日本のスーパーGTとドイツのDTMドイツ・ツーリングカー選手権競演の“DREAM RACE”、『AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT X DTM 特別交流戦』の決勝レース2が11月24日(日)に富士スピードウェイで開催され、フロントロウからスタートしたModulo Epson NSX-GTのナレイン・カーティケヤンが、自身のキャリアでも初となる“ハコ車”での勝利を挙げ、迎え撃つGT500クラスがDTM勢を撃破して連勝を飾る結果となった。レース終盤にはホンダNSX-GT同士、レクサスLC500勢同士による多重クラッシュも発生した。
2019年シーズンを終えたDTMから4台のAudi RS5 DTM、3台のBMW M4 DTMが上陸し、ついに実現した日独交流戦。今回、DTMが使用するコンロールタイヤのハンコックを装着したGT500クラス15台と合わせ、総勢22台による55分+1ラップのDTMフォーマット戦での勝負となった。
前日土曜とまったく同じ流れで、24日午前にはレース2に出場するドライバーたちによる20分間の予選が繰り広げられ、ウエットコンディションのなかMOTUL MUGEN NSX-GTの中嶋大祐が最速タイムを記録。金曜大クラッシュから見事なカムバックを果たすも、車両交換による5グリッド降格ペナルティにより6番グリッドスタートに。
これにより、2番手タイムを刻んで前日のミステイクを挽回する機会を得たロイック・デュバル(BMC Airfilter Audi RS5 DTM)がポールポジションを確保し、3番手タイムに飛び込んできたModulo NSXのカーティケヤンが並び、2日連続で両クラスが最前列を分け合う結果となった。
また、DTM勢と同じく2日連続のレース参加となったRAYBRIG NSX-GT山本尚貴、KEIHIN NSX-GT塚越広大もそれぞれ3番手、5番手につけ、4番グリッドのDTM王者レネ・ラストのAudi Sport RS5 DTMを間にはさみ、土曜の経験値を活かしたい好調ホンダNSX-GT勢が、ともにレース1で上った表彰台の再現を狙う構図となった。
13時37分、昨日同様の時刻に開始されたレコノサンスラップは大きなアクシデントもなく進み、22台全車がグリッドへ。そして14時26分にはポールのデュバルを先頭にフォーメーションラップが始まると、スタート進行中から上空の雲が厚さを増して日が陰り、気温、路面温度ともに21度のコンディションのなか、DTMが採用するマシン密集のインディスタートでレースが開始された。
ボディがぶつかりそうなほど密着したまま1コーナーへとなだれ込んだ22台は、混乱なくクリーンに立ち上がり、まずはデュバルがホールショット。その背後では、「これがレーシングドライバーとしてラストレースになる」と発表した大祐が、先行する塚越をかわして5番手へ進出する。
するとここから、ストレートスピードの差を見せつけるNSX-GTがアウディ勢に襲い掛かり、まずは2番手カーティケヤンが首位デュバルのスリップストリームから抜け、2周目の1コーナーで首位を奪うと、後方でも大祐、塚越が立て続けにDTM王者ラストを仕留めて4番手、5番手へと浮上。
3周目にはRAYBRIG山本もデュバルをオーバーテイクし、4周目にはカーティケヤン、山本、中嶋、塚越と、ホンダNSX-GT勢がワン・ツー・スリー・フォー体制を築き上げる。
トップスピードを290km/h台中盤まで伸ばすNSX勢に対し、その後方でデュバル、ラストのアウディとBMW M4 DTMのマルコ・ウィットマンは290km/h台到達がやっとの状況で粘ると、レース序盤の7周目、5番手デュバルの左リヤタイヤが突如悲鳴を上げ、ダンロップコーナーをオーバーシュート。コントロールを失わずランオフに逃げたデュバルだが、バーストにより早々のピットインを余儀なくされる。
タイヤ交換を終えたデュバルが最後尾でコースへと復帰したところ、タイヤバーストの余波でダメージを負っていたか、デュバルのアウディRS5 DTMのリヤカウルの破片が脱落。そのデブリ除去のため9周目に2日連続でセーフティカー(SC)導入となった。
SCピリオド中の11周目には、前日DTM勢最上位を記録したAudi Sport Japan RS5 DTMのブノワ・トレルイエがピットへ。ルーティンを終えて再度のインディスタートで上位進出を狙う戦略を採る。
12周目突入時点でSCが明けると、一時は4ワイドとなったNSX-GT同士のバトルを制して、インサイドを守ったカーティケヤンが首位をキープ。4番手だったKEIHIN塚越が陣営内で2台を出し抜き、2番手に上がってくる。
このあおりで4番手までポジションを落としたRAYBRIG山本も、ダンロップでMOTUL MUGEN中嶋のインを差し3番手にカムバック。しかし14周目にはラストランの意地を見せる大祐が逆襲。さらに、リスタート時には12番手にいたBMW M4 DTM小林可夢偉も、8番手にまで浮上するバトル巧者のテクニックを披露する。
