クルマは長く乗れば乗るほど見えてくるものがある。これまでいくつものエンジン搭載モデルを長期にわたってレポートしてきたが、今回連載している長期レポートのクルマは電気自動車(BEV)である「DS3クロスバック Eテンス(DS3 CROSSBACK E-TENSE)」だ。(Motor Magazine 2022年3月号より)
モーターによる駆動感がコンフォート性を強調する。
長期レポート車として初の電気自動車を導入し、1カ月間フル稼働した最初の月。編集部の駐車場にある200V普通充電器や取材先で見つけた急速充電器など、機会があればこまめに充電してきた。その回数、全18回。これだけこなせば充電サイクルにも慣れ、「EV充電スポット検索アプリ」を駆使すれば電欠の危機に陥ることもなさそうだ。
長期レポート初の電気自動車を導入。DS3クロスバック Eテンスが来る前に担当者が準備していたこと【第1回】
充電ポイントを確保できているという安心感があるため、DS3 Eテンスが来てからというもの、モーター駆動によるたくましい加速感を存分に味わってきた。追い越しや発進時など、機会を見つけては強めにアクセルペダルを踏み込んでしまうのだ。
前輪を駆動するモーターの最高出力は136psとそれほどハイパワーではないが、最大トルク260Nmを発生するため力感は強い。電気自動車のインプレッションでモーターによる加速を「湧き上がるようなトルク感」という言葉で表現されることもあるが、実際に経験すると確かにそのとおりだと納得してしまう。
というのも、DS3 Eテンスは、高速道路での追い越し時にペダルを踏み増しても、「瞬時に」強い加速感を得られるわけではないからだ。ほんの一瞬ではあるが、ひと呼吸おいてからトルク感がモリモリッと増していくのである。
この印象はドライブモードを変更しても大きく変わらない。「エコ/ノーマル/スポーツ」の3つのドライブモードが用意されて、モーターのパワーもそれに合わせて変化する。スポーツにセットすれば、コンパクトSUVとは思えない加速が息切れすることなく続くのだが、ペダルを踏みはじめた瞬間にだけタイムラグがある。ただ、このおかげで急激な加速Gが発生せず、DSブランドらしいコンフォート性を強調しているようにも感じる。
ちなみにシフトポジションは、ほとんどのシーンで「Bレンジ」にセットしている。回生ブレーキによる充電を期待しての選択だったのだが、走行距離の約8割は高速道路を巡航しているので充電効果は小さいのかもしれない。
その効果よりも今は、回生ブレーキによる速度制御を楽しんでいる。普段自分の足でブレーキをかけたのと同程度の減速Gがかかるのでとても扱いやすく、しかもその所作がとてもスムーズなので気に入っている機能なのだ。
ただ、Bレンジ走行で気をつけなくてはならないのは、アクセルオフの時にブレーキランプが点灯しないことだ。後続車が近くを走行しているような場面では、Dレンジを選択した方が安心だ。
第2回/2021年12月16日~1月19日(2カ月目)のデータ
・オドメーター:2533km
・当月の走行距離:2121km
・充電量:約342.5kWh(充電メーター換算値)
・電費:約6.19km/kWh
・充電回数:18回(内、200V普通充電を11回/急速充電を7回)
DS3 クロスバック Eテンス 主要諸元
●全長×全幅×全高:4120×1790×1550mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1580kg
●モーター:交流同期電動機 ZK01型
●最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●最大トルク:260Nm/300-3674rpm
●バッテリー総電力量:50kWh
●JC08モード航続距離:398km
●0→100km/h加速:8.7秒
●最高速度:150km/h
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:215/55R18
●車両価格:559万3000円(2022年11月現在)
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