もくじ
ー BMWの上級マーケット志向
ー 大きなX5ではない
ー BMWのSUVで最大
ー MモデルやPHEVも設定
ー 400psの3.0ℓターボを搭載
ー パフォーマンスと快適性の両立
BMWの上級マーケット志向
生産開始より1年も前に試乗できる機会が与えられるというのは非常に珍しいことだ。まして、隔離されたテストトラックではなく公道での試乗なんてめったにない。しかし、これこそがBMWがX6の上に投入予定のラグジュアリー7シーターSUVの姿である。ライバルとするのはメルセデス・ベンツGLSやレンジ・ローバーの標準ホイールベース車だ。
発売を12カ月後に控え、BMWのエンジニアたちはX7の最終調整に勤しんでいた。コードネームG07のこのクルマがアメリカ・スパータンバーグのX3、X4、X5、X6が生産されている工場周辺を走り回っている。われわれのテストには異なるエンジンやシャシーのセットアップが施された5種類のプロトタイプが参加した。
昨年のフランクフルト・モーターショーでコンセプト発表されたこのX7は、BMWのSUVラインナップに追加される7番目のモデルだ。発売時点でのフラッグシップとなる高性能版はX7 M50d Mパフォーマンスだ。これ以外に初期発売されるグレードはxDrive40i、xDrive50i、そしてxDrive30dなどがある。
復活予定の8シリーズとともに、BMWの上級マーケット志向の一端を担っている。
大きなX5ではない
「たんなるX5のロングホイールベース版ではありません」とX7プロジェクトリーダーのジョルグ・ウンダーはいう。「7シリーズと同等の高級感と快適性を持つSUVを作っているのです。それと同時に、BMWの購買層が求めるような運動性能を追求しています」
X7のベースとなるのは、BMWのCLAR(クラスター・アーキテクチャ)プラットフォームだ。ボディーはアルミニウムと高張力鋼の組み合わせで構成される。電気系統は従来型の12Vシステムを使用しているが、7シリーズと同等のドライバー支援システムを搭載する予定だ。
われわれがサウスカロライナでドライブしたX7プロトタイプは完全なるカモフラージュが施され、スタイリングの詳細をうかがい知ることはできない。しかし、背の高いシルエットや引き締まった表面処理が見て取れた。
このたくましいSUVには大きめのキドニーグリルが付き、複雑な造形のバンパーには多くのレーダーやカメラなどが取りつけられている。レーザーライトプロジェクターとともにオプションで用意される横長のLEDヘッドライトもフロントのルックスに大きな影響を与えている。
複雑なボンネットやフロントホイールハウス後部のフェイクエアスクープ、分割式テールゲート、OLEDテールランプなど、ビジュアル的にはX5の影響が強く感じられる。
BMWのSUVで最大
X7の寸法はBMWのSUVラインナップの中で最大だ。前兆は5100mm前後、全幅は2020mm前後、全高は1800mmに及ぶ。X5よりも200mm近く長く、80mm幅広く、40mm高い計算だ。ホイールベースは3010mmと、X5よりも76mm長い。ホイールは19、20、21、22インチから選択可能だ。
われわれが試乗したX7プロトタイプのインテリアは大部分にカバーがかけられていたが、12.3インチのメーターパネルや、同サイズのタッチ式インフォテインメントモニターを確認できた。これらは両方ともBMW最新式のID7インターフェイスが使用されていた。そして新型のマルチファンクションステアリングホイールが装備されていた。これらの装備は他のSUVライバル達と対等に戦えるものだろう。
この他にもいくつかのオプションが装着されていた。たとえば、マルチカラーのヘッドアップディスプレイ、ボイスコントロール、Mスポーツのシートとステアリング、ガラスで覆われたシフトノブ、センターコンソールのダイヤル式コントローラーなどだ。
新型X7は英国やその他の市場においては7シーターが標準となるが、6人乗り仕様もオプションで用意される。3列目シートへの乗り降りは電動システムを使う。モーターが2列目を前に移動させることにより、十分なスペースを確保するのだ。BMWは荷室の容量について明かしていないが、5人または7人乗りが用意されるメルセデスGLSよりも大きな容量が確保されているとのことだ。
