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ハコスカからGTO、アルシオーネまで! インフィニティが考える日本車の価値とは?

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ハコスカからGTO、アルシオーネまで! インフィニティが考える日本車の価値とは?

「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」は、イタリアの「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」とならび、クラシックカー・コンクールの世界最高峰とも言われるイベントだ。しかしその傍ら、近年は、世界各国のプレミアム・カー・ブランドが、コンセプトカーや新型車のワールドプレミアの場としても活用している。

たとえばメルセデス・ベンツ/メルセデスAMGは、全面ガラス張りの巨大な仮設ショールームを建設し、珠玉のクラシックモデルを最新モデルとともに展示。130年以上にも及ぶ、輝かしい歴史をアピールしていた。

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そうしたなか、今回のペブルビーチ・コンクール・デレガンスで大規模な出展をおこなった唯一の日本ブランド「インフィニティ」の北米法人のアプローチは、興味深かった。自らのブース周辺を、あたかも“日本車ミュージアム”のごとき仕立てにして、展示イベントをおこなったからだ。

特設ブース内の建物内には、世界初公開のコンセプトカー「Qインスピレーション」および「Q’sインスピレーション」「QXインスピレーション」の3台が展示された。「JAPANESE AUTOMOTIVE INVITATIONAL, presented by INFINITI」(通称「J.A.I.」)と、名づけられた展示イベントは、2018年から北米インフィニティによっておこなわれているという。

ペブルビーチ・ゴルフリンクスの広大な敷地内に設けられた特設ブースでの展示は、「インフィニティ・ブランド30周年」を記念した豪華な内容だった。コンクール2日前の2019年8月16日から本選のおこなわれる2019年8月18日まで、3日間にわたり開催された。

後方にモントレー湾を望む素晴らしいローケーションに、日本国内の旧車イベントか、と錯覚しそうなクルマが多数展示された。2018年の第1回ではセンターを飾ったという「元祖インフィニティ」のQ45。日本でも販売されたが、ライバルのトヨタ「セルシオ」(レクサス「LS」)ほどの成功は果たせなかった。創成期のインフィニティ・ブランドを支えたモデルたち。手前から「G35クーペ」(日本名「スカイライン クーペ」)、「M30」(日本名「レパード」)、「J30」(日本名「レパードJフェリー」)が並ぶ。メーカーを超えた名車の数々特設ブースには、世界初公開のコンセプトカー「Qインスピレーション」および「Q’sインスピレーション」「QXインスピレーション」の3台が展示された。また、北米で販売されるインフィニティの主要最新モデルが置かれた。

ブース屋外には「Q60クーペ」や「QX80」など、日本未導入の最新インフィニティが展示された。これらにくわえ、相当数の国産クラシックカーも展示された。その台数、ざっと数えただけでも30台以上! 旧くは第2次世界大戦前に販売された1937年型のダットサン「16型クーペ」から、1990年代中盤に販売された三菱「GTO」やスバル「アルシオーネSVX」まで、年代/カテゴリーともに極めてバラエティに富んだラインナップが展示されたのだ。

お気付きのとおり、集められたクラシックカーはインフィニティのモデルに限らず、メーカーの垣根を越えていた。それを見た筆者は、「自動車史および自動車文化の一翼を担う重要なファクターとして日本車も捉えるべき……」という、インフィニティの確固たる意志と熱意を感じた。

近年、アメリカでは「HAKOSUKA」のニックネームとともにマニアックな支持を受けるようになった3代目「スカイライン」。展示車両は、世界の憧れとなりつつある「GT-R」だ。スバル「アルシオーネSVX」は標準モデルであるが、三菱「GTO」は、GTOをベースに北米で企画・少量生産された「スパイダーVR4」。グッドコンディションのトヨタ「2000GT」も展示された。マツダの初代「ルーチェ」のクーペ版は、ロータリー・エンジンを搭載する。しかも、生来は後輪駆動のルーチェをわざわざFF化した意欲的なクーペは、日本市場専用モデルだった。アメリカではほぼ未知の存在と思われる。トヨタの「レクサス」、日産の「インフィニティ」よりもひと足早く、1985年からホンダが展開したプレミアムブランド「アキュラ」のフラッグシップ・カーの「レジェンド」は、初代と2代目が展示された。現在は大型トラック/バス専業となった日野自動車が、かつて生産していたイタリアン・デザインの「コンテッサ1300クーペ」。1960年代、北米でレースに参加していたため、現地のマニアには今なお知られる存在だ。かつて日産&インフィニティのデザイン部門の責任者を務めたデザイナーの中村史郎氏(ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの特別審査員も長らく務めている)に訊くと、北米インフィニティの上級幹部には、アメリカ車/欧州車はもちろんのこと、国産クラシックカーにも造詣の深い「カーガイ」が少なからず存在するという。

彼らの情熱とネットワークにより、遥か日本、神奈川・座間の「NISSAN HERITAGE COLLECTION」から、日産「R382」などがわざわざ運ばれたほか、“ジャパニーズ・クラシック”を愛してやまないアメリカ人エンスージアストたちが、自身の愛車を提供したという。

神奈川県座間市にある日産ヘリテージ・コレクションから、わざわざ運ばれてきたレーシングマシン「R382」。さらに、北米SCCA選手権で活躍した「200SX」(日本では2代目「シルビア」)、「ブルーバード510」なども展示された。かつて日本では「BC戦争」と呼ばれ、対米輸出でもマーケットを競った日産「ブルーバード」(写真左)とトヨタ「コロナ」(写真右)。日産ヘリテージ・コレクションから運ばれた戦前型のダットサン「16型」。しかも、珍しいクーペモデルである。後方の「ブルーバード410」は、北米の個人オーナーが所有する車両。トヨタ「ランドクルーザー」は創成期の56系のほか、1990年代に販売された80系ランクルをもとにしたレクサスSUV「LX450」が展示された。アメリカの「スポコン(Sports Conpact)」ファンのあいだで、絶大な人気を誇るというホンダ「CR-X」は、初代「バラードCR-X」(夢限のフルキット装着車両)と、ほぼフルノーマルの2代目が展示された。いすゞ製乗用車の最終期に販売された、超個性派クロスカントリー「ビークロス」。日本での販売終了後、アメリカで販売された。アメリカを舞台に日本車の自動車文化発信に取り組んだインフィニティに対し、ライバルのレクサスは、イタリアの「ミラノサローネ」などで、あえてクルマを前面に出さず、アートなどの展示を積極的におこなっている。

比較的歴史の浅い日本のプレミアムブランドであるが、それぞれ独自の展開をコツコツとおこなっているのは興味深い限りだ。

文と写真・武田公実

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