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人気車だったのになぜ凋落? トヨタ bBが陥ったワナ 【偉大な生産終了車】

掲載 更新 18
人気車だったのになぜ凋落? トヨタ bBが陥ったワナ 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

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 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ bB(2000-2016)をご紹介します。

【画像ギャラリー】初代、オープンデッキ、そして2代目。若者たちのニーズを満たすべく進化したbBの軌跡をギャラリーでチェック!!!

文:伊達軍曹/写真:TOYOTA

■存在感抜群! 若者たちの「思い思いの使い方」を実現すべく登場した新コンパクトカー

 最初から「ユーザーの好みに応じたカスタマイズ」をされることを前提としたトールワゴンとして、初代は2000年に登場。

 それは目論見どおり若いユーザーの心をつかんでヒット作となったが、続く2代目はユーザーの嗜好を読み間違えて失速。

 結果として2代限りで消えていった小型トールワゴン。それが、トヨタbBだと言えるでしょう。

 1993年発売の初代スズキ ワゴンRが切り開いた「トールワゴン」のブームはその後、登録車にも普及。1990年代の末期は、背が高くて四角いボディの初代日産キューブに大きなサブウーファーを付けるようなカスタムが若年層の間で流行していました。

 そういったムーブメントの果実を総取りすべく(?)トヨタが開発したのが、2000年1月の東京オートサロンで発表された初代bBでした。

一目でわかる存在感あるトールボックスデザインと、若者の様々な使い方をサポートできる広く快適な室内空間を特長とする新コンパクトカーとして登場したbB。「bB」は、未知の可能性を秘めた箱「ブラックボックス」のイニシャルから名付けられた。

 ボクシーな外観は若干ワルな感じですが、基本的にはシンプル系なデザインで、箱型ゆえに広大な車内スペースは、自分なりの有効活用ができそうな作り。

 さらにシートは前後フルフラットになるため車中泊にも利用可能で、フラットなラゲッジフロアも「いろいろな使い方ができそう!」という予感を抱かせる設計でした。

 多種多様な純正カスタムパーツを用意し、そしてアフターパーツメーカー各社からも大量のドレスアップパーツがリリースされた初代トヨタbBは、目論見どおりというかマーケティング戦略どおりに大ヒット。

 ピックアップトラックタイプの「bBオープンデッキ」を2001年に追加したり、マイナーチェンジや仕様変更などを重ねながら、2005年12月まで販売されました。

bBオープンデッキ。販売不振により2003年8月で生産を終了した

 そして2005年12月、bBは満を持して2代目へのフルモデルチェンジを敢行しました。

 初代bBはヴィッツシリーズと車台を共用していましたが、2代目bBは「小回り性能を良くするために」という名目で、ヴィッツより小さなパッソ用のプラットフォームを採用。

 しかし「車内の広さ」はbBという車の大きな訴求ポイントですから、ホイールベースを延ばすことによってもちろん車内は広く作られています。

 エクステリアデザインは、初代が「ちょっとワルだけど、基本的にはシンプルなBOX」であるとしたら、2代目は「トヨタが考えるワルな造形」と言えるでしょうか。

 ボディパネルの各所にさまざまな「うねり」が付加され、ヘッドランプやテールレンズもかなりデコラティブな(装飾的な)形に変更されました。

 2代目bBは純正オーディオにも力を入れていて、最上級グレードには9つものスピーカーを装着。

 さらには「マッタリモード機能付フロントシート」という、フロントのシートを沈み込ませることで外からの視線をさえぎり、快適な姿勢でくつろげるモード……なんてモノも用意されていました。

 ちなみに2代目トヨタbBのテーマは「クルマ型Music Player」です。

 そのような意欲作だった2代目bBは、初年度こそけっこうな数が売れましたが、年を追うごとに販売は失速。

「まるで売れない不人気車」というほどではありませんでしたが、今ひとつパッとしない状況が続き、結局は2016年8月に販売を終了。

 2016年11月に発売となった「トヨタ タンク」が実質的な後継モデルと言えるかもしれませんが、直接的な後継モデルは不在となっています。

■ベース車の変更と「お節介」!!? bBが2代目で消えた2つの理由

 初代はヒット作となったbBでしたが、「クルマ型Music Player」としてのさまざまな工夫がこらされた2代目は、いったいどこがいけなかったのでしょう? なぜ、生産終了となってしまったのでしょうか?

