2023年のF1開幕戦バーレーンGPは、レッドブルがワンツーフィニッシュ。そのパフォーマンスは圧倒的で、残りの22戦も同じような一方的な展開になれば、視聴者がTVのスイッチを切りたくなるというのが正直なところだろう。
第2戦は3度目の開催となるサウジアラビアGP。コース特性はバーレーンとは全く異なるが、レッドブルの優位は揺らぐだろうか。
■レッドブルF1圧倒的強さの背景に、空力制限ペナルティあり? ホーナー代表「集中するのに役立った」
過去2戦、サウジアラビアGPは話題に事欠かないレースとなった。初開催の2021年はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が予選Q3でウォールに接触し、センセーショナルなラップが台無しになったのを始め、シーズン後半の開催だったこともあってタイトル争いも白熱。フェルスタッペンとルイス・ハミルトン(メルセデス)は文字通りコース上で激突した。
2度目の開催となった2022年は、フェルスタッペンとシャルル・ルクレール(フェラーリ)がDRSを使った駆け引きを繰り広げた。実績こそ多くは無いものの、サウジアラビアGPがクラッシュやセーフティカー、そして魅力的なバトルを生み出す傾向があると言えるだろう。
しかし、そんな前例はもちろん保証にはならない。だが嬉しいことに、サウジアラビアGPがバーレーンよりも緊迫した戦いになることを示す指標は他にもある。
昨シーズンのサウジアラビアGPでは、トップスピードの面でアドバンテージを持っていたレッドブルRB18が優勝候補に挙げられていた。フェラーリのSF-75はコーナーや初期加速が優れていたが、コース特性はレッドブル向きだったのだ。
今季のフェラーリとレッドブルはこうした特徴が逆転している印象がある。シーズン前の走行とバーレーンでのレースで得られたGPSデータから、フェラーリSF-23は直線でライバルマシンを圧倒するスピードを持つことが判明した。レッドブルは低速コーナーでのパフォーマンスが強くなったが、時速290kmを超えるとフェラーリに引き離されてしまう。
サウジアラビアのジェッダ市街地コースには、この速度を超えるポイントが3つある。もしフェラーリが予選で、あるいはRB19のDRSの範囲に入ることで、そのストレートスピードを発揮することができれば、フェルスタッペンとセルジオ・ペレスが2回連続で無敵のワンツーフィニッシュを獲得することはないだろう。
フェラーリは、レッドブルと比べてマシンコンセプトが悪いというよりも、セットアップを最適化できていないことが敗因だったと言い訳している。とはいえ、バーレーンは全チームがプレシーズンテストから走行を続けていたのだが……
フェラーリのフレデリック・バスール代表は次のようにコメントしている。
「私は予選では他のマシンに匹敵する速さがあって、レースでは同じような速さを発揮できないというクルマを、これまで見たことがない。だから今回の敗因は、マシンのセットアップの問題のはずだ。コンセプトの問題ではない。だから、コンセプトを変えるという方向に進む必要はない」
レッドブルに対抗するため、セットアップを洗練させるという点で、ジェッダのスムーズな路面は助けになるはずだ。路面の攻撃性が高いバーレーンではレッドブルとアストンマーチンがうまくタイヤをマネジメントした一方で、フェラーリやメルセデスは激しいデグラデーションに苦しんだ。
デグラデーションは2022年のフェラーリF1-75の弱点でもあったが、サウジアラビアではもっとうまくタイヤをマネジメントできると考えている。
フェルスタッペンもこの点を警戒しているようだ。彼は「サウジアラビアはかなり違うコースだ」とコメントしている。
「ストレートや高速コーナーが多いし、デグラデーションも少ない。だから、レースペースの面でも、ジェッダではもっと接近していると思う」
「ジェッダはかなり違う状況になりそうだ。僕らのクルマは高速コーナーに強いけど、フェラーリはストレートが速い」
理論上、レッドブルに挑めるライバルはフェラーリ以外いないように見える。バーレーンGPではアストンマーチンのフェルナンド・アロンソが印象的なパフォーマンスを見せ、予選5番手、決勝3位を獲得した。しかしアストンマーチンのAMR23は低速域とブレーキングに優れているが、直線では比較的空気抵抗が多かった。セットアップの調整でこの問題を軽減させることはできるが、決して得意とするサーキットではない。
メルセデスはファンに向けて書簡を発表し、復活まで辛抱するよう求めた。まだ1戦終わったばかりということを考えると異例だが、それだけメルセデスがサウジアラビアGPで優勝を争うことを期待していないということを示しているだろう。
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