自動車業界は現在「100年に一度の大変革期」と言われている時期となっていることもあり、パワーユニットもカーボンニュートラルに向けた電気自動車の普及促進をはじめとした電動化が急速に加速している。
しかし、電動化によるライフサイクルアセスメントと呼ばれる製造から廃棄までという長期的に見た環境負荷など議論すべき点も多く、「本当にエンジン車をなくしていいのか?」と感じている方も少なくないだろう。
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またスポーツエンジンであれば、日本車に搭載されたものにも「自分の子供たちにも乗って欲しい、次世代に残したい」と思う名エンジンがあるのも事実。
こうしたエンジン(を搭載したモデル)を本当になくしていいものなのか? そんな名残惜しい、次の世代に残したニッポンの名エンジンを紹介していきたい。
文/永田恵一
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部 トヨタ 日産 ホンダ スバル 三菱
【画像ギャラリー】NA、ターボ、ロータリー、水平対向、今のうちに乗っておきたい名エンジン搭載車
■トヨタ/4A-GE+AE86型カローラレビン&スプリンタートレノ(1983年)
4A-GE型エンジン(1983年)。排気量は1587cc。1気筒4バルブで、T-VIS(トヨタ バリアブル インダクション システム)やEFI-Dなどを組み合わせている
■エンジン形式:1.6リッター直列4気筒DOHC
■搭載車種:80系から110系までのレビン&トレノを含むカローラ系、初代MR2、カリーナなど
■登場時のスペック:130ps/6600rpm、15.2kgm/5200rpm(グロス値)
AR86型カローラレビン。2ドアと3ドアのモデルを設定した(写真は3ドア)
4A-GEはそれまで1.6リッター級スポーツエンジンとして使われていた2T-G系の後継エンジンとして、1983年にカローラ&スプリンターが80系にフルモデルチェンジされた際に登場した。
4A-GEは当時の庶民にはまだ高嶺の花だったDOHC4バルブというエンジンを、若者にも買えるカローラ&スプリンターといったモデルに搭載した功績は非常に大きかった。
特にカローラ&スプリンターでは最後のFR車として4A-GEを搭載したAE86型のレビン&トレノは当時でもいいクルマとは言えなかったのも事実だが、全体的にシンプルなクルマだったことなども幸いし多くのドライバーを育てるなど、今でもファンの多いモデルとなっている。
AE86型スプリンタートレノ。レビンと同様に2ドアと3ドアを設定(写真は3ドア)
また4A-GEは登場後、ハイオクガソリン化による140ps仕様(1989年の90系カローラ&スプリンターのマイナーチェンジ)、5バルブ&4連スロットル+可変バルブ機構VVTの160ps仕様(1991年のカローラ&スプリンターの100系へのフルモデルチェンジ)。
最終進化版となる165ps仕様(1995年のカローラ&スプリンターの110系へのフルモデルチェンジ)と、市販状態での改良が積み重ねられた点も大きな魅力で、改良されたエンジンがAE86などへスワップされることもよくあった。
さらに4A-GEはレースをはじめとしたモータースポーツでも使われたエンジンだっただけにアフターパーツが豊富なことに加え、プライベーターでも比較的手が加えやすい点も愛されている大きな理由で、AE86ユーザーの支えもあり未だに新しいパーツが開発されるなどの進化が続いているほどである。
■日産/RB26DETT+R34型スカイラインGT-R(1999年)
R34GT-RのファイナルモデルのニュルのRB26DETTエンジンはN1仕様をベースに専用チューニングが施されていた。ゴールドのヘッドカバーが特別感を強調
■エンジン形式:2.6リッター直6DOHCツインターボ
■搭載車種:R32型からR34型までのスカイラインGT-R、初代ステージア260RS
■登場時のスペック:280ps/6800rpm、40.0kgm/4400rpm