 理由は2つあります。というか実質的には後述する1つの大問題点が、bBというブランドを“殺した”と考えられます。

 まず第一にいけなかったのは、ベースとなる車台をヴィッツ系のファンカーゴから、さらに小さなパッソ系の車台へと変更したことです。

2代目。初代の大きな特徴だった「トールボックスらしさ」はなりを潜めた

 もちろんこれは、トヨタとしては良かれと思ってやったことでしょう。

 パッソ系の車台を使えば最小回転半径は小さくなりますし(5.5m→4.9m)、製造原価を抑えれば、結果として若年層ユーザーに手頃なプライスで車を届けることができます。

 しかし当の若年層ユーザーは、そもそも「最小回転半径」なんてものはほとんど重視していませんでした。

 そして「パッソの車台に変えはしましたが、車内は相変わらず広いですよ!」というのが2代目bBだったわけですが、小さな車台に載ったボディを無理やり拡大したため、タイヤハウス(編集部注:タイヤとボディーの間にあるスペースのこと)はかなり小さいものとなってしまいました。

 それの何がいけないかというと、タイヤハウスが小さいと、ユーザーは「大径ホイール&太いタイヤ」に交換することができなくなってしまいます(※できなくはないが、ちょっと難しくなる)。

 大径ホイール&太いタイヤの功罪はさておき、カスタム好きなユーザーにとっては、そんな車は「論外」というほかないでしょう。

 そして第2の問題は――というかこれこそが本質的な問題なのですが、2代目のbBは「すべてが押し付けがましかった」ということです。

2代目のインテリア。「音・光・まったり」をキーワードに、最新の音響技術を駆使したオーディオシステムや音と連動して明滅するイルミネーション、隠れ家的な雰囲気を演出するための新開発のフロントシートなどが採用されている

 初代bBは、若干ワルなテイストは入っていましたが、繰り返し述べてきたとおり基本的にはシンプルなデザインで、言わば「自分なりのカスタムを楽しむための、まだ何も描かれていない真っ白なキャンバス」みたいなものでした。

 ユーザーとしてはその純白のキャンバスを、自分なりのセンスで埋めていく作業に楽しさと満足とを覚えていたわけです。

 しかし2代目は、初代が成功してしまったことがむしろ悪影響を及ぼし、「皆さんはこういうのがお好きなんですよね?

 わかりました、じゃあ最初からいろいろなモノをご用意しておきますね!」とばかりに、親切心からなのでしょうが、ユーザーからすれば「押し付けがましい」としか思えない各種要素をてんこ盛りにしました。

 うねりとクセの強いボディデザイン。前述したマッタリモード機能付フロントシート。「音楽ユニットに囲まれたDJブースのような空間を演出した」というインパネ回り。

 音と連動して光が明滅し、まるでクラブやライブハウスにいるのような効果を生み出すというイルミネーション……等々です。

 これらの装備はもちろん悪いモノではありませんでしたが、人は何でも「さあどうぞ!」的に完全な用意されてしまうと、シラけてしまうものです。

 車のカスタムというのは「自分なりにやる」のが楽しいわけで、山登りだって「自分の足で登る」のが、大変だけど楽しいのと同じことです。

 パッソの車台に変えたことなども敗因でしたが、このような「人間の心の機微」を今ひとつ読めていなかった点こそが、2代目トヨタbBの根本的な敗因だったと言えるでしょう。

■トヨタ bB(2代目) 主要諸元
・全長×全幅×全高:3800mm×1690mm×1635mm
・ホイールベース:2540mm
・車重:1120kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1297cc
・最高出力:92ps/6000rpm
・最大トルク:12.5kgm/4400rpm
・燃費:15.2km/L(10・15モード)
・価格:184万8000円(2005年式 Z Qバージョン)

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みんなのコメント

18件
  • bBはメーカーとしては若者向けに造ったけど、その見切りの良さ・乗りやすさも手伝って年配者にもそこそこ人気があったよ。
  • ホントその通り。
    2代目は純正でいらないカスタムカーだったから何も出来ないし、無駄に凝ったデザインだから自分好みにも出来なかった。
    で結局若者はbBから離れ年配の方もあのデザインは欲しくないってなって売れなくなった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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