リーフの応用ではなくモーターもバッテリーも専用開発
日産自動車は、リーフに続く新たな乗用タイプEV「アリア」をワールド・プレミアした。2種類のバッテリー容量と、2WD(FF)/4WDとふたつの駆動方式の計4通りのラインアップとなっている。なお、日本市場への投入は2021年の中ごろをを予定しており、価格は500万円からとなる予定だ。
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これまで日産は、ハッチバックのリーフ、ビジネスバンタイプのe-NV200と2機種のピュアEVをラインアップしてきた。3機種目のアリアは、初のクロスオーバーSUV型となる。東京モーターショー2019において、コンセプトモデルが披露されており、先進的なスタイリングで注目を集めたのは記憶に新しいところ。市販モデルでは、その姿ほぼそのままといってもいいスタイリングが与えられた。
●日産アリアのパワートレイン
注目のパワートレインは、65kWhと90kWhの2タイプ。リーフは40kWhと62kWhとなっているが、アリアの車重が約2トン前後ということを考えれば当然の容量アップと言えよう。また、それぞれのバッテリー容量は駆動方式によって最高出力が異なる。2WDモデルの65kWhは160kW、90kWhは178kW。4WDモデルの65kWhは250kW、90kWhは290kWとなっている。
モーターやバッテリーは、リーフに搭載しているものを流用・応用したものではなく、アリアのために新開発されている。モーターは高速巡航時の消費電力を低減したことで、一充電の航続可能距離の延長に貢献。2WD/90kWhモデルにおいては最大610km(WLTCモード・日産社内測定値)の走行が可能となる実力をもつ。また、バッテリーの温度を一定に保つことができる水冷式の温度調節システムを搭載。これにより最大130kWの急速充電にも対応し、30分の急速充電で最大で375km分の電力を蓄えることができるようになっている点数も見逃せないだろう。
アリアの最大130kW急速充電に対応する、最大出力150kWのCHAdeMO急速充電器を2021年内に公共性の高い場所へ設置できるよう、現在関係各所と調整中とのことだ。EVの悩みのタネといえば、航続可能距離と充電時間だろう。このふたつの悩みを解消するという意味でも、アリアは新しいEVの楽しみ方を提案してくれるモデルになるはずだ。
また、新開発のEVプラットフォームは、重量物であるバッテリーを車体中央に配置し、低重心かつ均等な前後重量配分となるように設計されている。バッテリーケース内にはクロスメンバーを配したことで、フロントトンネルがない、フラットなフロアも高い剛性を確保した。それに組み合わせるサスペンションパーツも、高剛性タイプを採用したことで、操縦安定性の向上と快適な乗り心地&高い静粛性を両立させた。
そして、4WDシステムは最新技術のe-4ORCEを搭載している。これは日産が誇るスポーツモデル「GT-R」が搭載するアテーサE-TS(電子制御トルクスプリット四輪駆動システム)や、「エクストレイル」に搭載するインテリジェント4×4などから得た、駆動力制御やブレーキ制御、シャシー制御の効果などを応用したシステムだ。
e-4ORCEは前後に計2個のモーターを搭載する。それぞれのトルクを独立して制御することが可能で、加速時の力強いトラクション性能の確保はもちろん、減速時に前後モーターの回生量を個別に調整。ブレーキング時のクルマの沈み込みを減少させるなど、車体の揺れを抑えるような制御も行っている。
コーナリング時には前後トルク配分を調整するのはもちろん、4輪のブレーキは個別に制御することで、ドライバーの操作に忠実に、そして心地よいハンドリングをもたらしてくれる。爽快なドライブはもちろん、雨天や雪道などといったさまざまな路面環境においても、安心してドライブすることができる。
走りの良さを感じさせるスタイリングは近未来的
●日産アリアのエクステリアデザイン
