2024年F1第10戦スペインGP。スタートではポールポジションのランド・ノリスがマックス・フェルスタッペンからポジションを守ろうとするなか、2列目スタートのジョージ・ラッセルが抜群のスタートでトップに浮上した。しかしノリスはキャリア2勝目を諦めず、終盤にはタイヤを保たせる走りではなく、最速ラップをマークする走りでフェルスタッペンを猛追した。スペインGPを無線とともに振り返る。
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レッドブル&HRC密着:首位浮上でタイヤ選択の異なるノリスに対し有利な立場に。最速マシンでなくとも勝利を掴んだ王者
ランド・ノリス(マクラーレン)がポールポジションからスタートした決勝レースは、いきなり波乱の展開となった。4番グリッドのジョージ・ラッセル(メルセデス)が、1コーナーまでに一気にトップに躍り出たのだ。
1周目
マーカス・ダドリー(→ラッセル):素晴らしい動きだった。フェルスタッペンはコンマ8秒後ろだ。
ポールシッターのノリスはマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に抜かれまいとするあまり、アウト側がガラ空きになり、ラッセルにその隙をつかれてしまった。
フェルスタッペン:(ノリスに)芝生に押し出された!
それでもノリスを抑えて2番手をキープしたフェルスタッペンは、ラッセルとの差をすぐに詰めていく。
3周目
ジャンピエロ・ランビアーゼ(→フェルスタッペン):今がチャンスだ。賢く行こう
ラッセルを完全に射程距離にとらえたフェルスタッペンに、「このチャンスを逃すな」と指示が飛んだ。フェルスタッペンは1コーナーのブレーキングから2コーナーへと向かう間に見事にラッセルを仕留め、首位を奪った。
一方、フェラーリの2台は、きわどいチームメイトバトルを繰り広げていた。同じ1コーナーで、カルロス・サインツがシャルル・ルクレールのアウトから被せ、強引に抜いて行ったのだ。2台は軽く接触し、それぞれが言い分を捲し立てた。
ルクレール:カルロスが閉めてきた。
サインツ:彼がぶつかってきて、押し出した。右リヤにぶつかって来た。僕の方が完全に前だったのに。
15周目、2番手のラッセルがピットイン。ピット作業のタイムロスもあって7番手まで後退する。2番手に上がったノリスとの差は、23秒あまり。ノリスはここでピットインすれば、ラッセルをオーバーカットして先行できる。しかしノリスは2位確保よりも、ステイアウトして首位奪還する方に賭けた。
17周目
ウィル・ジョゼフ:今だったら、ラッセルをカバーできる。ピットインするか?
ノリス:いや、このまま続けて、マックスを食いたい。
19周目、ターン1でハミルトンがサインツを抜き去って行ったが、その際に軽い接触事故が起きた。
サインツ:(ハミルトンが)僕に接触して、押し出した。オンボードカメラを確認してくれ。僕に順位を譲るべきだ。
リカルド・アダミ:了解した。
22周目
サインツ:どうなった?
アダミ:レースコントロールに知らせが行ったよ。
しかしその数周後。
アダミ:「調査の必要なし」という判断だ。ひどい話だけど、レースに集中しよう。
サインツ:ルールブックがあるだろう? 理解できないよ。
アダミ:まったくその通りなんだけどね。
27周目前後、サインツの後ろ6番手に甘んじているルクレールが、不満をぶつける。
27周目
ルクレール:どうして僕らはプランAなんだ?
ブライアン・ボッツィ:列のなかに入ってしまってるからね。この選択肢しかない。
一方、首位を走るフェルスタッペンは、ミディアムタイヤでのペース維持に手こずっていた。
29周目
フェルスタッペン:タイヤに全然一貫性がない。
ランビアーゼ:了解した。
そして44周目に2度目のピットイン。ノリスが首位に繰り上がった。
ジョゼフ(→ノリス):フェルスタッペンがピットインした。僕らのチャンスだ。
フェルスタッペンとは、約17秒差。ここでピットインしたら、再び2番手だ。しかしこのままミディアムで走り切れれば、勝利をもぎ取れるかもしれない。
だが後方では、ソフトに履き替えたハミルトンがサインツ、次にチームメイトのラッセルもかわして3番手に。その勢いでノリスを猛追して来た。
47周目
ノリス:どうしたらいい? 1位か、3位か。
1ストップ作戦がうまくいけば優勝、しかしタイヤが持たなければハミルトンにも抜かれて3位に落ちてしまう。
直後にノリスはピットに向かい、2位確保を選んだ。それでも、優勝は諦めてはいない。ソフトに履き替えると、最速タイムを更新しながらフェルスタッペンとの差を詰めていった。
50周目
ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ノリスが凄いプッシュしている。タイヤを無視してね。すべてのコーナーでだ
53周目
フェルスタッペン:僕にどうしてほしい?
ランビアーゼ:ここからは最後まで、プッシュし続けろ。ノリスはタイヤを持たせない走りをしている。
ノリスは最終周までフェルスタッペンを追い、7秒6から2秒2まで差を縮めたものの及ばず。2位のチェッカーを受けた。
チェッカー後
フェルスタッペン:明らかに最速じゃなかったけど、でもすべてをうまくやれた。戦略も含めてね。
ジョゼフ:知っての通り、P2だ。最速ラップは獲ったぞ。
ノリス:ああ。でも、どうでもいいかな。勝てたはずだった。あのXXXなスタートさえなかったら! クルマは最高だったよ。
もはや自分たちが最速ではないことを自覚し、それでも優勝できたことを素直に喜ぶフェルスタッペン。一方のノリスは、勝てたレースを落とした悔しさを隠さなかった。
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