MモデルやPHEVも設定
公式な発表はされていないが、AUTOCARが入手した情報によればX7はX5とほぼ同様のエンジンラインナップとなるだろう。340psの3.0ℓ直列6気筒や、460psの4.4ℓV8、265psまたは400psの3.0ℓ直6ディーゼルなどが用意される。すべてのエンジンにBMW製8速ATと、xDriveと呼ばれる4WDシステムが組み合わされる。
最上位グレードとなる、M5譲りの600psを発揮する4.4ℓV8ツインターボを搭載したMモデルは2019年後半に発売予定だ。
X7にはガソリンエンジンとモーターによるプラグインハイブリッドも設定される見込みだ。2.0ℓの4気筒ターボに、ギアボックス上にマウントされた電動モーターが組み合わされる。合計で259psと40.8kg-mを発揮するといわれ、モーターのみで100kmの航続距離を持つ。
X7はフロントにダブルウィッシュボーン式、リアに5リンク式のサスペンションを装備し、エアスプリングが組み合わされる。標準の最低地上高は183mmだが、243mmまで引き上げることも可能だ。通常の電動ステアリングの他に、オプションでアクティブ式後輪操舵も選択できる。
400psの3.0ℓターボを搭載
BMWは最上位となるX7 M50d Mパフォーマンスの詳細を発表していない。しかし、M550d Mパフォーマンスと同様の3.0ℓクワッドターボの直列6気筒エンジンが搭載されるだろう。そのスペックは400ps/4400rpmと77.6kg-m/2000rpmとなる見込みだ。
X7プロトタイプはそもそもが大きめの音を発していたが、スポーツモードではより騒々しいクルマであった。最近のMパフォーマンスモデルに共通だが、ほんとうの排気音に加えて人工的に生成されスピーカーから発せられる音もある。それを考えても非常に自然な音であり、回転数の上下に応じて変化していて洗練性を損ねることもない。
操縦性の良い着座位置は他のどのBMWよりも「明らかに高いです」とウンダー氏は説明する。前方視界は素晴らしいが、後方は2列目シートのヘッドレストと、リアウインドウの傾斜のせいでやや遮られている。
ステアリングは低速時には軽くフィードバックに欠ける印象だが、速度を増すにつれて重くなり、レスポンスも良い。Mスポーツのエアサスペンションとアダプディブダンパーにより、21インチホイールでも操作性、乗り心地ともに良好だ。
パフォーマンスと快適性の両立
きついコーナーを超えてみても、このSUVのサイズにしては高い運動性能と落ち着きを見せた。電子制御のロールバーと後輪操舵によりロールは押さえ込まれ、驚くべき敏捷性を持っている。その気になれば鋭い回頭性を見せた。ピッチやダイブの動きもよく制御され、コーナーの入り口から出口まで非常に安定している。
2300kgもの車重を感じさせられる場面も時折あるが、4WDシステムによる卓越したグリップのおかげもありワインディングでもアンダーステアに悩まされることはない。マニュアルモードにすればレッドラインまでシフトアップされることはなく、レスポンスが鋭くなりパフォーマンスも向上する。
エンジンのフレキシビリティと広いギア比により、このX7 M50d Mパフォーマンスはコンフォートモードなら高速道路で快適な巡行ができる。
オフロードでの性能も意識されている。ホイールトラベルは100mm以上確保され、トラクションの状態によって前後輪のいずれかに100%の駆動力を送ることも可能だ。荒い路面はもとより、急斜面を登り降りや深い溝も安心して走行できる。
このX7 M50d Mパフォーマンスが発表されるまではもうしばらく待つ必要がある。しかし、今回の初期インプレッションの感触では、この高機能SUVはほかのBMW製SUVにはないレベルのパフォーマンスと快適性を両立しているように感じる。
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