■とんでもない販売記録を持っている? Lynk & Coとは
「Lynk & Co(リンク・アンド・コー)」は、ボルボ社と親会社であるジーリー・ホールディングのコラボレーションによって、2016年に生まれた新しいブランドです。日本ではほとんどなじみのないブランドですが、Lynk & Coがこのたび、新型車のワールドローンチを富士スピードウェイにて前代未聞の規模で開催しました。なぜ、中国ブランドがここ日本で新型車の発表を行うのでしょうか。
ご存知の方も多いと思いますが、ボルボはそれまでのフォードから2010年にジーリー・ホールディング(浙江吉利控股集団)の傘下となりました。ジーリー・ホールディングはボルボの他にも、ロンドンタクシー(英国)、プロトン(マレーシア)傘下のロータス・カーズなど複数の自動車関連企業を傘下に収めており、2018年2月からはダイムラー・ベンツの筆頭株主にもなっています。
Lynk & Coは、2016年秋に発表された新しいブランドで、中国最大の民族系自動車メーカーであるジーリーオート(吉利汽車)とボルボ社の共同出資によって設立されました。本社はスウェーデン・ヨーテボリにあり、2500人の開発スタッフは半分以上がボルボ社から、残りはサーブなど他メーカーの出身とのこと。欧州のテクノロジーとデザインに基づいて世界で生産・販売される、世界で最も進んだコネクテッドカーブランド標榜しています。
すでにLynk & Coは「01」と「02」の2モデルが発売されており、今回、日本で発表された「03」は2017年の上海モーターショーでコンセプトモデルが披露され、その市販モデルとなります。ちなみに「01」は発売からわずか2分半で6000台もの注文を受け、自動車販売におけるワールドレコードを保持しています。
■なぜ?世界発表の場を富士スピードウェイに選んだ?
今回、Lynk & Coが日本で新型車の発表会を行うことを聞いたとき、日本の自動車業界は騒然となりました。「ついに中国車が日本で販売?」「ボルボの販売ネットワークを利用するのか? それとも新たなディーラー網を整備するのか?」。結論から言うと、残念ながらLynk & Coの日本市場導入はないわけですが、そうなると気になるのが、「日本で販売しないのに、なぜ日本のサーキットである富士スピードウェイで世界発表会を行うのか?」ということです。
誰もが気になるこの疑問に対してLynk & Coは、「今回発表する『03』モデルは、01、02と少し方向性が異なり、スポーツ志向の車に仕上げています。世界発表の場として相応しいのは、モータースポーツが盛んで世界的なレベルも高い日本のサーキット、諸々の設備が高次元で整っている富士スピードウェイが最適という結論に達し、富士スピードウェイでの開催を企画しました」と回答。そして、中国からはメディア関係者約300名(日本メディアは約20名)、ゲスト(購入見込みのある若い富裕層)150名の合計450名(+スタッフ50名)が大挙して来日したというわけです。
■発表されたLynk & Co 03とはどんな車?
このたび発表されたLynk & Co 03は、2018年10月19日に中国で発売が開始されました。01、02と同じく、ボルボカーズの新世代コンパクトモデル車台「CMA」(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャ)を共有しています。パワーユニットは1.5リッターターボエンジン(最高出力180馬力+265Nm)+7速DCTを搭載。01、02と同様、世界で最も進んだコネクテッドカーを目指して設計されています。01、02がSUVであるのに対して、03は高性能セダンとしてデザインされ、現在はガソリンエンジンのみですが、使い将来、PHVが追加される予定です(認証取得済)。
発表会の前に、サーキットをセーフティカーについて一周だけ試乗することができましたが、中身はほぼボルボであるため、加速時も、コーナーでも一切の不安も感じることなく先進的なスポーツセダンの乗り味を味わうことができました。「目に見えない部分はほぼボルボXC40のエンジニアリングそのままです。目に見える部分、そしてドライバーが触れることができる内装やボディのデザインやカラーなどはすべてLynk & Coとして新たに設計されています」(Lynk & Coエンジニア)
2019年からFIA世界ツーリングカー選手権へ出場する「Lynk & Co シアンレーシング03」の競技車両も同日、公開されました。
■度肝を抜く前代未聞の演出。富士スピードウェイがLynk & Coにジャック
つい数日前にもWECの取材で富士スピードウェイを訪れた筆者(加藤久美子)ですが、その時とはあまりの変貌ぶりに驚きました。来場者のほとんどが中国人で日本人はごくわずかということもあり、聞こえてくる声はほとんどが中国語です。
さらに参加者の目に触れるあらゆる場所、建物の壁、階段、各種の案内、キッチンカー全車10台もそれぞれ、Lynk & Coのラッピングやステッカーが貼られており、キッチンカーで作業するスタッフ(日本人)のポロシャツにもLynk & Coのロゴを発見。さらにデザートの袋入りパイナップル(セブンイレブンで販売)にもLynk & Coのシールが貼ってあるという徹底ぶりでした。
夜から開催されたローンチイベントも富士スピードウェイ始まって以来? ともいわれるド迫力で異界感たっぷりの演出で、会場のボルテージは上がりまくり。何度も、ここ富士だよね? 日本だよね? と自問自答したくなりました。煌びやかな光の演出の中、縦横無尽に駆け回るLynk & Co 03。チャーターされたヘリコプター(ここもLynk & Co 03のラッピング)もステージの頭上スレスレの低空飛行で場を盛り上げました。
Lynk & Co 03は2020年に欧州、2022年にアメリカ市場へ導入されることが決定しています。そして2年以内に英国、豪州向けに右ハンドル車も設定するとのこと。もしかすると日本市場への導入も? と期待したくなりますね。
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