これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、3列シートを搭載した都会的なSUV、エクシーガ クロスオーバー7を取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】今なら7シーターSUVはウケるかも!? なぜエクシーガクロスオーバー7は売れなかったのか?
文/フォッケウルフ、写真/スバル
■ファッション性とSUVの機能を融合して新ジャンルを提案
他ジャンルの特徴を融合させることで新たな価値をもたらすのがクロスオーバーSUVの特徴だが、今から約9年前に「都市型SUV×多人数車」という掛け合わせによって、新ジャンルを提案した「エクシーガ クロスオーバー7(以下クロスオーバー7)」がスバルから登場した。
大型フロントグリルやルーフレールといったアイテムがSUVテイストの演出に貢献する
ファッション性と本格SUVの要素を取り入れた内外装や、ベース車から継承した開放感にあふれる7人乗りのパッケージング。さらに、スバルならではの全天候型AWDのパフォーマンスによって、アクティブなライフスタイルを実現する「7シーターSUV」というコンセプトは斬新だったが、当時の市場ではあまり受け入れられず、2018年3月にスバルのラインアップからひっそりと姿を消した。
販売面ではまったく振るわなかったクロスオーバー7だが、あと数年遅く登場していたら、もしかして……と思わせる要素は多分に持ち合わせている。
バンパーやホイールアーチ、サイドシルにクラッディングを装備してタフな装いに仕上げられた。全幅は立体駐車場への対応も考慮した1800mmに設定されている
クロスオーバー7のデビューは2015年4月。純粋な新型車ではなく、ミニバンとして販売されていたエクシーガをベースにした派生モデルだが、2013年11月に開催された第43回東京モーターショーに参考出品されていた「CROSSOVER 7 CONCEPT」が原型となっている。
大胆な路線変更は販売面におけるテコ入れにも思えるが、クロスオーバー7は“なんちゃってSUV”とは異なり、SUVとしてマジメに作られている。
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■今どきのSUVと並んでも上質感は遜色なし
外装は都市型SUVらしい、アグレッシブで個性的な雰囲気を追求して仕上げられている。基本的なフォルムはロールーフミニバンだったエクシーガを踏襲しているが、前後バンパーやホイールアーチ、サイドシル、クラッディングといった専用アイテムに加え、大型フロントグリルやルーフレール、ブラック塗装+切削光輝の専用17インチアルミホイールによってSUVならではの力強さが表現されている。
そのうえサイドやリアにはメッキパーツや特徴的なLEDアクセサリーライナーを備えることで、都市型SUVに相応しい上質感を漂わせている。
ファッション性の高さをセールスポイントとしているが、その狙いはインテリアにも見て取れる。シートやステアリングホイールといった要所には、タン色のレザーを織り込むとともにタン色とのマッチングのいいブルーグリーンステッチを採用し、運転席まわりにはピアノブラック調や金属調の加飾が適所にあしらわれている。
一見すると派手だが、上質感や個性を表現方法としては効果的で、派生車にしてはかなりこだわって作り込まれたことがわかるし、乗り込むたびに独自の世界観を味わうことができる。
シートやステアリングホイールなどにタン色のレザーを採用タン色との相性がいいブルーグリーンステッチをあしらうことによってカジュアルな雰囲気が漂う
扱いやすいボディサイズとしながら広々とした開放感のあるくつろぎの室内空間を両立し、3列ある席のどこに乗っても心地よく過ごせるのもエクシーガから踏襲している要素のひとつだ。
ちなみにエクシーガの室内寸法は、長さ2720mm、幅1510mm、高さ1275mmで、後席スペースは1列目から2列目シート間距離で最大1000mm、3列目シート乗車時でも920mm、さらに2列目から3列目シート間については835mmを確保している。
しかも前席から後席にかけて着座位置が徐々に高くなるシアターシートレイアウトによってすべてのシートで良好な視界が確保されている。クロスオーバー7にはこうしたエクシーガの特徴がすべて継承されているので、多人数乗車が快適にできるSUVを求めるユーザーには最適な選択と言えるだろう。
■“クロスオーバーとはこういうもの”を随所に実感
背の高いモデルが揃うミニバンクラスではいま一歩だった荷室の広さや使い勝手も、SUVとして見ればクラストップレベルの実力と言える。スペース効率に優れるダブルウィッシュボーン式リヤサスペンションの採用によってホイールハウスの張り出しが抑えられ、荷室幅、荷室高ともに十分なスペースが確保されている。
また、大開口のリアゲートや張り出しを抑えたトリム形状など、スバルらしいワゴン作りのノウハウが生かされていることも優れたユーティリティ性能の実現に貢献。用途に合わせてフレキシブルなシートアレンジが可能なのも“元ミニバン”ならではの特徴であり、他のSUVにはない独自の付加価値と言っていい。
最低地上高アップはSUV化にあたってお約束とも言えるが、クロスオーバー7では専用サスペンションの採用によって170mmを確保した。フォレスターのような純SUVと比べると物足りなく感じるが、市街地走行を主体とする都市型SUVとしては十分なクリアランスと言えるし、たとえ地上高が170mmだとしても一般的な乗用車よりはクリアランスが確保されており、なおかつ駆動方式は4WDであるから悪路に遭遇したときには頼もしく感じるはずだ。
あくまで「都市型」なので、一般的なSUVのようにハードな悪路に乗り入れることはできないが、重心が低く抑えられるのでSUVにありがちな腰高感は皆無で、操縦安定性が良好なうえに、しなやかな乗り心地が味わえるのは利点と言える。
アイサイトはバージョン2だが、当時としては「ぶつからない」ためには画期的な安全装備だった。事故の被害を軽減するための予防安全機能と、スバル独自の環状力骨構造を採り入れた多人数乗り車専用ボディの効果もあり、安心感に包み込まれた快適な走りと高度な安全性を実現していた。
アイサイトバージョン2は、衝突の回避と被害軽減をサポートするだけでなく全車速追従機能付きクルーズコントロールも備わる
今どきのSUVクラスには3列シートを備えた多人数乗りが少数ながら用意されている。しかし、いずれも3列目はエマージェンシーシートで、シートの作りや足もとや頭上のスペースなど、乗員の心地よさに配慮しているとは言い難い。
その点では、元ミニバンとして気持ちのいい爽快な走りと優れた居住性と開放感ある室内空間を高い次元でバランスさせることにこだわって開発されたエクシーガをベースにしたクロスオーバー7には、一日の長ありと言えるだろう。元ミニバンゆえにSUVらしさが希薄に感じるかもしれないが、クロスオーバーSUVとは本来こういうモノであることは存分に実感できるはずだ。
【画像ギャラリー】ワゴン作りのうまさを活かして優れた実用性を実現したエクシーガ クロスオーバー7の写真をもっと見る!(9枚)
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みんなのコメント
3列シートのクルマを自動車メディアは
散々叩きまくり、ラインナップから
葬り去させておいて、この手のひら返し。
だから日本の自動車メディアは信用できない。
時代や流行りに流されない信念はゼロで、
記者というよりも「ただのオタク」が
文章を書いているだけ。