1999年1月に8代目となるR34型スカイラインGT-Rがデビュー。前期型のVスペック、後期型のVスペックII、ファイナルバージョンのVスペックIIニュルなど、さらに走りを磨いたモデルも設定
RB26DETTは1989年登場のスカイラインとしては8代目モデルとなるR32型で最強のGT-Rが17年ぶりに復活するにあたり開発されたエンジンである。
R32型GT-Rは当時のグループAレース制覇を目標としたモデルだっただけに、グループAレーシングカーがターゲットとした600psに対応する強さや6連スロットルに代表されるメカニズムに加え、市販状態でも官能的なサウンドと回転フィールを持つ点も大きな魅力だった。
なお、2600ccという中途半端に見える排気量は、グループAレースでの最低重量やタイヤサイズといったレギュレーションから最適となるものとして選ばれたものである。
1999年に登場したRB26DETTを搭載したスカイラインGT-Rとしては最後となるR34型は、R32型からR34型までのRB26DETT+アテーサET-Sというパワートレーンを搭載する第二世代スカイラインGT-Rの集大成という点が最大の魅力である。
R34型スカイラインGT-Rのリアフォルム。R33型で大きくなったボディをスリムにして、張り立たせた前後フェンダーによってスポーティなフォルムを形成
ノーマル状態でのサーキットのラップタイムに代表される速さはインプレッサWRX STIやランサーエボリューションの台頭もあり、日本一とはいえなくなっていたが、ボディ剛性の高さやVスペックに採用されたディフューザーなどの空力パーツも貢献した安心感の高さはR34型スカイラインGT-Rらしい世界観だった。
また、RB26DETTもアフターパーツの豊富さにより、現代のパーツを使えば600馬力程度を出すことはそれほど難しくない。
さらにHKSが「600psをキープしながら、現在の厳しい排ガス規制をクリアし、WLTCモード燃費もリッター20kmを目指す」というRB26DETTの開発に着手しているなど、いまだ進化が続いている点も大きな魅力だ。
■日産/VR38DETT+現行R35型GT-R(2007年)
VR38DETTエンジン。2020年モデルでは、「NISSAN GT-R NISMO」に採用したレスポンス向上に貢献するターボ高効率化技術「アブレダブルシール」を採用
■エンジン形式:3.8リッターV6ツインターボ
■搭載車種:現行R35型GT-R
■登場時のスペック:480ps/6400rpm、60.0kgm/3200~5200rpm
2020年モデルではボディカラーに写真のワンガンブルーを新色として設定
2007年にGT-Rが復活するにあたり新開発されたVR38DETTは「レーシングテクノロジーを最大限市販車に盛り込んだエンジン」である。
その代表的な技術、特徴としては燃焼温度を上げるためエンジンブロックの補強材である鉄製のライナーを廃止し、その代わりプラズマコーティングを施し燃費とパワーを同時に向上させた点。
グループCカーに搭載された3.5リッターV8ツインターボエンジンのようなパワーバンドの広さ、200km/h巡行でも排ガスはクリーンエアで走行できる点が挙げられる。
さらにVR38DETTは毎年のように改良を受け、現在では基準車でも570馬力までパワーアップされているというポテンシャルの高さも大きな魅力だ。
2020年モデルでは、職人が一つ一つ手作りで加工した青く輝くチタン製のマフラーを採用。新デザインのホイールとともに存在感を高めている
現行GT-Rの魅力は0~100km/h加速やニュルブルクリンクのラップタイムに代表される速さだけでなく、「300km/hで巡行しながら会話を楽しめる」、「一週間分の荷物二人分が積めるユーティリティ」、「雪もOK」というマルチパフォーマンススーパーカーというコンセプトを実現している点。
さらに、法規を大きく超えたスピード域での衝突安全性といったGT-Rだけの世界、個性を持っていることだ。それだけにこれだけのクルマが今後出ることは世界的に見ても、もうないのはないだろうか。
■ホンダ/B18C 96 spec.R+初代インテグラ タイプR(1995年)