スタイリングはとても近未来的だ。全長4595mm×全幅1850mm×全高1655mmというボディサイズ。ちなみにエクストレイルは全長4690mm×全幅1820mm×全高1740mm。全長は若干ショートだが、全高が低く全幅も30mmワイドということで、ワイド感を演出したスタイリッシュな雰囲気が与えられている。
エンジンルームの冷却が必要ないため、フロントグリル部はスモーク調のパネルでカバー。このなかには、日本車であることを象徴するかのように、伝統的な組子パターンが立体的に見えるようにデザインされている。そして、その中央部にはLEDで輝く、新しい日産を象徴する新デザインのロゴマークが浮かびあがる。
大胆に配置されたデイライトと、4つのLEDを配置した切れ長のヘッドライトが特徴的。スモーク調のパネルカバーと共存するようなデザインを採用しているので、シャープな印象を与える。なお、シーケンシャルウインカーとしても作動するようになっている。
サイドシルエットは、ルーフが後端に向かって円を描くように絞り込まれていくようなデザインで、全高の低さを際立たせるようなデザイン。空気抵抗を意識した形状で、電費向上にも貢献する。迫力あるスタイリングに大きな影響を与えるホイールは、19インチ(235/55R19)と20インチ(255/45R20)の別デザインとなる2種類(グレードによって異なる)が用意される。(写真は20インチ)
リヤビューで注目なのはテールランプだろう。消灯時はスッキリとした印象を与え、点灯時は赤いラインが一文字に広がり、ワイド感を強調する。ルーフからの落ち込み、そしてバンパー下部からの跳ね上げでリヤの中央に集中するようなディテールが与えられたことで、車両前部からの空気の流れが見えるかのようだ。
ボディカラーは、9種類の2トーンと5種類のモノトーンが用意される(日本仕様。仕向地によって変更あり)。とくに“暁”と名付けられた銅色と黒の2トーンは、夜が明け太陽が昇る瞬間をイメージしているという。ボディデザインの陰影などが際立つ、非常にオシャレな色合いだ。
●日産アリアのインテリア
インテリアにもこだわりが随所に見られる。コンセプトは日本独自の間隔である「間(ま)」。お気に入りのラウンジのような、シンプルかつ快適な空間が広がる。まず注目したいのはインパネ。オーディオや空調などを調節するための、当たり前のように存在している各種スイッチが存在しない。そのかわり、クルマを起動させると、エアコンなどの見慣れた各種アイコンが点灯。そこに触れると、きちんと操作したことがわかるように振動するハプティクススイッチを採用。駐車時などはまるで家具のようなスッキリとした印象を与えてくれる。
また、幅広く設けられたセンターコンソールは、ドライバーのシートポジションに合わせて電動で前後に動かすことも可能となっている。そこにはアドバンスド アンビエント ライティングが施されたシフトノブも配置。Qi規格のワイヤレスチャージャーも搭載されている。
新開発のEV専用プラットフォームを採用したことで、フラットかつ広々とした室内空間を実現。場所を専有してしまう空調ユニットはモータールームへ移動させたことで、CセグメントながらDセグメントレベルの広い空間に仕立てられている。
スリムでスタイリッシュなゼログラビティシートを採用し、座り心地や快適性を追求している。騒音の少ないEVだが、遮音材もふんだんに使用したことで従来にはないほどの高い静粛性を可能とした。
プロパイロット2.0やAmazon Alexaを採用する
●日産アリアの安全装備
当然、安全装備も抜かりはない。スカイラインに搭載されて話題となった、高速道路など条件の整った環境において同一車線内でのハンズオフドライブが可能になる最先端の運転支援技術「プロパイロット2.0」を採用。車両に7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーを搭載し、白線・標識・周辺車両を検知。ナビゲーションシステムと3D高精度地図データを使うことで、ドライバーが制限速度など道路状況を把握し、つねに前方を注視ながら万が一の際にすぐハンドル操作ができる状態にあることが前提の状況の同一車線内でハンドルから手を離すことが可能になる。