各車ルーティンのピットウインドウが迫るなか、15周目にはDTM勢のBMWウィットマンとAudiラストがタイヤ交換へ。続く16周目にはGT500勢も追随し、RAYBRIG山本、ARTA NSX-GT野尻智紀、KeePer TOM’S LC500平川亮、ZENT CERUMO LC500石浦宏明、MOTUL AUTECH GT-R松田次生らがピットへ。
続くラップでカーティケヤン、塚越もピットへ飛び込み、18周目まで引っ張った大祐がタイヤ交換に向かうと、コースへ復帰したMOTUL MUGEN NSX-GTのすぐ背後にModulo Epson NSX-GTが迫ってくる。
1周先行してピット作業を行っていてタイヤのウォームアップなったカーティケヤンは、難なくMOTUL MUGEN中嶋をパスして、NSX勢最上位を奪還。その後、中嶋は後続にも飲み込まれ苦しいアウトラップとなってしまう。
さらにその直後、20周目のホームストレートで今度はDTM王者を悲劇が襲い、デュバルとまったく同じ症状で左リヤタイヤがバースト。わずか5ラップ前に交換したフレッシュタイヤが早くもトラブルを起こすなど、木曜のテスト走行時にも発生したAudi RS5 DTM特有の症状に見舞われてしまった。
このタイミングでピットを引き延ばしていたWedsSport ADVAN LC500国本雄資や、BMWの小林可夢偉、カルソニック IMPUL GT-Rのジェームス・ロシターらが続々とピットへ。ストレート上に転がるデブリの撤去で、ふたたびSCが導入されるのを見越した動きを見せる。
すると、16周目にルーティンを終えていたRAYBRIG山本もトラブル発生か2度目のピットへと入り、直後のSCコールで最後尾付近にまで下がってしまう。
25周目突入時点でリスタートが切られると、残るレース時間は約10分ほど。アウディのトレルイエ、今回はBMW M4 DTMをドライブするパラリンピック金メダリスト、アレッサンドロ・ザナルディの2台を先頭に1コーナーへと飛び込み、各車なんとかクリアしていくと、高速コカ・コーラ・コーナー脱出以降、レースは大波乱の様相を呈していく。
このコカ・コーラ・コーナーでは、リスタートで4番手にいたKEIHIN塚越が、車列中団に飲み込まれて行き場を失い、Modulo MUGEN中嶋と接触してコントロールを失い、左斜め前方にいたARTA野尻にヒットして2台ともにマシンを破損してストップ。
さらにセクター3の13コーナーではKeePer平川を除くレクサス勢、WedsSport ADVAN LC500、WAKO’S 4CR LC500、au TOM’S LC500、ZENT CERUMO LC500、DENSO KOBELCO SARD LC500のレクサス5台が絡むマルチクラッシュが発生してしまった。
この混乱のなか、リスタート時点で10番手だったBMWの可夢偉がジャンプアップに成功。アウディのデュバルとお互いのマシンパーツを跳ね飛ばしながらの3番手争いを繰り広げる。
しかしコース上に散乱したデブリのため、残り5分を切るところでこの日3度目のSC導入が決まると、そのまま先導中に55分のレースリミット時間が経過。リスタートは切られるものの、インディ方式ではなく1列隊列で最後の1周、超スプリントのファイナルラップに突入する。
Modulo NSXカーティケヤンを先頭に、BMWウィットマン、アウディのデュバル、BMW可夢偉、そしてMOTUL NSX大祐のトップ5で1コーナーへ突入すると、4番手可夢偉がわずかに失速したことで優勝争いは実質トップ3に絞られていく。
逃げるカーティケヤンの背後で最後のマッチアップとなったDTMのウィットマンとデュバル同士は、ダンロップの進入からGRスープラ・コーナーまでサイド・バイ・サイドでラインを入れ替えながら駆け上がってくると、お互いに進路を譲らず火花を撒き散らしながら最終コーナーへ。
インを取ったBMWウィットマンがデュバルのAudiをコース外に弾き飛ばすと、負けじとスロットルを踏み続けたデュバルがランオフエリアを加速して並びかけるようにコースへと復帰すると、そのまま並走して強烈な中間加速で前に出てデュバルが2位でチェッカー。今季のDTMチャンピオンマニュファクチャラーであるアウディ陣営として、意地と底力を見せつけるフィニッシュとなった。
しかし、直後にレースコントロールから迅速なペナルティ裁定が出され、トラックリミット違反のデュバルには1秒加算のタイムペナルティ。これでウィットマンに先行を許したものの3位表彰台は確保。GT500初優勝のナレイン・カーティケヤン、2位にバースデイ・ポディウムのウィットマンが並ぶ表彰台となった。
記念すべき試みとして初のイベントを終えたスーパーGT×DTM特別交流戦。DRSやプッシュ・トゥ・パスを封じられ最高速に苦しんだDTM勢に、タイヤ習熟で未知のセットに挑戦したGT500勢。その結実が、随所で火花を散らすバトル満載のイベントとして目の前で繰り広げられ、未来に向け大いに期待が高まる週末となった。
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