MP4/5Bでのセナ追悼ランは“キャリア最大の栄誉”とハミルトン「止まりたくなくて、予定より1、2周多く走った」

　日曜日のF1第21戦サンパウロGPの決勝レースを前に、メルセデスのルイス・ハミルトンは深い感動に包まれながら、アイルトン・セナのタイトル獲得マシンであるマクラーレンMP4/5Bに乗ってインテルラゴスのコースに登場した。ハミルトンは、この機会を自身のキャリアにおける“最高の栄誉”と表現した。

　セナを子ども時代のヒーロー、そしてインスピレーションとして長年崇拝してきた7度の世界チャンピオンであるハミルトンにとって、インテルラゴスで偉大なブラジル人のマシンを駆った数周は単なる追悼以上の意味があり、夢が実現したようなものだった。

　セナへの熱烈な愛情で知られるインテルラゴスの観客は、ハミルトンがマクラーレンのホンダエンジンを始動させた瞬間から称賛の声を上げた。朝7時半からの予選とこの特別な瞬間を見るために、雨のなか午前4時という早い時間から集まったファンたちは、周回ごとに彼を応援し、感嘆の声をもらした。彼らの存在は、ハミルトンのこの経験をさらに強力なものにした。

「とても感動的だ」とハミルトンは語った。

「僕は、アイルトンがここでレースをしているのを見て、あの音を聞き、彼がここで走ってあのレースに勝ったのを見た子どもの頃を思い出していた。自分にこうするチャンスがあったなんて信じられない思いだ」

「この走行を、ここブラジルの素晴らしい観客の前で行えたことは、僕のキャリアのなかで最高の栄誉だった。彼らは昨日は1日中雨のなかにいたし、今朝は午前4時からここに集まってくれたんだ」

「今日は特別な日であり、この日を実現させてくれたすべての人たちに心から感謝している。ここで僕が受けとった愛は、とても驚くべきものだ。それに僕と僕の家族は、ブラジルの人々からの愛とサポートにとても感謝している」

　ハミルトンとブラジルの深いつながりは、セナに対する尊敬の念だけにとどまらない。昨年、彼はブラジルの名誉市民権を授与されたが、彼はそのことを生涯最高の栄誉のひとつだと考えている。セナの同胞たちが見守るなか、セナのマシンでコースを周回することで、その絆は最高のものになった。

「僕は本当にブラジルを愛しているし、ブラジルの人々を愛している。ここで市民権を得られて、本当に光栄だ」

「セナが誇りに思ってくれることを願うよ。あれは週末全体で最高の走行だった。この瞬間のために時間を取り、僕のキャリアに真の栄誉を与えてくれた人たちに感謝している」

　周回はあっという間に終わったが、ハミルトンの喜びは圧倒的なもので、彼は自分を止められなかった。

「おそらく二度とこんなことは起こらないだろうから、この瞬間を絶対に大切にしたい」とハミルトンは認めたが、彼の声には深い感情がこもっていた。

「止まりたくなかったので、予定より1、2周多く走った。あれは本物のレーシングカーだ。もし可能なら、今日このマシンでレースをしてみたいよ！　僕は喜んでそうするだろう。ブラジルのみんな、ありがとう」