2024年のF1は前半の14戦を終えて、夏休みへと入った。丁度良いタイミングということで、参戦10チームのチームメイト同士の対戦成績を比較して確認してみよう。
ファン、そしてジャーナリストはF1ドライバーを評価して誰が主役であり、誰が期待外れなのか、同じマシンのチームメイトでどう異なっているのかといった比較から、目を背けられないことが多い。
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前半戦を終えた今はその絶好のタイミングだ。そして比較にはいくつもの方法があるが、最も重要な要素はスピードだ。結局、それがなくては成功することはありえないからだ。そして理論的には、予選が最もシンプルな指標となる。
以下に示されているのは、グランプリ(スプリントを除く)の予選パフォーマンスに基づいたここまでの14戦のドライバー間の成績を示したモノだ。なおドライバーがコントロールできない理由でタイムを記録できなかったセッションは除外しているため、合計で14になっていないところもある。
■予選チームメイト対決の成績
1. ルクレール 8-5 サインツJr.(フェラーリ)
2. オコン 8-4 ガスリー(アルピーヌ)
3. アロンソ 9-5 ストロール(アストンマーティン)
4. 角田 9-4 リカルド(RB)
5. ラッセル 10-4 ハミルトン(メルセデス)
6. ヒュルケンベルグ 10-2 マグヌッセン(ハース)
7. ノリス 11-3 ピアストリ(マクラーレン)
8. ボッタス 13-1 周冠宇(ザウバー)
9. アルボン 13-0 サージェント(ウイリアムズ)
10. フェルスタッペン 14-0 ペレス(レッドブル)
予選勝敗の結果は、チームメイト同士のどちらが優位なのかを把握するための優れた指標だ。ただ、非常に大雑把なものでもある。
予選での勝負が0.001秒しか離れていなかったとすれば、負けたドライバーも非常に良い仕事をして、マシンを最大限活用していると言って良いはずだ。
そのため、よりしっかりとチームメイトの差を把握するためには、タイムの比較が大事になってくる。そこで“スーパーラップ”で比較してみよう。
スーパーラップは各ドライバーのレースウィークにおける最速のラップタイムに基づいて計算し、その差をパーセンテージで表したものだ。
この指標は通常では予選タイムの比較を意味しているが、週末全体を考慮することで、トラブルや不運に見舞われたケースをほぼ排除して考えられる利点がある。もちろん、レーススティントの安定性は全くわからないが、生の速さを知るという点では有益だろう。
■スーパータイムのチームメイト間比較
■スーパータイムのチームメイト間比較
1. ガスリー-オコン 0.015%
2. ラッセル-ハミルトン 0.101%
3. ルクレール-サインツJr. 0.134%
4. ノリス-ピアストリ 0.185%
5. 角田-リカルド 0.196%
6. アロンソ-ストロール 0.211%
7. ヒュルケンベルグ-マグヌッセン 0.426%
8. ボッタス-周冠宇 0.643%
9. アルボン-サージェント 0.675%
10. フェルスタッペン-ペレス 0.953%
最初に見えてくることは、アルピーヌのドライバー2名の差が驚くほど小さいことだ。エステバン・オコンとピエール・ガスリーは1周1分40秒のコースでわずか0.015秒に相当する差しかない。
オコンとガスリーは、スーパーラップ以外の指標でも互角だ。ポイントではガスリーが6、オコンが5、motorsport.comグローバル版の記者が評価するドライバーレーティングでもガスリーが平均6.2、オコンが6.1、読者からの評価でも両者が平均5.7となっている。
ドライバー同士の関係は決して調和が取れているというわけではないが、ドライバーのパフォーマンスが2024年のアルピーヌの主要な問題ではないということを、この結果は強調しているものだと言えるだろう。
メルセデスのジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンの差も同様に小さいものだ。予選結果のみで言えばラッセル対ハミルトンは10:4となっていて、ハミルトンは来季のフェラーリ移籍を前に既にやる気を失っているという見方もある。しかし13歳も年下のハングリー精神あふれるドライバーを相手に、0.101%遅れているからといって、ハミルトンが終わったというのは早計だろう。
なおハミルトンのレースペースは特に最近強力なモノがあり、チャンピオンシップでもラッセルに先んじている。ベルギーGPでのラッセルの失格がなくとも、それは変わらない。
フェラーリ勢の差は2つの見方ができる。1ラップで非常に高い競争力を持つシャルル・ルクレールにカルロス・サインツJr.が接近していることは、サインツJr.の多大な努力によるもの……もしくは波乱のシーズンを送るルクレールが未だにリードしているのは素晴らしい、ということだ。
