現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜ急激に増加? アクセルとブレーキの踏み間違い事故が起こるワケ

ここから本文です

なぜ急激に増加? アクセルとブレーキの踏み間違い事故が起こるワケ

掲載 更新
なぜ急激に増加? アクセルとブレーキの踏み間違い事故が起こるワケ

肉体的な衰えが事故を招く

 高齢ドライバーの起こす交通事故が目立っている。その中にはアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違いが原因と報道されているものが目に付くという声もある。実際、交通事故は減少傾向にあるとはいえ、2018年でも43万件が発生、52万4695人もの方がけがをされ、3532人の方々が残念ながら亡くなってしまった。

高齢者の交通事故を抑制!トヨタ「踏み間違え加速抑制システム」設定車種を拡大

 この数字からすると、毎日10名程度の方が交通事故で亡くなっており、1200件近い交通事故が起きている計算になる。報道されている交通事故はごく一部であり、それを持って高齢ドライバーのペダル踏み間違い事故が多いと判断するのは早計だ。むしろ「高齢ドライバー・事故・ペダル踏み間違い」といったキーワードが耳目を集めるため、そうした報道が増えているという見方もできる。

75歳を超えるとペダル踏み間違いが増える

 それはさておき、アクセルとブレーキのペダルを踏み間違えることによる交通事故は確かに発生しているし、高齢ドライバーになるとそうしたミスが増えるというのも事実であろう。公益財団法人 交通事故総合分析センター(略称:イタルダ)の統計によると、ペダルを踏み間違えるといったミスは24歳以下と65~74歳の同じくらいの割合で、25~54歳ではもっとも低くなり、75歳を超えるとグンと増えることが明らかとなっている。

 その原因として考えられるのは、身も蓋もないが肉体的な衰えだ。現在、日本においてポピュラーかつ正しいとされているのは右足でアクセルとブレーキそれぞれのペダルを踏み込むという運転方法。そのため運転中は右足を踏みかえる動作を繰り返すことになる。足を持ち上げてペダルを踏みかえているケースもあれば、かかとを床につけて足首をひねるようにして踏みかえている人もいるだろう。 いずれにしても加齢によって膝の動きや足首の柔軟性は徐々に衰えていく。そのため、同じ動作を繰り返しているときに踏みかえたつもりなのに、足が思ったように動いていないということが出てくると考えられる。そうした高齢ドライバーは、周囲の状況から急かされるなどして焦れば焦るほどミスを起こしやすい。

駐車場での踏み間違いが多いわけではない

 こうしてペダルの踏み間違いは起こる。そのトリガーとして体をひねって後方を確認したり、腕を伸ばして料金を支払ったりする駐車場ではペダルの踏み間違いが起こりやすいというのが定説だ……。しかし、イタルダの統計を見ていると、たしかに高齢ドライバーにおいては駐車場でのペダルを踏み間違い事故が増える傾向にあるが、どの年齢においても単路(一般道路)での事故件数がもっとも多かったりするのだ。余談だが、単路でのペダル踏み間違い事故はATだけで起きるわけではない。ブレーキを踏んでいるつもりでアクセルを踏むといったミスはMTでも起きうる。

 とはいえ、単路における事故原因はペダルを踏み間違い以外が圧倒的に多い。その反面、事故件数自体はさほど多くないが、駐車場での事故は踏み間違いによるものが多くなる。とくに75歳以上の高齢ドライバーにおいては駐車場で起こす事故の10%以上がペダルを踏み間違いに起因しているということだ。ただし、逆にいえば80%以上の事故はペダルを踏み間違い以外の要因で起きている。ペダルを踏み間違いがなくなれば、交通事故が半減するという話ではないのだ。それでも10%以上の事故が減らせるのであればペダル踏み間違いを減らす努力をする価値はある。

いまさら操作系を変えるのも難しい……

 さて、ペダル踏み間違いを起こしても、すぐに気付いて踏みかえることができれば大きなアクシデントにはつながらない。それができないのは、ブレーキだと思い込んでいるからアクセルペダルから足を離せず、まして減速しようとしてさらに強く踏み込んでしまうからだ。さらに予想外の加速により、体が硬直してしまったり、パニックになって冷静さを失ってしまったりすることでリカバリーできずに、被害を大きくしてしまう。

 その対策として、車両側でいえばソナーを利用した誤発進抑制機能が広く採用されている。またアクセルペダルの踏み込み量を検知して、一定のレベルを超えるとアクセル操作を受け付けないようにする後付けの安全装置も売られている。前者は基本的に新車時に装備するもので、後付けできるメーカーもあるが車種は限定される。後者もバイワイヤの電子スロットル車にしか対応しない。

 踏み間違い対策のドライビングテクニックとして左足ブレーキを薦める声もあるが、この手の技術は向き不向きがある上に、高齢ドライバーがいまさら新しい運転技術を習得するというのは現実的ではない。そこでおすすめしたいのが両足ブレーキだ。

 加齢によりブレーキを踏む力が弱くなっているために通常の停止時にもブレーキを踏む力が緩んでしまうこともあるだろう。そうしたときに右足でブレーキを踏んでいるのをアシストするように左足もブレーキペダルに足をかけて両足でペダルを踏むことで、強いブレーキングとなる。通常の運転は右足でブレーキングするので運転がギクシャクすることもない。あくまでも停止してから左足の力を加えるといったイメージだ。

