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タイプ991の最晩年モデル「ポルシェ911カレラT」は、ベストワインディング911だった 【Playback GENROQ 2018】

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タイプ991の最晩年モデル「ポルシェ911カレラT」は、ベストワインディング911だった 【Playback GENROQ 2018】

Porsche 911 Carrera T × 911 Carrera S

ポルシェ911カレラT × 911カレラS

タイプ991の最晩年モデル「ポルシェ911カレラT」は、ベストワインディング911だった 【Playback GENROQ 2018】

タイプ9‌91の功と罪をレギュラー最終モデルで確認する

991型の登場は空冷から水冷に変わった時と同様に911に衝撃を与えたフルモデルチェンジだった。そして、そのライトサイジングターボエンジンを搭載した991が早くも992型に代替わりしようとしている。その存在意義を、日本上陸したカレラTに乗りながら考える。

「白熱する911論は裏を返せば普遍的なコンパクトさを望むが故──」

いよいよこの秋、おそらくはLAオートショーの近辺に、新しいポルシェ911(すでに本社経営陣が公式の場でそう呼んでいるので、コードネームはタイプ992で間違いないはず)がデビューする。その概要については、最高峰に遂にハイブリッドが用意されるなどの断片的な情報があるだけで、未だ多くは明らかではないが、ポルシェのフルモデルチェンジだけに、大きな飛躍を期待していいはずだ。

タイプ992の登場は当然、現行の991がその役目を終えることを意味する。991のデビューは今を遡ること7年前の2011年。大成功作となった997からのフルモデルチェンジは、993から996への進化と同等の、非常に大きな飛躍を果たすものとなった。

革新の目玉はボディだった。構造はスチール、アルミニウム、マグネシウム、樹脂を組み合わせるマルチマテリアル化。初期の911カレラで全長4491mm×全幅1808mm×全高1303mm、ホイールベースは2450mmというサイズは、全長が997より56mmだけ長いが、全幅はそのまま。全高は7mm低かった。

「物議を呼んだディメンションの変更はモータースポーツ部門からの要請」

それでも当初、方々で殊更に「大きくなった」と書き立てられたのは、フロントトレッドが拡大されて左右ヘッドライトの間隔が広がり、かつ全高が下がったことで、外からもそして運転席からも、実際以上に大きく見えたのが大きい。デザインのマジックに引きずられたわけだ。また、100mm延長されたホイールベースも「後席の居住性の拡大のため」や「ハイブリッド化のため」などと言われたが、乗れば後席は別に広くなっていないし(良い意味で!)、ハイブリッドも遂に出なかった。

実はこのディメンションの変更はモータースポーツ部門からの要請だと当時、研究開発部門の総責任者だったウォルフガング・ハッツ氏は話していた。997の高速コーナーでの劣勢を挽回するためのロングホイールベース化だったのだ。

もっとも、こんな風にサイズひとつで議論が白熱するのは、裏を返せばコンパクトさこそ911の魅力だという思いを、いかに多くの人が抱いているかという証左とも言える。ポルシェ自身も悩み皆無ではないだろうが、あれから7年が経ち、ライバル達との関係性を見れば、このパッケージングが正解だったことは明白だ。もし996から997への進化と同様、これから6~7年は造り続けられるはずの992が、991の基本ディメンションを継承するとしたら尚のことである。

「タイプ991のレギュラーモデルの最後は、ナロー時代の911Tがモチーフ」

他にもトピックは数え切れないほどあるが、敢えてもうひとつ挙げるならば、後期型でカレラシリーズにもターボユニットが搭載されたことだろう。幸いにもサウンド、レスポンスにネガは感じられず、4気筒化された718のように賛否が問われる状況にはなっていない。「911は6気筒」というのも開発陣が断言しているところだ。

ワイドなバリエーションの話、GT系の話など、まだまだ話題が尽きない991。その締め括りは限定車の911スピードスターとなりそうだが、レギュラーモデルの最後を飾るのは911カレラTである。モチーフはナロー時代の911T。エンジン出力は小さいものの装備の簡素化による軽さを活かして、モータースポーツで活躍したモデルだ。

現代の911カレラTは、カレラと同じ最高出力370psの3.0リッターターボエンジンを採用。軽量ウインドウや簡素化されたドアトリムの採用、リヤシートや遮音材の省略などによりダイエットを行い、車重を20kg軽減し、PASMスポーツシャシーを組み合わせる。

「911カレラTはワインディングロードでのベスト911に違いない」

その走りには驚いた。想像以上にクルマの動きが軽いのだ。動き出しやノーズの反応のカレラSとの明確な差には、にわかに信じ難い気すらした。車重の差、たった30kgなのに! 軽量ウインドウのおかげで上屋が軽く、硬めのサスペンションが反応をシャープにし、各種の音が室内によりダイレクトに響くようになって・・・という相乗効果だろうか。パワー感もちょうどいい感じ。ボリュームを増して聞こえるエンジン音も心地よく、思い切りアクセルを踏み込める。走らせていて、ふとカレラ3.2の頃辺りの911を思い出した。

今回は足を延ばせなかったが、911カレラTはワインディングロードでのベスト911に違いない。ただし、速さを競うクルマではないだけに、できればやはりMTが選べたら最高なのだけれど・・・。

「この先も続く911の長い長いヒストリーの中でも重要な役割を占める世代」

991の時代に911の価格はじわじわと上方移行してきた。また、911Rのような限定車だけでなくGT3系ですら、価格面だけでなく希少性のますますの高まりにより現実味が薄くなってきて、911全体がかつてより遠い存在になってきたような感もある。そんな中で最後に、このカレラTのような911の原点を感じさせるモデルを出してきたことは、ポルシェ自身も同じようなことを感じてくれてはいるのかなと思わせるものではあった。

ひとつの時代が終わろうとしている。実は991、自身で前期型カレラにしばらく乗っていたため思い入れもあるし、今はまだ現役だけに、まだ生々しすぎて総括するのは難しいのだが、今回カレラTのステアリングを握って、991がやはり紛れもない911だということ、7年の時を経ても一線級の実力を持っていることは改めて確認できた。この先も続く911の長い長いヒストリーの中でも重要な役割を占める世代として、のちの歴史書に刻まれることになるのは間違いない。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ911カレラT〈カレラS〉

ボディサイズ:全長4527〈4499〉 全幅1808 全高1285〈1296〉mm
ホイールベース:2450mm
車両重量(車検証):1460〈1490〉kg
エンジン:水平対向6気筒DOHCターボ
圧縮比:10:1
総排気量:2981cc
最高出力:272〈309〉kW(370〈420〉ps)/6500rpm
最大トルク:450〈500〉Nm(45.9〈51.0〉kgm)/1700-5000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前245/35ZR20(8.5J) 後305/30ZR20(11.5J)
最高速度:291〈306〉km/h
0-100km/h加速:4.2〈4.1〉秒
環境性能(EU複合モード)
燃料消費率:8.5〈7.7〉L/100km
CO2排出量:193〈174〉g/km
車両本体価格:1432万円〈1584万1000円〉

※GENROQ 2018年 12月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

1件
  • 日本の正規モデルはマニュアルが出なかったね。

    並行モデルで入手は可能だけど、残念だ。

    993ラバーだった島下も何とか褒めないと銭にならないから嫌々書いている気がする。

    ニュルのレースでは997ではAMG-GTのワイドスパンには勝てなくなったのも事実。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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