現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 4WDの先駆者アウディが威信をかけて開発した幻のWRカー「アウディ スポーツクワトロ RS002」

ここから本文です

4WDの先駆者アウディが威信をかけて開発した幻のWRカー「アウディ スポーツクワトロ RS002」

掲載 更新 12
4WDの先駆者アウディが威信をかけて開発した幻のWRカー「アウディ スポーツクワトロ RS002」

SUBARUが先鞭をつけた4WDを必須アイテムに引き上げたアウディ

 この秋ひさびさに、日本ラウンドとなるラリー・ジャパン2021が復活することで、再び人気が上昇する気配を見せている世界ラリー選手権(WRC)。近年は、WR(ワールド・ラリー)カーと呼ばれるカテゴリーの競技車両がその最高峰に位置していますが、メカニズム的に4輪駆動(4WD)を取り入れることは世界一になるためには必須となっています。ラリー競技車にこの4WDシステムの必要性を決定的に知らしめたのは1980年代のアウディでした。

「1億円」で落札の個体も! 「ランチア」なのに「アバルト」のエンブレムが付く「037ラリー」という名車

 そのアウディが、過激化してきたWRCのグループB末期、次なる時代の最終ウエポンとして4WDの威厳を示すべく開発していたマシンがあります。それが幻のグループS車両「アウディスポーツクワトロ RS002」。ここではそこに至るまでのアウディを振り返ってみましょう。

ラフロード先駆車レオーネから氷結ウエットターマックを牛耳るクワトロへ

 4WDマシンの流れが出てきたのは1980年代のこと。当時のWRCで主役を務めていたのはグループBカーでしたが、このころから4WDが見逃すことのできない技術トレンドとなっていきました。その4WDを最初にWRCに持ち込んだのはSUBARU(当時は富士重工業)でした。1980年のサファリ・ラリーがその舞台でしたが、レオーネ・スイングバックのグループ1仕様で、エンジン排気量も1.6ℓと小排気量にもかかわらずグループ優勝に輝き、総合でも18位につける快挙を成し遂げ、ここからSUBARUのWRCチャレンジがヒートアップしていきます。

 ただし、4WDを一気にメジャーな存在にしたのはアウディ・クワトロでした。市販モデルが80年のジュネーブ・ショーでお披露目された後にグループ4仕様の競技車両の製作が進み、81年のWRC開幕戦となったモンテカルロ・ラリーでデビューを果たしています。

 このシーズン、アウディのワークスチームであるアウディ・シュポルトからはエースのハヌー・ミッコラと女性ドライバーのミッシェル・ムートンが参戦していましたが、デビュー戦ではミッコラが、ライバルを圧倒する速さを見せつけます。

 結果こそリタイアに終わったものの、それまでは2位以下を大きく引き離してトップを独走して見せたのです。そして続く第2戦のスウェディッシュ・ラリーではミッコラのドライブであっさりと初優勝を飾っています。

 このスウェディッシュは雪路を駆け抜けるラリーとして知られていて、当然のように4WDのアドバンテージが予想されていましたが、それ以降もアウディ・クワトロの速さは衰えることもなく、シーズン終盤、グラベルとターマックが混在するミックスラリーとして知られるサンレモ・ラリーではムートンが優勝。ちなみにこれは、女性ドライバーとして初めてWRCを制する快挙でした。

 そして最終戦のRACではミッコラがシーズン2勝目を挙げ、シリーズランキング(ドライバーズポイント)で3位にポジションアップしてシーズンを終えることになりました。

82年アウディ圧勝でマニュファクチャラーチャンピオン

 翌82年シーズンはアウディの、そして4WDのアドバンテージが大きくクローズアップされることになりました。ドライバーのラインナップにスティグ・ブロンクビストが加わったこともあってアウディは全12戦中半数以上の7勝をマーク。ムートンが3勝を挙げ、ミッコラとブロンクビストが2勝ずつ、と星を分け合ったことでドライバーランキングでは2~4位に留まりオペルのロールにタイトルを譲ったものの、マニュファクチャラータイトルを獲得。

 4WD車両として初のチャンピオンマシンに輝いています。翌83年はミッコラがドライバーズチャンピオンに輝いたものの、前年チャンピオンのロールが移籍し、マルク・アレンとのツートップ体制で臨んだランチアにマニュファクチャラーのタイトルを奪われてしまいます。このランチアが強敵でした。

 81年シーズンにオリジナルのアウディ・クワトロがデビューして以来、クワトロA2、スポーツ・クワトロと着実に進化を遂げていたクワトロでしたが、4WDのアドバンテージはあったものの、フロントヘビーなパッケージングからハンドリングには難を抱えていて、ミッドシップの後輪駆動であるランチア・ラリー037に後れを取ってしまったのです。

 さらにアウディの4WDとランチアのミッドシップという、両車の“良いとこ取り”をしたプジョー206T16が登場するに至っては、フロントエンジンのクワトロでは対抗し得ませんでした。

期待のミッドシップ対抗モデルは700馬力だったが…

 そこでアウディは、グループBをより先鋭化させたグループS車両を開発するプロジェクトを立ち上げました。プロトタイプとしてアウディ・クワトロをベースにエンジンをボディ後半部に載せた“ミッド・エンジン・クワトロ”も施策されていましたが、本命として完成したモデルがスポーツ・クワトロRS002でした。

