英国ロータスカーズは2023年8月18日(現地時間)、米国カリフォルニア州モントレーで催されたザ・クエイル・モータースポーツ・ギャザリング(The Quail Motorsports Gathering)において、新しいサーキット専用モデルの「Type 66(タイプ66)」を初公開した。
ロータスは創業75周年を迎えるにあたり、自社のヒストリーを改めて見直すプロジェクトを展開している。その活動の中で今回ピックアップされたのが、“失われたロータス”といわれる往年のレースカーのType 66だった。Type 66はロータスの製図技師だったジェフ・フェリス氏によって1960年代後半にデザインされたレースプロトタイプで、Can-Am(カンナム)シリーズへの参戦などを計画していたが、結果的には技術的なドローイングやスケールモデルの製作に留まった。その後、Type 66の資料、具体的には4分の1スケールと10分の1スケールの図面などが、クラシック・チーム・ロータスのマネージングディレクターで、ロータス創始者のコーリン・チャップマン氏の息子であるクライブ・チャップマン氏の手に渡って保管される。そして、この資料を基にロータス・ アドバンスト・パフォーマンスが中心となって、Type 66の復活、しかも最先端のレーシングテクノロジーとコンポーネントを融合させたレースカーの製造プロジェクトが進められた。
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基本骨格に関しては、押し出し成型アルミニウムセクション、接着ジョイント、アルミニウムハニカムパネルなど当時を彷彿とさせるシャシーで構成するとともに、ボディシェルには最新のフルカーボンファイバーを採用。ミッドシップ配置のエンジンはV8プッシュロッドOHVのレイアウトに、アルミニウム鍛造クランクやロッド、ピストンなど特注のコンポーネントを組み込む。最高出力は850bhp/8800rpm以上、最大トルクは746Nm/7400rpm以上を発生。また、エンジン上部にはCan-Amを象徴するエアインテークの“トランペット”を装備し、吸気をスムーズにして層流を作るとともに体積効率を大幅に向上させて、より大きな燃焼とパワー特性を可能とした。さらに、機構面ではEPASSモータースポーツパワーステアリングやリバース付きシーケンシャルレーシングギアボックス、レース用ABSブレーキシステム、アンチストールマルチプレートクラッチ、固定式ロールオーバーバーといった現代的なアイテムを装備する。
エクステリアについては、エアロダイナミクスの最適化を図ったことがアピールポイント。数値流体力学(CFD)作業に1000時間超を費やし、車体前方のフロントウイングからリアウイングの下を通って空気を流すように設計して、フルスピードにおける車体総重量以上のダウンフォースを発生させる。数値としては、時速150マイル(約240km/h)で 800kg を超えるダウンフォースを獲得した。また、車両開発の際にはラグナ・セカやシルバーストーン、富士スピードウェイ、スパ・フランコルシャンなど世界各地のサーキットにおける先進の「ドライバー・イン・ザ・ループ 」技術を駆使したシミュレーションテストを実施。結果として、GT3レーシングカーに匹敵するラップタイムを記録する。また、ラグナ・セカのようないくつかのサーキットではシミュレーターの結果より速く走れることが示唆された。一方でカラーリングに関しては、ロータスが1970年初頭のレースシーンで使用したレッド、ホワイト、ゴールドのグラフィックを再現して塗装。さらに、コクピットは現代の安全基準に適合させ、近代化されたパッセンジャーコンパートメントやインボード燃料電池、シーケンシャルトランスミッションなどの新機能を搭載した。
なお、復活したType 66は限定10台で生産予定。この数字は、かつてのType 66が1970年シーズンに参戦していたと想定されるレース数の10に由来する。車両価格は100万ポンド(約1億8400万円)超の予定だ。
ロータス・アドバンスト・パフォーマンスのエグゼクティブディレクターの任に就くサイモン・レーン氏は、「Type 66は過去と現在を完璧に融合させています。ドライバーを50年以上前のモータースポーツの象徴的なデザイン、サウンド、ピュアな舞台にタイムスリップさせ、さらに21世紀のパフォーマンスと安全性を追加しています。これは本当にユニークなプロジェクトであり、75周年という記念すべき年に、ロータスから世界中のファン、そしてほんの一握りのお客様への完璧な贈り物です」とコメントしている。
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