タイプR専用に開発されたB18C 96 spec.Rエンジンの最高出力200ps/8000rpmは自然吸気エンジンとして当時、世界最高峰のリッター当たり111psを実現
■エンジン形式:1.8リッター直4DOHC
■搭載車種:初代インテグラ タイプR
■登場時のスペック:200ps/8000rpm、18.5kgm/7500rpm
初代インテグラ タイプR。3ドアクーペと4ドアハードトップを設定した(写真は3ドアクーペ)
初代NSXに続く「身近なタイプR」というコンセプトで初代インテグラ タイプRが開発されるにあたり、エンジンもベースとなる標準のDC2型インテグラに搭載されていたB18Cに大幅に手を加えたものとなった。
具体的には圧縮比の向上、吸排気系の変更、バルブシート部分のポート研磨(初期モデルでは手作業)などが施され、出力は180psから200psに向上しており、初代インテグラ タイプRは「レーシングエンジンを搭載した市販車」といっても過言ではないモデルだった。
初代インテグラ タイプRのエンジンは1.8リッターというそれなりの排気量があったこともあり中低速域の太いトルクと、VTECが高速カムとなる高回転域での爆発的なパワーを伴いながら官能的なサウンドを奏でるという、全回転域で楽しめるエンジンに仕上がっていた。
タイプR専用となる、フロントチンスポイラーとリアスポイラーを装着
また初代インテグラ タイプRはクルマ自体も鋭い切れ味とクルマの状態を正確に伝えてくれる豊かなインフォメーション、高いコントロール性をバランスさせており、まとめるなら「レーシングカーの市販車版」という言葉が相応しい素晴らしいクルマだった。
■マツダ/13B-MSP+RX-8(2003年)
RENESISは次世代を担うマツダのロータリーエンジンとして開発され、RX-8に搭載。マツダ初のサイドポート方式を採用しながら、RX-8にしか搭載されなかった
■エンジン形式:NA2ローターロータリー
■搭載車種:RX-8
■登場時のスペック:250ps/8500rpm、22.0kgm/5500rpm
歴代RX-7は2ドアだったが、RX-8は実用性も考慮した4ドアを採用
2代目RX-7から搭載されていた13Bロータリーエンジンはターボだったこともあり、得られるパワーの割にサイズが小さい点などスポーツカーには向いた面の多いエンジンだった。
その反面でアクセル操作に対するレスポンスの悪さ、燃費や排ガスといった環境性能といった課題も多く、ロータリーエンジンを存続させるべくRX-8の登場を期に開発されたのがNAの13B-MSPである。
RX-8の観音開きドア。4人乗りの居住性を備え、小さい子供がいるファミリーのお父さんでもスポーツカーに乗ることができた
13B-MSPはNA化に加え、サイド排気などの新技術の採用により排ガス規制のクリアと良くはないものの許容できる範囲まで燃費を向上させ、ロータリーエンジンを存続させた。
フィーリングもよく「モーターのように回る」と表現されるロータリーエンジンの魅力がNA化でより際立っており、好みは分かれるようだが、RX-8に乗っていた時期がある筆者はこのロータリーエンジンが大好きだった。
RX-8のリアフォルム。観音開きドアはフロントドアを開けないとリアドアが開けられないなど、多少不便な面もあった
RX-8自体も速さこそそれほどではなかったが、サスペンションをはじめクルマの質もなかなか高く、観音ドアには不便な面もあるにせよ「家族でも乗れるスポーツカー」として魅力的な存在だった。
■三菱/4G63ターボ+ランサーエボリューションIX MR(2006年)
チタンアルミ合金製タービンホイールとマグネシウム合金製コンプレッサーホイールを組み合わせた、4G63型MIVECエンジン
■エンジン形式:2リッター直4DOHCターボ
■搭載車種:IXまでのランサーエボリューション、ギャランVR-4など
■登場時のスペック:280ps/6500rpm、40.8kgm/3000rpm
