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新旧スーパーカブ110比較試乗「新エンジンやキャストホイールで走りはどう変化した? カブらしさは継承されている?」

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新旧スーパーカブ110比較試乗「新エンジンやキャストホイールで走りはどう変化した? カブらしさは継承されている?」

従来型スーパーカブ110(JA44)オーナーが比較試乗

新エンジンの採用や足まわりが大きく変更された新型スーパーカブ110が2022年4月に発売となった。ホンダの公式発表としては単なるモデルチェンジとなっているが、型式の変更も行われている。
キャストホイール&フロントディスクブレーキとなっている以外、一見違いはないようにも見えるが……走りはかなり変わっているのだろうか?

【画像19点】同アングルで徹底比較!新旧カブ110のエンジン、メーター、足まわりはどう違う?

長年ホンダの二輪広報としてスーパーカブを見守りつづけ、従来型スーパーカブ110(JA44)を愛車とする高山正之さんに、新旧スーパーカブ110を乗り比べてもらった。

新型スーパーカブ110のエンジンは、よく見ると外観も結構違う

新型スーパーカブ110、JA59型のファーストインプレッションは「爽快!スーパーカブ」でした。
振動を抑え、少し排気量を増したと錯覚するような力強さ、そして制動時の安心感を飛躍的に高めたABS付きのフロントディスクブレーキなどがライダーに余裕をもたらした結果だと思います。私は従来型になってしまったJA44型の60周年アニバーサリーに乗っていますので、オーナーの視点で新旧の比較を紹介していきます。

試乗の前に予備知識として、諸元値と外観をチェック。エンジンは新設計で、現行型グロムから採用が始まり、スーパーカブC125、モンキー125、ダックス125に使われるエンジンがベースになっているとのこと。
外観ではクランクケースカバーの違いのほかに、エキゾーストパイプの取り回しやキャタライザー部が大きくなっています。ボア・ストローク値の変更に伴う出力特性に合わせるとともに、排ガスの浄化性能もアップしているはず。
また、シフトペダルやブレーキペダルの形状も異なるなど、さまざまな変更が施されているのも確認できました。

キャストホイールとチューブレスタイヤは、軽快感やしなやかさにどう影響するのかも気になるところ──。

■新型スーパーカブ110(JA59型)
2022年4月14日に発売された新型スーパーカブ110(JA59型)。価格は30万2500円。キャストホイールとフロントブレーキ以外に外観上で大きく違う部分でいうと、新型ではリヤキャリヤが黒くなっている。
排気量は従来型同様の109ccでOHC2バルブであるのも変わらないが、ボアストローク47.0×63.1(各mm)となった新エンジン。最高出力は8ps/7500rpmで従来型と同値。一方最大トルクは向上しており0.9kgm/5500rpmの性能。各ギヤ比、一次減速比も変更されている。
純正装着タイヤはフロントがIRC「NF63B Y」でサイズは70/90-17、リヤがIRC「NR78 Y」で80/90-17。サイズ自体は従来型と変わらないが、チューブレスタイヤとなった。キャスター27度30分、トレール量73mmの数値は従来型と同じ。
タンデムステップの形状も従来型とは異なっている。

■従来型スーパーカブ110(JA44型)
従来型スーパーカブ110(JA44型)。テスト車は2020年型で、価格は28万500円。JA44型となったのは中国生産から日本生産に戻った2017年型から。ただし灯火基準の規制変更に適合するため、2020年型でマイナーチェンジが行われている。
従来型スーパーカブ110のエンジン。ボアストローク50.0×55.6(各mm)で、最高出力8ps/7500rpm、最大トルク0.87kgm/5500rpmの性能。外観的な特徴で言うとシリンダーヘッドの天面にフィンが無いほか、クランクケースカバーの丸い部分(HONDAの文字が描かれている箇所)に放射状の切れ込みがある。
純正指定のタイヤはフロントがチェンシン「CST C-6016」、リヤがチェンシン「CST C-6016R」でチューブタイヤ。

力強い走りのエンジン、それでいて振動が少なくなっている!

セルで目覚めたエンジンは、ドゥルルルルといった感じで低く粘りのある排気音です。スナッピングするだけで力強さを感じます。スタートして1速、2速とシフトアップしていくと、低速域が頼もしくなったのを実感。そして、下ろしたての新車にも関わらず、シフトチェンジもスムーズかつ確実性がアップしたように感じました。
4速で多用する50km/h、60km/hでのクルージングでは、振動はほとんどありません。
比較用のJA44型(従来型・2020年式)では、特に60km/hでハンドル、シート、ステップに不快な振動が発生しました。「これがスーパーカブ」と割り切っていたのですが、明らかな違いはどなたでも実感できるはず。

車体の剛性感も高まっている印象

4速で40km/hから60km/hまでの加速は、タイムを計ったわけではありませんが、新型のほうがぐいぐい引っ張っていくような力強さが。
車体では、フロント周りの剛性が高くなり安心感が増しています。コーナリングもニュートラルで違和感は全くありません。ブレーキは「良く効く」の一言。これならパニックブレーキ時も安心でしょう。

