだ。『今日は簡単ではなかった』と主張することもできるが、とにかく24時間のスプリントレースだからね」
「フルスピードだった。フェラーリも速かったし、トヨタも速かった」
クラトルは続けて、「おめでとうフェラーリ」とライバルメーカーを祝福した。「彼らは私たちより単純に優れていた。今日は我々の力が足りなかった」と素直に敗北を認めた。
「私たちはあまりに多くのミスを犯したが、それでもチームを誇りに思う。本当だ」
彼は、雨が降ったり止んだりする複雑なコンディションの難しいレースのなかで、ワークスカーを運営するPPMがタイヤに関して適切な判断を下せなかったと感じることが何度かあったと指摘した。
そのひとつは、ポルシェ・ペンスキーが雨のなかでローレンス・ファントールをスリックタイヤのまま1周余計にステイアウトさせたことだ。
「ランチタイムや早朝に雨が降ったとき、私たちは(ライバルと)違うことをしようと思ったんだ」とクラトルは説明した。
「セーフティカーも何度か入った。(パドックでは)スローゾーンで不運に見舞われたという話も10回は聞いた。でも、みんなそうだったと思う」
「それは我々の運が悪かったわけでも、BoP(バランス・オブ・パフォーマンス=性能調整)のせいでもない。私たちがしくじったんだ」
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みんなのコメント
速すぎる…と主催からハンデを科されるBoP
欧州メーカー以外を勝たせないようにするBoPの壁は高い・・・