TRD・USAプレジデントのデビッド・ウィルソンによれば、トヨタ/レクサスの次期GT3マシンの開発は「順調に進んでいる」という。ただし、そのブランド戦略はまだ確定していない。
次期GT3マシンは2022年の東京オートサロンで発表された『GR GT3コンセプト』をベースに日本で開発が続けられている。ただし、あくまでもこれはコンセプトモデルであり、GRカンパニーの佐藤恒治プレジデント(次期トヨタ自動車社長)も、外観等については変更される可能性を以前に仄めかしていた。
GRカンパニー佐藤恒治プレジデントに聞く、TOYOTA GAZOO Racingのカスタマーレーシングの今後
一方、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権でレクサスのGT3車両を走らせてきたTRD・USA社長のウィルソンは2023年1月、デイトナでSportscar365の取材に応じ、新型車両のローンチ・スケジュールには「希望」と「現実」の両方があると語った。未確定ではあるものの、どうやら2025年のデビューを目指している模様だ。
■日本との作業は「文化的に困難なこともある」
名称未定のこの車両は、トヨタ/レクサスのGTレース部門において2017年のローンチ以来、世界で戦ってきたレクサスRC F GT3の後継車種となる。
「私は2週間前に日本から帰ってきた。日本の同僚と話をしてきたんだ」とウィルソンは明らかにした。
「私に楽観的な視点をもらたらしてくれるのは、現在我々がレースをしているこのクルマ(RC F GT3)は、GT3車両になるために作られたものではなく、それがどんなものになるかについて我々の影響力はまったくなかった、ということだ」
「このクルマを引き取ってから、スポーティで競争力のあるものとするために、我々は膨大な労力を費やしてきたんだ」
「だが、素晴らしいことに、(次期)新型車両の開発には、設計図に線が引かれる前から、我々も参画している」
「レクサスRC Fの開発において、我々は他のどのディストリビューターよりも多くの成功を収め、高い信頼を得ている。そのことにより、多大なリスペクトを得てきたのだ」
「対話のなかで我々がある方向性を示すと、彼ら(日本側)はそれに耳を傾けてくれる」
「時には文化的に困難なこともあるが、最終的には我々がサーキットで走らせたものがそれを物語るだろうし、それは私に希望と楽観を与えてくれるよ」
ウィルソンは、この新型車のデビュー時期について正確なスケジュールを語ろうとしなかった。それは、量産車の発表時期に大きく依存するものと思われる。
「タイムラインに関しては、我々はリミットを設定する準備ができていない」とウィルソンは言った。
「そこには我々の希望と、そして現実というものがある。今年の後半には、もう少し具体的な話ができればと思う」
「我々は、動いている目標を追いかけている。我々が望んでいるのは、『去年は競争力があったのに、何年後には……(競争力がなくなる)』というクルマではない」
「コルベット(Z06 GT3.R)については、私はまったく分からないが、恐ろしさを感じる。いいクルマになりそうだ」
「ゼネラルモーターズは、世界的にモータースポーツプログラムに多くのリソースを投入している。新型マスタングもいいクルマになりそうだ。だから、我々には真の競争というものがあるのだ」
「それは良いことだ。なぜなら、それは我々をより強くプッシュし、より良くするための原動力になるからだ。 それが競争の原理というものだ」
■引き続き『レクサス』ブランドを望むアメリカ側
GT3のコンセプト車両は、トヨタのパフォーマンス・サブブランドである『GR』の名で発表されたが、ウィルソンはモータースポーツにおける高級ブランドのDNAを継承するために、レクサスブランドと統合される可能性に期待を寄せている。
「ブランド戦略については、まだ検討中だ」とウィルソン。
「レクサスがあり、GRがあり、トヨタがある。私としては、(新型GT3に)レクサスがあればいいなと思う」
「(レクサスRC F GT3プログラムの開始時に)私に聞くとすれば、私の成功の定義は、レクサスの基礎を築き、100年前からレースをしているブランドと競争することだった」
「我々の会社にとって重要なのは、長期的なコミットメントだ。パフォーマンスを本物の特性として確立するためには、ブランドのDNAに本当に浸透させるために何十年も確実にレーストラックに居続ける必要がある。たが我々は、たった6、7年でその針を動かしてしまった」
「トヨタであれ、レクサスであれ、GRであれ、我々の文化は販売店を幸せにし、彼らが受け入れることのできる製品を提供することにある」
「我々のレクサスディーラー、そしてジェフ・バル(シニア・モータースポーツ・マネージャー)と彼のチームが過去数年にわたり行ってきたことは、前例のないことだった」
「デイトナ24時間での我々のレクサス・レーシング・エクスペリエンスには、全米からレクサスディーラーたちが集まってきた。彼らはこれを受け入れてくれたんだ」
「6、7年前、我々は絶体絶命だった。しかし、我々がディーラーやファンを巻き込むために行ったことを、非常に誇りに思っている。なぜなら、それによってこのブランドの認知度が急速に高まったからだ」
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