振動の少なさは、確実なシフトアップにもプラスになります。私のJA44型では、4速で走行していると振動の多さで「3速でエンジンが回りきっている」と勘違いし、シフトアップ操作をしてしまうことが度々あります。3年も乗っているのですが、未だに慣れません。新型の試乗中は、シフトミスは一度もありませんでした。
ちなみにメーターに新たにギヤポジションが採用されましたが、これは一切見ていません。

新型エンジンのボア×ストロークは、47.0×63.1(各mm)で、ボア・ストローク比は1.34という超ロングストロークです。排気量、タイプとも全く違うGB350はロングストロークエンジンとして有名ですが、ボア・ストローク比は1.29です。対する新型スーパーカブ110は1.34、いかにロングストロークなのかが分かります。
ロングストローク、イコール低速重視と思われがちですが、JA59は高速でも伸びの良い走りを見せてくれました。

キャストホイール化でチューブレスタイヤになったのは大きなメリット

走行感覚の比較は抽象的ですが、JA44型はしなやかで、JA59型はスポーツ性をプラスした「カシッ」というイメージ。
特に新型は、チューブレスタイヤとディスクブレーキの採用で、長距離ツーリングを楽しむ人にとっては大きな魅力だと思います。

私の愛車にはパンクに備えてチューブと修理キットを積んでいます。
今まで幸運なことに使ったことは無いのですが、チューブタイプで走行中にバンクの気配を感じた時の不安感から解消されますから、この足まわりを移植したいと思いました。

外観面においてスポークホイールとキャストホイールは好みが大きく分かれるところでしょう。ただ、法規制によりCBSまたはABSを装着する段階で、キャストホイールとディスクブレーキの採用が最も有効な手段だったと思います。キャストホイールも徐々に支持されていくのではないでしょうか。

従来型比2万円アップをどう考えるか

最後に価格についての持論です。キャタライザー部が大きくなったことは、直接コストアップにつながります。キャタライザーには高価な材料が使われていますので、見えないところにお金がかかっている訳です。そしてメーターは新たな電装設計によって、時計など欲しかったものがプラスになりました。
原材料高騰の時代で2万円アップに留めることができたのは、開発陣が相当苦労をした結果なのだと思います。

スーパーカブ110の宿命は、ビジネスでも使われることを考慮して「お求めやすい価格で提供すること」ですから、今回のモデルチェンジはぶれることのない正常進化でしょう。2万円であの安心感を買えるのは大きな魅力です。

■新型スーパーカブ110(JA59型) 主要諸元
[エンジン・性能]
種類:空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア×ストローク:47.0mm×63.1mm 総排気量:109cc 最高出力:5.9kW<8.0ps>/7500rpm 最大トルク:8.8Nm<0.9kgm>/5500rpm 燃料タンク容量:4.1L 変速機:4段リターン(停車時のみロータリー)
[寸法・重量]
全長:1860 全幅:705 全高:1040 ホイールベース:1205 シート高:738(各mm) 車両重量:101kg タイヤサイズ:F70/90-17 R80/90-17
[車体色]
グリントウェーブブルーメタリック、パールフラッシュイエロー、バージンベージュ、タスマニアグリーンメタリック、クラシカルホワイト
[価格]
30万2500円

■従来型スーパーカブ110(JA44型) 主要諸元
*数値はテスト車の2020年型のもの
[エンジン・性能]
種類:空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア×ストローク:50.0mm×55.7mm 総排気量:109cc 最高出力:5.9kW<8.0ps>/7500rpm 最大トルク:8.5Nm<0.87kgm>/5500rpm 燃料タンク容量:4.3L 変速機:4段リターン(停車時のみロータリー)
[寸法・重量]
全長:1860 全幅:695 全高:1040 ホイールベース:1205 シート高:735(各mm) 車両重量:99kg タイヤサイズ:F70/90-17 R80/90-17
[車体色]
アーベインデニムブルーメタリック、パールフラッシュイエロー、バージンベージュ、タスマニアグリーンメタリック、クラシカルホワイト、パールフラッシュイエロー
[価格]
28万500円

試乗レポート●高山正之さん
1955年生まれ。1974年に本田技研工業に入社し、埼玉製作所狭山工場の四輪組立ラインに配属。その後、二輪のモータースポーツ普及活動や、本社1階にあるホンダウエルカムプラザ青山の企画担当を経たのち、1994年から国内二輪広報業務を担当し続けてきた。2020年7月に65歳で定年退職。

写真●岡 拓 編集●上野茂岐

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みんなのコメント

3件
  • キャタライザーに使うパラジウムが増えただけで数千円のコストアップだろう。新エンジンの搭載に伴う細かい変更やABSとキャストホイールの装着など、よく2万円アップに抑えたと思う。旧型ユーザーならではの意見は説得力がある。
  • 「フロントの剛性感」って曖昧な表現じゃなくて、キャストとスポークの乗り味の違いもダイレクトに伝えて欲しかった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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