8月6日、NTTインディカー・シリーズ第13戦『ビッグマシン・ミュージックシティGP』の決勝レースがアメリカ・テネシー州ナッシュビル・ストリートサーキットで行われ、カイル・カークウッド(アンドレッティ・オートスポート)が優勝を飾った。
■ソフトタイヤの使いどころが決勝のカギに
プラクティス2は雨に見舞われ、ウォームアップ走行はキャンセルと、週末を通して周回数が非常に少ないまま迎えられた決勝レースだが、難しい状況下でもマシンに高い戦闘力を身につけさせたのがアンドレッティ・オートスポートの27号車を駆るカークウッドで、ピットタイミングやタイヤチョイスなどの作戦も最良だった。
カイル・カークウッドが今季2勝目【順位結果】インディカー第13戦決勝ナッシュビル
まだ2回しかレースを開催していないナッシュビルだが、狭くバンピーなコースでは2年続けてアクシデントが多発し、”クラッシュビル”と呼ばれるまでになっていた。
しかし、今年もイエローだらけのレースになるとの予想が大方だったが、スタートからアクシデントのないまま終盤戦に突入。
スタートでハード、中盤をソフトタイヤで戦う作戦によってカークウッドは2回目のピットストップ後にトップに立ち、34周のリードラップも記録して優勝を飾った。
トップ争いをしたチームメイトのロマン・グロージャン(アンドレッティ・オートスポート)は、カークウッドよりも1周早くピットインを選択。
しかも、そこでもう1度ハードタイヤをチョイスしたが、ペースに苦しんでトップまで順位を上げることはできず。ソフトタイヤを投入した最終スティントでは、6位までポジションアップでチェッカーを受けた。
予選で2年連続のポールポジションを獲得したスコット・マクラフラン(チーム・ペンスキー)は、決勝順位も同様に2年連続の2位という悔しい結果となった。
ソフトタイヤでスタートしたマクラフランは、カークウッドよりも4周早くピットイン。1回目のピットストップを全員が終えるた段階で、カークウッドとグロージャンに次ぐ実質上の3番手に順位を下げていた。
最終スティント直前でグロージャンの前に出ることはできたマクラフランだったが、カークウッドを抜くことは叶わず。レース終盤には2度のリスタートが行われ、チャンスが来たかに思われたが結局トップを取り戻すことはできずにレースを終えた。
ポイントランキングトップのアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)は4番手スタートからの3位フィニッシュを果たした。今季8回目の表彰台を獲得したパロウは、今シーズンのこれまでの13戦全部でトップ10フィニッシュという安定ぶりで、さらにポイントリードを広げた。
前戦アイオワで2連勝を飾りランキング2番手となったジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、予選9番手から4位まで順位を上げたが、チャンピオンシップを争うパロウにはワンポジション届かなかった。
ポイントランキング3位で粘っているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)は、今回は予選12番手から7ポジションアップの5位フィニッシュ。
6度のシリーズタイトル獲得を誇る彼を侮ることはできないが、13戦を終えても未勝利とあって、タイトルの可能性は今回また低くなった感がある。残り4戦で連勝でも記録すれば状況は変わるかもしれないが……。
■展開を読み切ったカークウッド「今年はイエローが少なくなるのでは?」
今季2勝目を飾った期待の若手カークウッドはレース後に「今日はマシンが速く、チームの作戦も完璧だった。ピットストップもミスなく、スムーズそのもの。アンドレッティ・オートスポートのクルーたちが勝利をもたらしてくれた」と振り返る。
「今年もアクシデントは多いだろうと多くの人々が予想していたが、自分たちは“今年はイエローが少なくなるのでは?”と話しており、実際にレースはその通りになった」
「セカンドスティントはパロウの後ろを走っていてペースを上げられなかったが、その時には燃費セーブとタイヤを労わることに心がけ、彼の前に出るチャンスを待った。それは最終スティントで実現し、終盤戦のマシンは更に速くなっていたので優勝することできた」と勝利を喜んだ。
ポールスタートから惜しくも2位となったマクラフランは、「全力を尽くしたが、勝つことはできなかった。マシンは速かったので勝ちたかった。とても残念だ。しかし、これが現実だ。2年続けて勝利が自分たちの手から滑り落ちて行ったように感じている」とコメント。
「最初のイエローが自分たちには不利に働いたし、中盤戦でグロージャンをもっと早くパスできていたなら、カークウッドにもっとプレッシャーをかけ、さらにはパスすることも可能だったかもしれない」
「しかし、今日はレース終盤のリスタートが下手だった。リヤタイヤの温まりが不十分だったんだ。なぜそうなったのかがわからないが、とても腹立たしい。普段と手順を変えたわけではなかったのだが、リスタートは得意な方なのに今日は酷かった。なぜそうなっていたのか、理由を究明する必要がある」と話した。
タイトル獲得にまた一歩近づいたパロウはレース後に、「序盤の13周目か14周目、イエローでピットストップに入った。あれはかなり攻撃的な作戦だったが、予定通りの行動だった」とレースを振り返った。
「しかし、結果的にあれは今日の正解ではなかったね。もっとイエローが出ると考えていた。なので、今日の僕らはかなりラッキーだったとも言える。燃料がもたずにピットに入るはずが、イエローが出たことでそうせずに済み、表彰台に上がることになったんだからね」
「ただ、1回目のピットストップ後の燃料セーブは本当に大変だった。イエローが出てくれるよう祈り続け、そのストレスで5歳も年を取った感じがする」と語った。
ポイントリードについては、「今日の自分たちが得た結果は、10点満点だ。チャンピオン争いに関しては、トロフィーを授与されるまで勝負はわからない。残り4戦すべてでニューガーデンが優勝する可能性だってあるのだから」とタイトル獲得に向けて予断を許さない心持の様子だ。
今シーズンのタイトルに一番近い存在であるパロウは、初タイトルを2021年に獲ったが、そのシーズンよりもすでにひとつ多くの勝利を挙げている。
パロウは今季でインディカー参戦4シーズン目になるが、彼にはすでに苦手なコースがなく、安定感はシリーズ随一だと言える。
その結果、ニューガーデンに1.5戦分以上の84点という大差をつけている。残りレースでも手堅くポイントを重ね続ければ、2度目のタイトルに辿り着くことができる状況の彼には、もはや優勝だけにこだわる必要はないのかもしれない。
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