これまでのMGモーターで1番の仕上がり
数年前まで、MGモーターがフォルクスワーゲンに伍するモデルを生み出す可能性を話しても、真剣には受け止めてもらえなかった。英国人なら、皮肉たっぷりに当時のモデルの特徴を並べ、否定的に反応しただろう。
【画像】コスパは価格破壊級 新型MGモーター MG4 欧州で競合するBEVモデルと写真で比較 全105枚
しかし2022年の今なら、新しいバッテリーEV(BEV)のMG4へ1度試乗してから答えた方がいい。スタイリングやパッケージング、価格、装備などを確認すれば、MGモーターがこれまで生産してきたどのモデルより優れているとわかるはず。
しかも、運転もホドホドに楽しめる。内容を考えれば、思わず価格を2度見したくなる。
現在は中国の上海汽車(SAIC)グループの傘下にあるMGモーターだが、広告戦略に関わってきたベテランのガイ・ピグアナキス氏は、このMG4を「創造的破壊者」だと表現する。40年以上も自動車業界にいる人物なのだから、かなりの自信なのだろう。
ピグアナキスが特に強調するストロングポイントが、英国では月額300ポンド(約5万円)で乗れる残価設定プラン。価格が手頃なだけでなく、数年後の価値があまり下がらないことを意味している。
英国ではディーラー網も充実しているし、7年間と12万8000kmの新車保証も付いている。確かに、MGモーターのベストセラーにランクインできる条件だと思う。既にブランドの人気には火が付いており、売上げも上昇の一途らしい。
51kWhか64kWhのバッテリーに充実装備
MG4のベースとなっているのが、親会社となるSAICグループが開発したモジュラー式プラットフォーム。同グループが有する他ブランドのモデルも利用しており、スケールメリットは大きい。
MG4では、フラットな駆動用バッテリーがフロア部分を専有し、コンパクトな駆動用モーターをリアアクスル側に配置。前後の重量配分は、50:50とバランスが良い。
駆動用バッテリーとモーターは2種類から選べる。1番ベーシックなMG4 SEには、51kWhのバッテリーと170psのモーターが組み合わされ、英国価格は2万5995ポンド(約428万円)から。航続距離は350kmで、0-100km/h加速は7.7秒となる。
SEロングレンジでは駆動用バッテリーが64kWhへ増え、航続距離は452kmへ伸びる。モーターも203psへ増強されるが、車重が増えるため0-100km/h加速は7.9秒と若干だが遅くなる。英国価格は2万8495ポンド(約470万円)からだ。
最上級グレードとなるのがMG4 トロフィー。64kWhの駆動用バッテリーに装備が追加され、価格は3万1495ポンド(約519万円)へ膨らむ。
といっても、SEの装備が不足しているわけではない。アップル・カープレイとアンドロイド・オートに対応した、10.25インチのインフォテインメント用タッチモニターと、デジタルラジオ、7.0インチのメーター用モニターなどが標準装備される。
運転支援技術も充実しており、レーダー式のクルーズコントロールに車線維持支援システムなどを実装。ドライブモードには5段階があり、回生ブレーキは4段階に強さを変えられる。
遥かにモダンな内外のデザイン
これまでMGモーターのショールームに並んでいたモデルと比べれば、ボディのスタイリングは遥かにモダン。フロントマスクはシャープでリアのオーバーハングは短く、テールライトのデザインも凝っている。
Aピラーから伸びやかに続くルーフは、ウインドウ回りがブラック・アウトされ浮いているように見えるし、ボディの下回りもブラックのトリムで覆われる。フォルクスワーゲンID.3より躍動感があると思う。
インテリアデザインも印象的。水平基調のダッシュボードの高い位置に、宙に浮いたようにタッチモニターが据えられている。ステアリングホイールは上下がフラットに切られ、スタイリッシュな雰囲気を高めている。
リアシートのアームレストが付いていないなど、コスト削減の結果がゼロではない。しかし、内装パネルの上部はソフト加工され、ステアリングホイールはレザー巻き。価格を考えれば仕上がりは褒められる。
荷室容量は平均的な大きさで、特に凝った仕掛けもないとはいえ、充電ケーブルをしまえる場所はちゃんと確保されている。リアシートの背もたれを折りたためば、荷室を広げることもできる。
シートやフロアカーペット、ドアトリムなどはブラックが主体で明るさはないものの、空間自体にはゆとりがある。BEVのライバルと比べれば、明らかに有利といえる。
この続きは後編にて。
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