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電動化はクラシックカーを救う? フィアット・ヌォーヴァ500 EV ロンドンの中心で体験(1)

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電動化はクラシックカーを救う? フィアット・ヌォーヴァ500 EV ロンドンの中心で体験(1)

共感を得つつあるエレクトロモッド

ロンドンでも、フィアット・ヌォーヴァ500は珍しい。子どもが指でさしながら、クルマを見ている。

【画像】電動化はクラシックカーを救う? フィアット・ヌォーヴァ500 EV オリジナルの500と600 現行の500eと600eも 全145枚

青信号で走り出す。通常なら、空冷2気筒のポップなエンジン音が放たれるところだが、勢いよく無音で加速していく。「うわ、電気自動車だ」。周囲の人が驚くのがわかる。

このフィアット以上に、多くの共感を得られる見た目のクルマは少ない。パステル・ブルーのボディは、今見てもスタイリッシュでカッコイイ。BMC時代のミニも同様にクラスを超えた魅力を湛えるが、イタリアンな優雅さには及ばないだろう。

ただし、通常のヌォーヴァ500が生み出す排気ガスは、21世紀に歓迎されるものではない。でも、今回ご紹介する1台なら大丈夫。走行時はCO2を排出せず、騒音で周囲に不快な思いをさせることもない。電動化されているからだ。

今日のように、地中海沿岸を思わせる陽気の日にはピッタリ。サイドウインドウを下げ、カンバストップを後ろに巻けば、ドライバーはコミュニティの一部になれる。クルマ嫌いのご婦人も、受け入れてくれるだろう。

数年前まで、電気自動車へのコンバージョン、エレクトロモッドは、一部の人による風変わりな仕事に見られてきた。しかし、最近は共感するクルマ好きが増え、市場規模も大きく膨らんでいる。

それでも、電動化はクラシックカーの魅力を未来へ届ける本当の解決策なのか、という疑問は残る。そんなわけで、実際に小さなヌォーヴァ500 EVをお借りし、ロンドンを巡ってみることにした。

時期尚早だった電動化事業のスタート

ロンドンの西、モートレイクに拠点を置くクラシック・クローム社は、2017年からエレクトロモッドしたクルマを販売してきた。1957年に発売された、フィアット・ヌォーヴァ500をベースにして。

見た目は、可能な限りオリジナルが保たれている。今日のクルマは1967年式の500 F で、マフラーが下から突き出ていないことが、外観上の唯一の違いといっていい。

車内を観察すると、ダッシュボードの下にバッテリーの残量を示すメーターが追加されている。ハンドブレーキ・レバーの下に、電気ヒーターの効きを選ぶダイヤルが備わる。それ以外は、見慣れた景色だ。

「ロンドンで沢山のフィアット500を改造することは、素晴らしいんじゃないかと考えたんです。メディアからも関心を寄せていただきました。しかし事業は軌道に乗らず、最近はコンバージョン・キットの販売が中心です。ちょっと高すぎたのでしょう」

クラシック・クローム社を創業した、ゲイリー・ショート氏が説明する。ライバルは、内燃エンジンを積んだままのヌォーヴァ500だそうで、一般的には1万ポンド(約181万円)前後は安く購入できる。

2017年頃の価格は、2万6995ポンドだった。殆ど原価に近かったというが、最近は駆動用バッテリーのコストが上昇し、もっと高くなるだろうと話す。

現在は、ポルシェやジャガーのレストアとレストモッドへ、事業の軸を戻している。バッテリーEVは新車でも普及のただ中にあり、クラシックカーのエレクトロモッドは、時期尚早だったのかもしれない。

最高出力はオリジナルの4倍近く

「クラシックカーを路上で楽しみ続ける唯一の方法が、電動化かもしれません。しかし、わたしが生きている内はまだ大丈夫なようですね」。とショートが笑う。

ダッシュボードに刺さったキーを時計回りに回すと、電気的なハミングが聞こえ出す。これで発進準備は完了。駆動用モーターの回転をリアアクスルへ伝えるため、オリジナルのトランスミッションは残されているが、基本的にシフトチェンジはいらない。

発進は2速のままでOK。アクセルペダルを踏めば、スルスルと加速していく。バックするには、リバースへ入れる必要がある。

静かなヌォーヴァ500 EVの運転は、奇妙な体験だ。周囲の人も不思議そうに眺めてくる。パワーデリバリーは滑らかに調整され、一部のエレクトロモッド例のように、突然突き動かされるようなことはない。

アクセルペダルを踏み込むと、1秒ほどの緩やかな加速を挟んで、勢いが増していく。とても機敏に走る。

駆動用バッテリーはテスラのものが流用され、駆動用モーターの最高出力は66ps。車重は増えているが、オリジナルの4倍近くパワフルだから、カリカリに改造された内燃エンジンのヌォーヴァ500を持ってきても、加速性能では太刀打ちできないだろう。

ロータリー交差点を旋回するだけで楽しい

東へ進み、ハイドパーク手前のケンジントンを目指す。エンジン音がしないぶん、普段は聞こえないノイズが車内へ響く。トランスミッションがメカノイズを放ち、駆動用モーターのハミング音はウインカーの点滅で変化する。

ある程度スピードが増すと、足まわりやシャシーからのきしみが目立ち始める。低速域では、重いステアリングラックも唸る。駆動用バッテリーは、フロントアクスルの上。増えた車重へ対応するため、フィアット126用のサスペンションが組まれている。

20km/h程度で、ステアリングはそこそこ軽くなる。それでも力は必要で、電動パワステが欲しくなる。レシオはクイック。狭い路地へ曲がったり、ロータリー交差点を旋回するだけで、すこぶる楽しい。

キビキビと向きを変えながら、ヌォーヴァ500 EVはサウス・ケンジントンへ。クラシックカー・ディーラーのピーター・ブラッドフィールド社の建物が見えてくる。戦前のベントレーやインヴィクタが、敷地へ並んでいる。

「もし彗星が地球に衝突する時が来たら、これらのオーナーは、最後の瞬間までステアリングホイールを握っているかも。でも、ガソリンを将来的に入手し続ける方法までは、まだ心配していません」。代表のピーター氏が笑う。

新型コロナウイルスの流行やロシアのウクライナ侵攻などを経て、今後20年間はエネルギー政策の予想は難しいだろうと彼は話す。水素の可能性も指摘する。「ガソリンは高価になり、購入も難しくなるでしょう。でも、一定の需要は残るはずです」

この続きは、フィアット・ヌォーヴァ500 EV ロンドンの中心で体験(2)にて。

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みんなのコメント

1件
  • 葛葉恭次
    オイル撒き散らかすのが持ちネタと勘違いしたバカ記者とそういうチャンガラ貸し出すバカ車屋にも教えてあげなよ☆
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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