もくじ
どんなクルマ?
ー 新時代のランボルギーニ
ー ランボか、フォルクスワーゲンか
フェラーリを買ったらどうなる? 「関係者」8名の証言 (回顧録11)
どんな感じ?
ー 「ありえないほどけたたましい」
ー 狂気と平穏 SUVならではの両立
ー 「ランボルギーニ」だからこその期待
「買い」か?
ー ウルスは生粋のランボなのか
スペック
ー ランボルギーニ・ウルスのスペック
どんなクルマ?
新時代のランボルギーニ
思うに、重量の問題はデリケートで、1kgの差が重要なのだ。だからこそウルスの重量は2197kgで、2200kgとはしなかった。
この数字を筆頭に、ウルスには恐ろしい数字が付いて回る。650ps、86.4kg-m、16万4950ポンド(2529万円)。ただし価格は大まかなものだ。ディーラー・チャージはディーラーによって異なるし、いくつかオプションをつけるだけで18万ポンド(2759万円)に達する。
これで何が得られるのだろう? 1台のスーパースポーツ・ラグジュアリーSUVだ。
ランボルギーニが言うには、彼らはいちからまったく新しいタイプのクルマを発明したらしい。もっとも、よく目を凝らして見れば、もっとどう猛なV12を積むLM002とのつながりがあるかもしれないが、当時LM002はそのようなふだんからふつうに乗ることができるクルマだとは考えられていなかっただろうし、そもそも328台しか生産されていない。
そしてそれは昔の話で、今は違う。ウルスはV12を積んではいないし、200人足らずの作業員がハンドビルドするわけでもない。
アーキテクチャーにはフォルクスワーゲン・グループのMLBエボを使用しており、これはアウディQ7、ポルシェ・カイエン、ベントレー・ベンテイガにも使われている。このクルマによって、ランボルギーニは販売台数をこれまでの2倍の年7000台にまで引き上げるつもりなのかもしれない。
この点で、ウルスはマーケティング主導のクルマで、エンジニアリング主導ではない。ランボルギーニは、彼らだけが販売することができるクルマだとわかっているのだ。本物のスポーツカーを作っているメーカーが作るから意味があるのだ。
ならばウルスは真のランボルギーニではないのではないか?
ランボか、フォルクスワーゲンか
ならばウルスは真のランボルギーニではないのではないか? 違う、とランボルギーニは言う。ランボルギーニのDNAは貫かれている、と。
確かにVWのアーキテクチャーを使っているのは認めよう。しかし、合金の適切な使用や、独創的なCピラー、それにフレームレス・ドアにより軽量化が図られている。
ランボルギーニ初のターボチャージドエンジンは、実はアウディに搭載されているものと同じだと認めよう。だが、650psを発生させる。4輪駆動で地上高も高い。
ちなみにVWグループの中で、後輪に60%(最大85%)を割り振るトルセン・センター・ディファレンシャルを組み合わせ、トルク・ベクタリング・リア・ディファレンシャルを搭載しているクルマは他にない。
簡単に言えば、これらのシステムはランボルギーニをグループ内の他のブランドと差別化するためのものだ。そして、LM002がV12をミドに積んでいたのに比べれば、これらの違いは些細なことだ。
ウルスにV12が収まるか? SUVにはトルクが必要だからターボがいる。ではV12にターボをつけるのか? いろいろと考えられるけれど、さあ、質問はやめて、さっさとウルスに乗ってまずはインプレッションだ。
どんな感じ?
「ありえないほどけたたましい」
ドアはスイングオープンで開く。よくあるSUVよりも軽く感じるのはフレームレスドアだからだろう。インテリアは大半の4駆より戦闘的で、派手派手しい。センターコンソールは高い。
5シートも選べるが、このクルマは4シートで、高級感のある素材で包まれた独立式だった。ダッシュボードも同様で、ランボルギーニのデザインに、時たまVWグループの風味が感じられる。
新しく感じる部分もある。2段のタッチスクリーンはむしろレンジローバー・ヴェラールのようだ。多くのスイッチが1カ所に集まっており、そこでドライブモードの選択やエンジンスタート、8速オートマティックの設定等を行う。
このクルマには6つのドライブ・モードがある。ストリート、スポーツ、トラック(15mm車高が低くなる)と、車高が40mm上がる3つのオフロード・モードだ。サスペンションやエンジン、ステアリングの重さを個別に設定することもできる。
まずはトラックモードを試してみる。
これは速い。そしてありえないほどけたたましい。ツインターボV8はあからさまなラグがあるわけでもなく、6800rpmのレブリミットまで回すのはなかなかにハードだ。公式で0-100km/hは3.6秒、0-200km/hは12.4秒だが、この数値は感覚とも合致する。実際、わずか2250rpmからとてつもないトルクが湧き上がってくるので、何速に入れていようが関係ないのだ。もっともっと、と回りたがるのでシフトアップがためらわれる。
ノイズはかなりあり、それに増幅された音が加わる。ナチュラル・シンポーザーは、インテークシステムを使って自然に発生した音を取り込んでいるが、それでも増幅音は増幅音だ。それも良いが、わたしにはAMGのV8サウンドの方が素晴らしく感じる。
他はどうだろう?
