積算2万829km 本来とは異なる領域へ能力を拡大
オフロードが得意だとしても、ランボルギーニ・ウラカン・ステラートとランドローバー・レンジローバーは根本的に異なる。顧客が富裕層なことくらいしか、共通点はないかもしれない。たとえ、吸気用のシュノーケルが付いていても。
【画像】英国人の共感を呼ぶSUV 新型レンジローバー スポーツとイヴォーク ディフェンダーも 全119枚
ところが俯瞰すると、まったく別の乗り物ではないことも見えてくる。筆者は先日、その斬新なオレンジ色のランボルギーニをお借りして、少し長めのドライブを楽しんだのだが、レンジローバーと共通するテーマがあることを発見した。
それは、2台とも本来の成り立ちとは異なる領域へ、能力を広げていること。しかも、これまでになく高い水準で。
ウラカン・ステラートはミドシップのベビー・ランボルギーニだが、アウディA6 オールロードへ負けないくらい、不整地との相性が良い。メカニズムを可能な限り路面の近い位置へレイアウトする、スーパーカーがベースだと考えると、驚かずにはいられない。
かたや、レンジローバーは世界トップクラスの走破性を備える大型SUVだ。それでいて、メルセデス・ベンツSクラスへ負けないくらい、快適に移動もできる。
ロールス・ロイスより静かな車内
レンジローバーにはエアサスペンションが組まれ、オフロード・モードを選択すると車高が135mmも高くなる。ウラカン・ステラートが、その下をくぐれそうなほどに。一方でアクセス・モードを選ぶと、50mm低くなり乗降性を改善してくれる。
レンジローバーは、Sクラス並みに豪華で頼もしくもある。特に市街地を走行中の車内は、頑丈な金庫のよう。ウラカン・ステラートをお借りした英国のディーラー、HRオーウェン社のスタッフも、見事に平静な雰囲気へ魅了されていた。
その静かさは、実際の数字に現れている。レンジローバー D350で以前に計測したところ、車内のノイズは48km/hで52dBA。Sクラスのプラグイン・ハイブリッド、S 580eは同じ速度で54dBAあり、ロールス・ロイス・ファントムでも53dBAと少しうるさい。
ボディが大きく、高速域では風切り音が大きくなるが、直列6気筒エンジンはささやくように僅かな燃焼音を響かせるだけ。加えて、車高が高いことで外界との隔離性も高く、金庫のような雰囲気を強めている。
こんな印象を支えているのが、エアサスペンション。巨大なホイールを滑らかに転がす能力は、他ブランドが真似できないような水準にある。目を閉じて乗ると、ここまでしっとり重厚感を伴って前進できるモデルは、唯一だと理解できる。
悪天候でこれ以上のクルマは思い浮かばない
コーナーでのボディロールは、確かにSクラスの倍ほど大きい。しかし、穏やかに制御され、安心感は損なわれない。活発に走らせた時の第一印象は、本当に秀抜。特に悪天候の場合なら、これ以上のクルマは思い浮かばないだろう。
ただし、完璧ではない。アスファルトが剥がれた穴や、速度抑制用のスピードバンプを処理する方法には、もう少し上質さがあってもいい。条件によってはウラカン・ステラートの方が巧みなことが、なんとも惜しい事実だ。
積算2万1162km 高めのドライビングポジション
ランドローバー・レンジローバーのドライビングポジションは、かなり高い。だが、先日試乗したイネオス・グレナディアは、更に高かった。
コイルスプリング・サスペンションのグレナディアは車高自体が高く、シートの位置もフロアから高い。実際に乗り込んでみると、トラックのよう。なんともワイルドだった。
積算2万3737km 違う印象を生むアームレスト
筆者が知っている限り、レンジローバーのフロントシートへアームレストが付くようになったのは、1994年の2代目から。地味なアイテムながら、大型SUVの運転席として、うれしい装備だと思う。
肘を載せたゆったりした運転姿勢は、ランドローバーのドライビング体験へ期待するものの1つ。高速道路を巡航している時間も、郊外の一般道を飛ばしている場面でも、他のモデルとは違う印象を生んでくれる。
テストデータ
気に入っているトコロ
コンセント:センターコンソールの後ろに、クーラーボックスやノートパソコンの電源が取れる、コンセントが付いている。便利な装備だ。
気に入らないトコロ
ウインカーのカチカチ音:左方向へウインカーを出すと、毎秒1回程度のペースでカチカチと鳴る。右方向へ出すと、その倍近い速さでカチカチと鳴る。なぜペースが違うのか不思議。
テスト車について
モデル名:ランドローバー・レンジローバー P440e オートバイオグラフィー(英国仕様)
新車価格:13万4865ポンド(約2495万円)
テスト車の価格:13万6900ポンド(約2532万円)
テストの記録
燃費:10.1km/L
故障:なし
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