 そうして停止時限定のテクニックとして両足でブレーキを踏むクセをつけておけば、もし右足がペダルの踏み間違いをしたときにも、結果的に左足でブレーキを踏むことができるだろう。さすがに両足でアクセルペダルを踏むというのは考えづらい。ブレーキオーバーライドといってブレーキ優先の機能がついているクルマであれば、それによって減速できるし、そうした機能がない古いモデルでもブレーキペダルを踏んでいれば、少なくとも減速はするので被害を抑えることが期待できる。

関連タグ

こんな記事も読まれています

[音響機材・チョイスの勘どころ]サブウーファー・国産ブランド…小型・薄型モデルのトレンドを分析!
[音響機材・チョイスの勘どころ]サブウーファー・国産ブランド…小型・薄型モデルのトレンドを分析!
レスポンス
次世代「ヴァンキッシュ」に搭載か?アストンマーティンが新型V12エンジンの動画を公開
次世代「ヴァンキッシュ」に搭載か?アストンマーティンが新型V12エンジンの動画を公開
@DIME
F1マイアミGP責任者、”場内の飲食が高い”との批判に反論「実際とは異なる情報が拡散された」
F1マイアミGP責任者、”場内の飲食が高い”との批判に反論「実際とは異なる情報が拡散された」
motorsport.com 日本版
コースごとに異なる舗装での転倒。M.マルケスの優勝も現実的に/MotoGPの御意見番に聞くスペインGP
コースごとに異なる舗装での転倒。M.マルケスの優勝も現実的に/MotoGPの御意見番に聞くスペインGP
AUTOSPORT web
全長2.5m切り! 斬新すぎる「超コンパクトカー」に熱視線! 2人乗り・1ドアで“旧車デザイン”採用! カワイすぎマシン「マイクロリーノ」に反響の声
全長2.5m切り! 斬新すぎる「超コンパクトカー」に熱視線! 2人乗り・1ドアで“旧車デザイン”採用! カワイすぎマシン「マイクロリーノ」に反響の声
くるまのニュース
WECスパの性能調整発表。前戦イモラで圧倒のフェラーリ499P、最低重量が12kg増
WECスパの性能調整発表。前戦イモラで圧倒のフェラーリ499P、最低重量が12kg増
motorsport.com 日本版
柴田自動車、三遠ネオフェニックスとスポンサー契約締結
柴田自動車、三遠ネオフェニックスとスポンサー契約締結
レスポンス
【20台限定】ベントレー「ベンテイガS」にカーボンホイールとセンターストライプを採用!「エイペックスエディション」の特別装備とは
【20台限定】ベントレー「ベンテイガS」にカーボンホイールとセンターストライプを採用!「エイペックスエディション」の特別装備とは
Auto Messe Web
日産チェリー1000GL((昭和45/1970年9月発売・E10H型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト059】
日産チェリー1000GL((昭和45/1970年9月発売・E10H型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト059】
Webモーターマガジン
映えも運転もエコも楽しむ! 電気自動車「アバルト 500e」でゆく鎌倉日帰り旅
映えも運転もエコも楽しむ! 電気自動車「アバルト 500e」でゆく鎌倉日帰り旅
グーネット
三菱自動車の2024年3月期決算、売上高と営業利益が過去最高 今期も新型車効果で売上増へ
三菱自動車の2024年3月期決算、売上高と営業利益が過去最高 今期も新型車効果で売上増へ
日刊自動車新聞
レンジローバー初のEVモデル「レンジローバー エレクトリック」の走行テスト画像および動画が公開
レンジローバー初のEVモデル「レンジローバー エレクトリック」の走行テスト画像および動画が公開
カー・アンド・ドライバー
一度見たら忘れられない「衝撃フェイス」! 「秀逸顔」な国産車3台と「正直理解不能な顔」の国産車3台をデザインのプロが斬る!!
一度見たら忘れられない「衝撃フェイス」! 「秀逸顔」な国産車3台と「正直理解不能な顔」の国産車3台をデザインのプロが斬る!!
WEB CARTOP
F1分析|マイアミGP序盤、”目立たない存在”だったことが、ノリスの初優勝を後押し……フェルスタッペンの警戒はルクレールに向いていた
F1分析|マイアミGP序盤、”目立たない存在”だったことが、ノリスの初優勝を後押し……フェルスタッペンの警戒はルクレールに向いていた
motorsport.com 日本版
カーブって素人かよコーナーだろ! ハンドルとかダサいぜステアリングな! クルママニアが面倒くさいほどこだわりがちな用語5選
カーブって素人かよコーナーだろ! ハンドルとかダサいぜステアリングな! クルママニアが面倒くさいほどこだわりがちな用語5選
WEB CARTOP
トヨタ新型「ハイラックス GRスポーツII」発売! ワイドボディ&車高アップでゴツさ強調! 英で約972万円
トヨタ新型「ハイラックス GRスポーツII」発売! ワイドボディ&車高アップでゴツさ強調! 英で約972万円
くるまのニュース
猿こそが地球の支配者!? 300年後の世界を描く人気シリーズ最新作『猿の惑星/キングダム』
猿こそが地球の支配者!? 300年後の世界を描く人気シリーズ最新作『猿の惑星/キングダム』
バイクのニュース
ヨコハマ、GT500では開幕に続き苦戦もGT300で躍動。富士3時間で復調しドライバーからも好評価「どれだけプッシュしてもタイヤが応えてくれる」
ヨコハマ、GT500では開幕に続き苦戦もGT300で躍動。富士3時間で復調しドライバーからも好評価「どれだけプッシュしてもタイヤが応えてくれる」
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村