 その風貌は、ラリーカーというよりもコンパクトなレーシングマシンに似たもので、リアの巨大なウィングが目立っていました。コクピットの後部に、アウディの得意としてきた直列5気筒エンジンを縦置きに搭載、パワーを前後に配分して4輪を駆動するというレイアウトとなっていました。

 ターボ・チューンを施されたエンジンは700馬力を絞り出しており、約1tの車両重量に対しては十分なパフォーマンスが期待されていました。ただし、グループSのプロジェクトの前提となっていたグループBでのアクシデントが続出したことでグループBとグループSは、カテゴリーそのものが姿を消すことになり、この究極のラリーマシンが実戦で鎬を削ることは敵わなくなってしまいました。

 もちろん安全は尊重されるべきですが、この究極のマシンが戦う様を見たかった、というファンも少なくなかったと思われます。ちなみに、僅かに1台のみが製作されたRS002は、インゴルシュタットのアウディ本社に併設されたAudi Museum Mobile(アウディ自動車博物館)に収蔵され、企画展などで展示されているようですが、何度か訪れた際には展示されてなく、出会いは果たせていません。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
孤高のミニバンSUV、デリカD:5に「BLACK Edition」新登場、定番の「CHAMONIX」には新たに8シーターを設定
カー・アンド・ドライバー
ダイハツの「“すごい”コペン」登場! 軽規格超えた「ワイドフェンダー」×770ccエンジン搭載! 2L並みパワーでめちゃ速い「デカいコペン」 どんなマシン?
ダイハツの「“すごい”コペン」登場! 軽規格超えた「ワイドフェンダー」×770ccエンジン搭載! 2L並みパワーでめちゃ速い「デカいコペン」 どんなマシン?
くるまのニュース
トヨタの「高級スポーティミニバン」がスゴい! 「走りが楽しい」反響多数!? 王道「アルファード」と異なる「個性」に注目! ヴェルは何が違う?
トヨタの「高級スポーティミニバン」がスゴい! 「走りが楽しい」反響多数!? 王道「アルファード」と異なる「個性」に注目! ヴェルは何が違う?
くるまのニュース
「スゴい事故」発生も…「夏タイヤ履いてるなんて信じられんッ!」 批判の声多数! 夏タイヤで雪道走ると違反? 正しい交換時期の目安とは
「スゴい事故」発生も…「夏タイヤ履いてるなんて信じられんッ!」 批判の声多数! 夏タイヤで雪道走ると違反? 正しい交換時期の目安とは
くるまのニュース
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
ベストカーWeb
「富士山登山鉄道」断念、でも代わりは“トラム”なの!?  後継には「電動連節バス」しかない3つの理由
「富士山登山鉄道」断念、でも代わりは“トラム”なの!? 後継には「電動連節バス」しかない3つの理由
Merkmal
入場無料! [レクサスRZ]に[新型アウトランダーPHEV]も!! 千年の都が舞台[京都モビリティ会議]が12月7日(土)にやってくる
入場無料! [レクサスRZ]に[新型アウトランダーPHEV]も!! 千年の都が舞台[京都モビリティ会議]が12月7日(土)にやってくる
ベストカーWeb
FIA F2参戦のロダン、最終戦でFIA F3王者フォルナローリを起用。フォーミュラE参戦のマローニの代役
FIA F2参戦のロダン、最終戦でFIA F3王者フォルナローリを起用。フォーミュラE参戦のマローニの代役
AUTOSPORT web
快適ボックスシートから広々フルフラットへの変更も簡単! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
快適ボックスシートから広々フルフラットへの変更も簡単! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
もう[トヨタ]が開発してるだと!!!!!!!!!!! 次期型[GR86/BRZ]は1.6Lターボ+ハイブリッドでほぼ確定か!?  
もう[トヨタ]が開発してるだと!!!!!!!!!!! 次期型[GR86/BRZ]は1.6Lターボ+ハイブリッドでほぼ確定か!?  
ベストカーWeb
トヨタWRC、大荒れのデイ2を好位置で乗り切る。ラトバラ代表は「明日もトリッキーになる」と警戒/ラリージャパン
トヨタWRC、大荒れのデイ2を好位置で乗り切る。ラトバラ代表は「明日もトリッキーになる」と警戒/ラリージャパン
AUTOSPORT web
ARTグランプリ、ホンダのフランス法人とパートナーシップを締結。CR-VとZR-Vが提供される
ARTグランプリ、ホンダのフランス法人とパートナーシップを締結。CR-VとZR-Vが提供される
AUTOSPORT web
優れた燃費が自慢[アコード]!! [レクサスES]と比較した明確な違い
優れた燃費が自慢[アコード]!! [レクサスES]と比較した明確な違い
ベストカーWeb
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
AUTOSPORT web
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
AUTOSPORT web
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
ベストカーWeb
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
AUTOSPORT web

みんなのコメント

12件
  • スポーツ・クワトロRS002は初めて見ました。
    どこか昔のCカーをデフォルメしたような愛嬌の有るデザインですね。
  • こーゆーゲテモノ車…

    大好きです☆
    \(//∇//)\
    とりあえず…ミニカーは持っています

    実車を見れる機会はありませんでしたが…
    グループS」を調べると…
    これもまた☆面白いですね

    しかしながら…
    市販車ベース」が泥臭くて☆好きなので
    F1化?しなくて良かったなぁ〜と
    感じますね

    リアルな→WRCのif仕様ですね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村