2006年8月に登場したランサーエボリューションIX MR。Mitsubishi Racingを意味するMRのネーミングを冠した熟成型で4G63ターボエンジンを搭載する最後のモデルとなる
4G63型エンジンはもともとの設計こそ1980年代前半という古いエンジンだが、ロングストロークなことも生かした太い中低速トルクを備えていたのに加え、ギャランVR-4とIXまでのランサーエボリューションというモータースポーツ参戦ベース車への搭載により、年々性能を高めていった。
その集大成となるのが9.5と呼ばれることもよくあるランサーエボリューションIX MRに搭載されたもので、4G63ターボはエボIXから可変バルブタイミング機構MIVECを備えていたこともあり、武器だった中低速トルクが一層太くなっていた。
サーキットで乗った際には「ロケットのような加速」と感じたことがある。
また4G63ターボは設計が古いエンジンのためブロックが「重いけど強い」鉄製のため、チューニングへの対応力が高いことも大きな魅力だった。
ランサーエボリューションIX MRのリアフォルム。セダンがGSRとRS、ワゴンがGTとGT-Aそれぞれ2グレードずつ合計4グレードが発売された
ランサーエボリューションIX MRはクルマ自体も4G63ターボを搭載したランサーエボリューションとしては完熟といえる仕上がりで、ランサーエボリューションをピュアなスポーツモデルとして見るならIX MRがベストな存在に違いない。
■スバル/EJ20ターボ+VAB型WRX STI(2014年)
モータースポーツで性能と信頼性を磨き上げ てきた、 2リッター水平対向ターボのEJ20ターボエンジン
■エンジン形式:水平対向4気筒2リッターターボ
■搭載車種:WRX STI、4代目までのレガシィなど
■登場時のスペック:308ps/6400rpm、43.0kgm/4400rpm
ドイツのニュルブルクリンク・サーキットなど、世界各国の様々な走行条件下で 走行性能を鍛え上げたVAB型WRX STI
10年ほど前までスバルの主力エンジンとなっていたEJ型は文字通り「社運を賭けた」といえる初代レガシィとともに1989年に登場し、特に初代レガシィRSとインプレッサ時代も含めたWRX STIに搭載されていたEJ20ターボはランサーエボリューションとの戦いもあり、エンジンも切磋琢磨しながら成長していった。
EJ20ターボはランサーエボリューションの4G63ターボとは対照的にクルマへの搭載要件もありストロークが短かったこともあり、特に初代インプレッサ時代のものだと「中低速トルクに欠ける代わりに高回転域では爆発的なパワーを発揮する」という性格だった。
そのためランサーエボリューションに比べると運転はWRX STIの方が難しい傾向だっただが、「乗りこなせたときの歓びはWRX STIの方が上」という意見も多かった。
EJ20ターボ搭載車も最終型となった2014年登場のVAB型WRX STIの魅力は高い。EJ20ターボは2007年登場のGRB型から高回転域での爆発的なパワーを若干抑えられたものの、その代わり4G63ターボほどではないにせよ中回転域のパワーが厚くなっており、扱いやすいエンジンとなった。
ディフューザー一体型バンパーやツインデュアルタイプのテールパイプを採用した、 WRX STIのリアフォルム
またクルマ自体もサーキットの速さに代表される絶対的な速さは2代目のGDB型がピークだったと思うが、ロードカーとしての質感は新しいモデルほど高まっている点も大きな魅力だ。
2019年にVAB型が最終モデルとなったことでEJ20ターボも姿を消してしまったが、2019年まで30年に渡ってEJ20ターボが進化を続けながら続いたことには大きな拍手を送りたい。
■まとめ
スポーツカーには高性能エンジンが不可欠
今後新しいスポーツエンジン、特にNAのものが登場するという可能性は極めて低いだけに、欲しい人は今のうちに自分のものにし、すでに持っている人も含め末永く大切に乗って、名機の魅力を後世に伝えてほしい!
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みんなのコメント
ホンダだとZCエンジンも高評価だったと思う。