狂気と平穏 SUVならではの両立
止まることに関して言えば、重量の割にとても良い。10ピストン・キャリパーのカーボンセラミックブレーキが標準で搭載されている。
なお、ロールはする。スポーツモードでは地上高が下がり、ダンパーが固められ、兄弟車と同じような48Vアクティブ・アンチロールバーを搭載しているにもかかわらずだ。しかし、それは良いポイントだ。少々ボディアングルが付くことで寄りかかるものができる。
クイックなステアリングは急速に重くなるが、本当にナチュラルな感触は得られない。ディファレンシャルが働くのがわかり、コーナリングラインがどんどん直線によっていく。
端的に言って、このクルマはサーキットでは気が狂うほど速い。実際に所有して体験してみれば、数分であなたも驚くだろう。ほとんどのスポーツカーよりも速く走れてしまうのだから。
典型的なスポーツカーは一般道でこのクルマほど快適でない。ストリート・モードなら、ウルスは舗装の良い道路では従順に、悪い場合はそわそわ落ち着かない。オプションで23インチホイールに30シリーズのロープロファイルタイヤの組み合わせを選ぶことができる。
加えて、ダンパーがよく動き、各々のホイールが自由に動くようなアンチロールバーのモードになっていても、2.2tではあるものの、本質的に良いハンドリングを目指すSUVだという点は変わらない。
正直に言って、ウルスはいいクルマだ。不快ではなく、同じバッチをつける他の大きなクルマよりも扱いやすい。シートも良いし、トランクルームもまともだ。エルゴノミクスの面から見てもしっかりしている。ステアリングは相変わらず軽く、レスポンスも良い。ペダルフィールとレスポンスも好印象。デジタルのメーター類と、多くのインフォテインメント類は高い水準でまとめられている。
何か悪いところはあるだろうか?
「ランボルギーニ」だからこその期待
わたしにとっての不満は以下のとおり。
モードをハードにセッティングしない限りエンジンは静かすぎる。ウインドウラインが高く、視界が少々頼りない。(しかし、パーキングカメラは素晴らしい。)
そして、オフロードである。ランボルギーニは、ウルスでは「クラス最高」のハンドリング性能と、「最高クラス」のオフロード性能を追求したと言っている。
わたしは前半については間違いなく達成できていると思うが、後半はわからない。オフロードモードでの最低地上高は215mmで、適切なタイヤさえ履けば、望むほとんどの場所を走破することができるだろう。砂丘などがメインになるだろうか。
わたしはカーブしていくつかの谷へと向かうグラベルのコースで試してみたが、大変楽しかった。有り余るトルクのおかげで乗りやすく、アジリティが高く感じた。
コーナー出口では、リアディファレンシャルがラインを整えて正しい方向へと進めてくれるのがわかるだろう。真剣に言っているのだが、このクルマの出来は驚異的だ。
サーキットでは有能、一般道では扱いやすく、オフロードも余裕ときた。本当に感動ものだ。これらすべてをより上手くこなすクルマは、あるにしてもそう多くないだろう。
「買い」か?
ウルスは生粋のランボなのか
ひとつ気になってしまうポイントは、答える際にそれを問うに値し、ランバルギーニのバッチを掲げるに値する疑問だとあなたが思うかということだ。疑問は続く。
もしウルスが聞いたことのないメーカーのクルマだったとしても、多かれ少なかれ買う気になったか? 技術的に優れたクルマだとはわかっていても、あなたは実際にとても気に入っているのか? あなたが決めるべき問題だ。
一方、このクルマからランボルギーニを感じるか? という問いの答えはわたしにもわかる。ウルスからはあからさまではないが、ランボルギーニの努力の跡は感じられる。
しかし、カイエンが発売されたときポルシェを感じただろうか? わたしが覚えている限り、そうではなかった。内装の一部はいくらか似ていたが、それだけだ。一方で独特な個性があった。
おそらくウルスでも同様だ。ひとは自然吸気のミドシップだけで生きていけるわけではないのだ。
ランボルギーニ・ウルスのスペック
■価格 16万4950ポンド(2529万円)
■全長×全幅×全高 5112×2181×1638mm
■最高速度 305km/h
■0-100km/h加速 3.6秒
■燃費 9.8km/ℓ
■CO2排出量 279g/km
■乾燥重量 1590kg
■パワートレイン V型8気筒3996ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 650ps/6000rpm
■最大トルク 86.5kg-m/2250-4500rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
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