なお、このアリアには準天頂衛星システムなどからの高精度測位情報を受信し、自車位置をさらに高精度に把握することが可能となっている。
またメーターディスプレイなどには、ドライバーが直感的に現在のプロパイロットなど作動状況を把握できるようにするため、リアルタイムで情報が表示される。アドバンスド アンビエント ライティングは、プロパイロット作動状況に合わせて、通常時は白色、ハンズオン時は緑色、ハンズオフ時には青色に変化する。
ステアリングコラム上方にはドライバーモニターカメラを設置。きちんと前方を向いて走行しているかを確認しており、前を向いていないと判断した場合、警告音で注意を促す。さらに、ハンズオフ状態で前を向いていないと判断し、その状態が長く続いた場合はハザードランプを点灯させ、速やかに車両を停止させる機能も持っている。
加えてリーフにも搭載しているプロパイロット パーキングと、車外からの操作で駐車可能なプロパイロット リモート パーキングも搭載(日本市場のみ)。狭い場所へ駐車しなければならない状況でも、乗員が降りた状態で駐車できるので、乗り降りに苦労することがないのはうれしいだろう。
もちろん、インテリジェント エマージェンシーブレーキ、インテリジェント アラウンドビューモニター、インテリジェントFCWといった全方位の運転支援システムも搭載している。
●日産アリアのコネクテッド技術
そしてアリアは、先進のコネクテッド技術も与えられている。自宅ではスマートフォンの専用アプリで充電残量も計算し、充電スポットへの立ち寄りも加味したルートプランの組み立てを行い、アリアに転送することができる。空調も事前に設定可能できるため、夏の暑い日も冬の寒い日も、乗り込んだ直後から快適な空間に整えておけるのも魅力だ。
さまざまな情報を表示させる、ふたつ並んだ12.3インチのディスプレイは形状にもこだわっている。インパネ中央部は助手席の乗員も確認・操作することを前提に外側へ広がるように、運転席側はドライバーのみが集中して情報確認できるよう、内側へそれぞれが緩く湾曲。上部から見るとS字を描く独特なデザインを採用した。中央のナビゲーション画面を、運転席側へスワイプして移動させるといったアクションも用意されている。
また、ハローニッサンと呼びかけることでシステムが起動し、空調やナビゲーションなどを音声で操作することが可能。インターネット接続により、より自然な言語での音声認識を実現している。
さらに、Amazonが提供する音声サービス「Amazon Alexa」を搭載。Amazon Musicなどの音楽再生、天気予報の確認、家族や友人との通話、スマートホームデバイスなどのコントロールも音声で可能となる。加えて帰宅中にAlexaへ話しかけ、自宅の照明やエアコンのスイッチを入れるなどの操作も可能だ。
このほか、日産初となるリモート・ソフトウェア・アップデートも採用。無線によるソフトウェアアップデート機能により、つねに最新の状態を保つことができるのも嬉しい機能のひとつだろう。ソフトウェアを保存する専用のデュアル・バンク・メモリを搭載。停車中や走行中はソフトウェアをサブメモリにダウンロードし、その後ベストなタイミングでメインメモリと切り替えることでアップデート時間を短縮させるというものだ。
最先端の技術をふんだんに搭載した日産アリアは、タイムレス ジャパニーズ フューチャリズムからヒントを得た、滑らか・シック・シームレスなデザイン。そしてパワフルかつスムースでワクワクするドライブ体験を与えてくれる、まさに次世代の電気自動車の姿といえるクルマだろう。
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みんなのコメント
お詳しい方、宜しくお願い致します。
さて、発売までの一年でデザインや仕様がどれだけ換わってしまうのか。
前後席伴に足元ほぼフラットとか、ウッドパネルを透過して光る操作スイッチ類等、
このクルマの特色が無くならないと良いけど。