ラリースペシャルのTE27型スプリンター トレノ復活
かつて「羊の皮をかぶった狼」と呼ばれたクルマがありました。それはトヨタのTE27型「カローラ レビン/スプリンター トレノ」。ともに1972年3月にデビューを果たした双子車です。愛知県のショップ、オートアドバイザースタッフがフルレストアを施して蘇らせたスプリンター トレノは、当時WRCで大活躍した勇姿を再現したラリー仕様。まるで新品のような輝きを放つその秘密に迫りました。
激レア! トヨタ「スプリンタートレノ」発見。19歳から続く「カローラ愛」だけに「特別な時にしか乗りません」
これこそ「羊の皮をかぶった狼」である
1973年にデビューしたトヨタ初代TE27型「カローラ レビン/スプリンター トレノ」は、兄貴分となる「セリカ/カリーナ1600GT」から譲り受けた1.6L直4 DOHCの名機「2T-G型」エンジンが与えられ、後にトヨタが誇る軽量FRスポーツの礎を築いたモデルとなった。
今回紹介するのは愛知県豊橋市のオートアドバイザースタッフがフルレストアによって綺麗に蘇らせたTE27スプリンター トレノだ。おそらく知っている方も多いと思うが、カローラ レビンとスプリンター トレノの違いは、当時の販売チャネルにあった。レビンはトヨタカローラ店に属し、トレノはトヨタビスタ店扱いとなっていた。基本的なボディ形状は共通であり、レビンとトレノの違いといえば、フロントグリルやヘッドライトのデザインなど、微妙なエクステリアのデザイン変更が加えられていた。
蘇ったTE27スプリンター トレノは、いわゆるフルノーマルの状態ではない。ストリートチューニングのベース車として人気のTE27だが、かつてはラリーで圧倒的な強さを見せつけたクルマでもあった。そこで、オートアドバイザースタッフはフルレストアついでに、当時のスポーツコーナーの部品を集め、国内ではちょっと珍しい当時のラリーバージョンを蘇らせた。
ラリーで強いトヨタを象徴した1台
前述のラリーについて、当時の記録を調べると、トヨタは1973年にTE27カローラ レビンでWRCに参戦。それまではセリカで戦っていたが、車両重量とエンジンパワーの問題から、ライバル車とパワーウェイトレシオの面で差を広げられ苦戦。なかなか上位に食い込むことができずにいた。そんな時に、軽量コンパクトボディに高性能2TGエンジン搭載のTE27型カローラ レビンが登場。デビュー当初は、ラリーマシンとしての特性を引き出すのに苦労するも、1974年後半に入ると2T-Gエンジンに16バルブヘッドを搭載させて大幅パワーアップ! 当時速かったフォードやサーブなどのライバルチームと首位争いを繰り広げた末に見事に総合優勝を果たし、ラリーで強いトヨタを象徴する1台となった。
そのニュースは国内でも響き渡り、荒れたダートを使って開催される山岳ラリーでも人気を博し、それに伴い専用パーツが続々登場。ラリー仕様、ダートラ仕様といったマシンがカローラ レビン/スプリンター トレノを使って製作された。
高額プライスで販売も、その価値は十分ある?
オートアドバイザースタッフのスプリンター トレノは、その頃のパーツを使ってラリーメイクを施した1台だった。そのレストア後の状態は新車といってもいいほどの出来ばえ。話を聞けば、内外装ともに新品パーツを数多く集めて入手、そして、手に入らない物はオリジナルで作り出している。このレベルの修復になると、さすがにプライベーターでは無理なので、この完成度は専門ショップだからこそ成せる技術の集大成といえるだろう。
具体的なパーツを書き出していくときりがないが、その中でアフターパーツを組み込んでいる個所は、ラリー用サス&ショック、アームを含めたサペンション全般ということ。また、エンジンについては、本体はオーバーホールをかけて、補器類はマフラーをフジツボ製Legalisに換え、タコ足もフジツボ製を装着、SOLEXキャブ+ファンネルはブラスト処理を施し、ガソリンタンク内はコーティング処理を施す等、現代の技術を駆使して、今後も末永く乗れる下処理やパーツの交換を行っている。
そして、このTE27スプリンター トレノ ラリーバージョンは、オートアドバイザースタッフで販売している。希少仕様のレストア車だけに、その価格も498万円のプライスが付いて高価だ。だが、このクルマはフルレストアの新車同様の仕上がりであり、かつ、今後乗り続けるなかで発生する固有のトラブルについても対策済みという点を考えると、けっして高い買い物ではないかも知れない。本当のTE27スプリンター トレノ好きであれば、極めて価値ある憧れの1台といえるだろう。
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みんなのコメント
象徴である補助灯、マッドフラップ、ロールバー、ジェコーのクオーツ、ハルダのトリップ等
細部まで拘ってほしい。