躍進著しいマクラーレンは、オスカー・ピアストリがランド・ノリスに対する差を昨年の0.227%から0.185%へと縮めた。F1の先頭で戦うことに慣れていくにつれて、ピアストリが小さなミスを減らすことができれば、更に良いパフォーマンスを発揮できるのではないだろうか。シーズン後半にこの差がどう変化するかは、興味深い注目ポイントとなってくるだろう。
角田裕毅とダニエル・リカルドのギャップは、レッドブルのセルジオ・ペレス後任に関して角田の名前を挙げる主張を裏付けるものだ。ただ、最近のレースではその差が接近していることも見逃せない。
なおアストンマーティンは、フェルナンド・アロンソとランス・ストロールの差が大きく縮まっている。昨年は0.753%の差と各チームメイト同士の差で最も大きいものだったが、今では0.211%まで接近。アロンソの最近の不振が明らかに示されている。
ギャップの大きい下位4組だが、そこに来年のポジションが心配されるドライバーが含まれているのは、偶然ではないだろう。
ハースのケビン・マグヌッセンは、僚友のニコ・ヒュルケンベルグに対して2023年よりも大きな0.426%差となった。ポイント面でも水を開けられており、来シーズンのシートも未定となっている。
ザウバーのボッタスと周冠宇の差に至っては、2023年から倍以上に広がっている(2023年0.299%、2024年0.643%)。ただボッタス、周ともに来季シートは未定となっている。
ウイリアムズのローガン・サージェントは今年がF1でのラストシーズンになるのではないかと危ぶまれている。ただアレクサンダー・アルボンとの差自体は、昨年から縮まってきている……しかし今でも0.675%の差が残っている。
そして最も注目されるのは、レッドブルのふたりだろう。
■レッドブルのふたり
ペレスの苦戦については散々語られてきて、ドライバーの早期交代があるのではないかという騒動も巻き起こってきた。そして、それだけ騒がれることも、0.953%という大きなギャップを見れば理解できるはずだ。
ふたりの差は、チームメイトとなって以来最大のもの。今年に次ぐ数値を見ても2022年の0.545%であることから、その不振ぶりは明らか。ペレスの抱える問題がなんであれ、彼が改善していないことを示唆している。
なお近年フェルスタッペンを相手にしたドライバーで同様のギャップを計算すると、最も近かったのは2017~2018年のリカルドで0.138%と0.186%、遠かったのは2020年のアルボンで0.784%……ここでも今年のペレスは悪い意味で上回っている。
もちろん、スーパータイムが全てではない。他チームではあるがマクラーレン時代(2010~2012)のハミルトンとジェンソン・バトンとの比較では、バトンが0.306%遅れていたものの、ハミルトンより多くのポイントを獲得している。ただ、ペレスの場合はその面でもチームメイトに後れをとってしまっている。
フェルスタッペン/ペレスのギャップに相当する事例を探すと、1990年代のフェラーリにおける、ミハエル・シューマッハーとエディ・アーバインのペアが浮かび上がってくる。
彼らは3シーズンをともにしたが、平均ギャップは0.908%あった。なおアーバインは難しいマシンだったF310での1年目は1.286%もの差があったが、そこから毎年差を縮めていったことは、記しておくべきだろう。
1992年のウイリアムズも差は大きかった。リカルド・パトレーゼはこの年のタイトルを獲得したチームメイトのナイジェル・マンセルに対して0.999%の差をつけられた。ただこの年はウイリアムズFW14Bの優位性によって、彼らはチャンピオンシップをワンツーで終えている。
パトレーゼに関しては、1991年はその差がわずか0.111%だったことを考えると、FW14Bに搭載されたアクティブサスペンションに片方のドライバーがより上手く適応し、もう片方はそうではなかったことが大きく関わっている。
従ってフェルスタッペンとペレスの差は、現代のF1では異例とも言うべきモノであり、彼がレッドブルでのシートを確保し続けていることに、多くの人が驚かされている理由を説明する上で役に立つものだ。
チーム内対決の結論としては、アルピーヌはほぼ互角、メルセデス、フェラーリ、マクラーレン、RBは妥当な差で接近し、アストンマーティンは期待ほど差が広がっていないがまだ差はある、といったところ。そして残る4チームは深刻な差が広がっていて、コンストラクターズポイントが危険にさらされ、負けているドライバーのF1キャリアも危険域にさらされているということだ。
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みんなのコメント
記憶では、勝敗はセナの14勝2敗ぐらいだったと思うが、タイム差は1秒超えることもあったりして、もしかすると、フェルスタッペンvsペレスに近い差があったかもしれない。
とはいえ、プロストは4タイムズチャンピョンであるから、セナの神がかった一発の速さは、シューマッハ(もちろん、お父さんの方)、ハミルトン、フェルスタッペンをも大きく上回るものであったと考えるのが妥当ではないだろうか。