この記事をまとめると
■人気車の名前を借りた派生モデルがいくつか存在
同じ中身なのになんでこんなに差が付いた! 明暗クッキリ兄弟車の勝ち負け4選
■稀に派生モデルが名門の名を汚してしまうケースも
■まったく新しい車名をつけていればかろうじて売れたかもしれない!?
名門の名を汚してしまった派生モデルとは!?
人間の世界に「冷泉家」や「細川家」、あるいは「ロックフェラー家」などの名門あるいは名家があるのと同様に、クルマのブランドにもいくつかの“名門”がある。
で、人間界の名家の子息や令嬢がいろいろとやらかしてしまい、お家の名を汚してしまう事件がたまにあるわけだが、クルマの世界においても、名門の直系子孫ではない“派生モデル”がいろいろとやらかし、名門の名を汚してしまうことが稀にある。
代表的なところでいえば、2009年に発売された「日産 スカイライン クロスオーバー」だろうか。
名家「スカイライン」の名を冠してはいるものの、スカイライン家との直接の関係はさほど深くなく、要するにそれは、北米で売られていたSUV「インフィニティ EX37」でしかなかった。日本で売るにあたり、日本の日産には「インフィニティ」のチャネルがないため、「とりあえず“スカイライン”って付けておけば、日本ではある程度の数が確実に売れるべ?」ぐらいのノリで(?)、名家スカイラインの一員となったモデルである。
しかし、3.7リッターV6という当時としてはデカかったエンジンが敬遠されたのか、その燃費がイマイチだったのがいけなかったのか、それとも日産がろくに宣伝もしなかったせいかはわからないが、とにかく日本ではサッパリ売れず、あえなく1代限りで廃番に。結果として「名家スカイライン」の名を汚す1台となってしまったわけだ。
とはいえどうなのか──と、筆者は思う。
スカイライン クロスオーバーがイマイチ売れなかったのはクルマ自体のせいではなく、調子をこいて「スカイライン」の名をテキトーに付けた当時の日産のせいなのではないか?
もしもスカイライン クロスオーバーがスカイライン クロスオーバーでなく、たとえば……そうだな、ええと「日産 EX37クロスオーバー」みたいなシンプルな車名であったなら、スカイライン愛好家たちから勝手に幻滅されることもなく、プレミアムSUVを好むやや富裕なユーザー層から、静かな支持を得られたのではないだろうか?
まぁそれでもバカ売れすることはなかったと思うが、少なくとも「お家の面汚し」的な扱いをされることなく、「ちょっと地味だけどいいクルマ」みたいなニュアンスで人々の記憶に残ったはずなのだ。なんなら、その後も2代目、3代目へと静かにフルモデルチェンジを重ねていたかもしれない。そして3代目の車名は、最高出力405馬力の3リッターV6ターボ積む「NISSAN EX405 クロスオーバー」とでもなっていただろうか。
別の名前だったらもっと支持されていたかも!
これと同様のことは、悪名高い「トヨタ・マークX ZIO」にも言える。
ご承知のとおりマークX家は、断絶した名門「マークII家」を断絶直後に継承した名家。まぁそのマークX家もいまや断絶したわけだが、それはいますべき話ではない。とにかくマークX家は、ある程度の“名門”であった。
そこにひょっこりと2007年に現れたのが、マークX家とは何の関係もない「ZIO」だった。
「積載性に優れるワゴン型ボディ」に「ゆったり座れる独立式シート4脚」を置き、そして荷室に「いざというときのための3列目シート」を忍ばせたクルマというのが、マークX ZIOのあらましだ。しかし、車台はFFハッチバックであるオーリスやブレイドなどと共用で、名門FR車であるマークXとは何の関係もなかった。いわば政治的な事情から、ZIO君は無理やり「マークX」の名字を名乗らされたわけだ。
そしてそのZIO君が、悪いクルマではなかったのだが「おまんじゅう」みたいな冴えないカタチであり、そのほかにもちょっと微妙な部分はあったせいか、発売当初こそ目標月販台数の4000台を上まわる5000台以上を売り上げたものの、すぐに失速。3カ月目の販売台数はわずか1649台という体たらくだった。
その後は2010年7月に5人乗り仕様を設定し、2011年2月にはフロントまわりのデザインを変更するなどのマイナーチェンジも行ったが、状況は好転せず。結果として2013年12月、マークX ZIOの生産と販売は終了となり、名門の名を汚す結果となったのだ。
しかしこれも、スカイライン クロスオーバーの場合と同様に「勝手に名門の冠を付けられ、そして勝手に幻滅された」という例の典型である。
ZIO君がマークX家の一員だと思うから「……さすがにこのカタチはないでしょう」と感じるだけで、たとえば……そうだな、ええと「トヨタ インディペンデンス」みたいな、マークXとは何ら関係ない車名であったなら、「これはこれで便利だから悪くないんじゃない? カッコはよくないけど」みたいな感じで、地味に支持された可能性はあったはずだ。
東京ヤクルトスワローズの巨漢、村上宗隆選手は「ヤクルトの村上」だからこそ素晴らしいのであって、それが「BTSの新メンバーになった村上宗隆くん」ではぜんぜんダメなのだ。何でもかんでも有名な冠を付ければいいってものでもないのである。
これと同様のことは、1997年から2002年まで販売された「トヨタ・マークIIクオリス」にも言えるだろう。
ご承知のとおりマークIIクオリスは、FRの名門「マークII」を名乗ってはいるものの、中身的にはFFのカムリグラシアであり、そのビジュアルをマークII風に整形したものだ。もちろん悪いクルマではなく、それなりに人気を博した1台ではあったが、「それってちょっとどうなんだ?」とは思う。
もちろんそれはグラシア君に対してではなく、当時のトヨタ自動車に対してである。
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