EVモードで約100km走行できる足の長さがいい
まずは燃料電池自動車(FCV)のクラリティ フューエルセルとしてデビューしたホンダ クラリティに、新たなラインアップが加わった。2つ目のパワートレインとしてプラグインハイブリッド(PHEV)が設定されたのだ。
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じつはアメリカではEVも用意されるが、こちらの日本導入予定はなし。FCVはリース販売のみとされているが、このPHEVは、いよいよ一般販売が行われる。PHEVと言えば、先代アコードに用意されていたアコード プラグインハイブリッドはやはりリース販売のみだったから、つまりクラリティ初、そしてホンダのPHEVとしても初の一般販売モデルが、このクラリティ PHEVとなのである。
内燃エンジンと電気モーターを組み合わせるハイブリッド車に対するPHEVのメリットは、外部電源から充電できる大容量バッテリーの搭載によるEV航続距離の長さと、バッテリー残量が減ったあとにもハイブリッド車として電欠の不安なく、普通に走行できることにある。普段はほぼEVとして使うことができつつ、頻繁な充電はマストではなく、また長距離走行も苦にしないという、おいしいところ取りのパワートレインなのだ。
そんなPHEVだが、これまでの例からすると、なまじ普段をほぼEVとして走れてしまうだけに、エンジンが始動するだけでガッカリさせられるという側面がある。実際、アコード プラグインハイブリッドは高効率性という意味では良くできてはいたけれど、そういう部分は否定できなかった。そこでクラリティPHEVはEV性能を強化。JC08モードで114.6km、WLTCモードでも101kmというEV走行可能距離、そしてEV最高速160km/hを実現した。
内燃エンジンはアコードの2リッターからダウンサイジングされた1.5リッターアトキンソンサイクルユニットを搭載する。最大熱効率40.5%を達成した超高効率エンジンだ。
2基の電気モーターは新開発。小型・軽量化とパワーアップを両立させている。そのほか、昇圧回路を含むパワーコントロールユニットの出力向上、17.0kWhとアコード プラグインハイブリッドに対して総電力量で実に2.5倍にもなるリチウムイオンバッテリーとDC-DCコンバーターの小型化、水冷化などが行われ、EVとしての出力向上、航続距離アップを実現していのるである。
充電所要時間はCHAdeMO急速充電で、80%まで約30分。200Vの普通充電では6時間となる。スマホの専用アプリを使って、タイマー充電などを行うことも可能。さらに外部給電機能も備えているから、それこそ災害時などには力を発揮できる余地もあるだろう。
走りの完成度は高いが価格がネックになりそうな予感
さて、ではその走りの実力はといえば、これがじつに上質に仕上がっている。EVドライブモードで走らせると、立ち上がりから豊かなトルクを発生できる電気モーターの特性を上手に手懐けていて、アクセル操作に対するパワーの出方に唐突感がなく、まさに意のままに加速できるリニアリティの高さを実現しているのだ。
アクセルを全開にするなど、一層のパワーが必要とされたときにはエンジンが自動的に始動するが、専用のデジタルグラフィックメーターのリアルタイムの出力表示を見たり、エンジンが始動する直前のタイミングで反力を返してくるペダルクリック機構を活用すれば、意図しないエンジン始動を抑えることができる。
また、減速時にはフットブレーキだけでなく、シフトパドル型の減速セレクターを使って減速度を4段階に調整することも可能。できる限りEVの旨味を活かした走りを楽しめる。
バッテリー容量が基準値を下まわれば、内燃エンジンが始動して発電を行い、電気モーターを駆動するハイブリッドドライブモードに入る。駆動を行うのはあくまで電気モーターなので、上々のドライバビリティに変化がないのが嬉しいポイントだ。また、高速走行中など、その方が高効率だということになれば内燃エンジンだけで走行するエンジンドライブモードに切り替わる。
いずれにしても、エンジンがかかればEVとしての静粛性は望めない……と言いたいところだが、クラリティPHEVの遮音対策は入念で、優れたドライバビリティと相まって、エンジンが始動してもガッカリ感はない。観察していれば気付くが、そのうち忘れているというぐらい自然に、エンジンがオン・オフされる。これもまた走りの上質感に繋がっているポイントである。
しかも、クラリティPHEVはフットワークもじつに完成されている。ボディは剛性感が非常に高く、サスペンションのストローク感も豊か。大きな入力にも挙動を乱すことがなく、リチウムイオンバッテリーを床下に積むことによる重心の低さも相まって、ホンダ車のなかでもベストのひとつと評せる懐深い操縦性を実現しているのだ。ワインディングロードでどれだけ楽しめるかは、見た目からは想像できないところに違いない。
つい走りの話から始めてしまったが、クラリティPHEVの価値はそれだけではない。優れたパッケージングにも、やはり触れないわけにはいかないだろう。
パワートレインをボンネットフード下に収め、リチウムイオンバッテリーやDC-DCコンバーターなどはキャビン床下にすべて収める効率的なパッケージングによって、室内には非常に大きなスペースが確保されている。とくに後席は大人2人ではもちろん、3人でも十分リラックスできそうなほどだ。ラゲッジスペースも広大で、容量は512リットル。ゴルフバッグは4セットを軽く飲み込むし、それでも足りなければリヤシートバックを倒してトランクスルーを活用することもできる。ただし、開口部は天地方向に小さく、スキーやスノーボードのようなものはいいが、たとえばロードバイクの車輪を外さずに積み込むのなどは難しそうである。
こんな具合で、ハードウェアの仕上がりには相当にいい点数をつけることができるクラリティPHEV。強いていえばデザインは、クラリティ フューエルセルと同様、ホンダが謳う“ロー&ワイド”や“上質な内外装”というよりは、ちょっと重たげに見える感が否めない。まあ、これは個人の好みだけれども……。
一方、個人の好みではなく誰にとっても引っかかりそうなのは価格だ。消費税込み588万600円という数字は、たとえば同じPHEVのBMW330e iPerformanceの610万円に、ほぼ肩を並べる。確かにPHEVとしての性能は圧倒すると言っていいが、BMWを差し置いて買ってもらうというのは簡単ではないだろう。そのあたりを、どのようにアピールしていくか、ブランドを作っていくかが、おそらくは一番の課題となるに違いない。
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