フルモデルチェンジしたルノーの新型「ルーテシア」に小川フミオが試乗した。
プラットフォームを刷新
無駄にイキって見えないミッドシップスポーツ──今、男が買うべき「カッコいいクルマ」を考える 第2回
全長約4mの使い勝手のいいハッチバック、ルノー「ルーテシア」がフルモデルチェンジ。日本でもルノー・ジャポンの手によって2020年11月6日より販売開始される。その前に試乗できた。
「これはいい!」と、勧められる楽しいクルマだ。
ハッチバックは、オールマイティだ。小まわりが効くし、室内はそれなりのスペースがあるし、荷物もそれなりに積める。外出先で車高が高すぎて駐車スペースに困ることもない。
Hiromitsu Yasuiルーテシアは、1972年に登場した「5」の後継モデルだ。つまり、ハッチバックに長い伝統を持っている。ルーテシアも1990年に初代が発売されていらい、着実にモデルチェンジを重ね、今回は5代目になった。欧州の主要市場ではベストセラーの座を守り続けている。
もし、それほど高くない価格で、機能性が高く、適度にスタイリッシュで、そして運転が楽しめるクルマを探すとなると、今回のルーテシアは最右翼に位置する1台である思う。SUVにちょっと食傷気味のひとも、いちど、ハッチバックに”戻る”のはいいかもしれない。
Hiromitsu Yasuiルーテシアとしては5代目になる新型の特徴は、ひとことでいうと、新しいプラットフォームが採用された点だ。ルノー主導で開発され、日産と三菱の製品にも今後使われる予定といい、今回の新型ルーテシアが第1弾になる。
もうひとつの特徴は、安全装備が充実した点。とりわけ、ルノー・ファンから要望が多かったという、アダプティブ・クルーズ・コントロールも搭載されたのがニュースだ。さらに、高速道路での渋滞時などにもありがたい操舵操作支援も含んだハイウェイ&トラフィックジャム・アシストや、360°カメラ(一部グレード)など、装備は豊富である。
エンジンは1333cc直列4気筒ガソリンターボで、湿式クラッチを使ったツインクラッチタイプの7速ATが新たに採用された。ターボチャージャーを組み合わせて最高出力69kW(131ps)と最大トルク240Nmを発生する。
Hiromitsu Yasuiファン・トゥ・ドライブ!
運転しての印象は、楽しませてくれるクルマ、というものだ。ルノーでは「カングーにはじまり、すべてのモデルで、ファン・トゥ・ドライブというコアバリューを大事にしてきました」(広報担当者)というだけある。
最大トルクが1600rpmで発生する設定だけあって、走り出しから期待以上のパワー感が味わえる。そのあと、エンジン回転数が2200rpmを超えるあたりから、どんっというかんじでパワーが盛り上がっていく。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiモニタースクリーン上のドライブモード・セレクターで「スポーツ」を選ぶと、とくに楽しい。3000rpmあたりではアクセラレーターへの踏みこみにも敏感なうえ、レーンチェンジではボディのロールが抑えられ、コーナーに入っていくときノーズの動きはすばやく、かつ安心感がある。
グリップが太めのステアリング・ホイールを握りながら、すいすいとカーブをこなしていくとき「これが標準仕様なら、将来出てくるかもしれないスポーツ仕様はどれだけスポーティになるのだろう?」と、考えてしまう。
Hiromitsu Yasui低速域ではおとなしめだ。ドライブモードが標準のままでは、おもしろみはあまりないかもしれない。けれど、スポーツモードを使うと、まったくちがうキャラクターになると思えるほど、豹変するのだ。シャシーの剛性感も高く、路面への追従性がいいうえ、つねに車体の動きはフラットで、上下左右の動きが抑えられている。
エンジンをまわして走るのが楽しいいっぽう、ふつうに走れば、リッター17km(WLTCモード)かそれ以上の好燃費を記録するという。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiスタイリングは「あえてキープコンセプト」(ルノージャポンの広報担当者)にしたということであるそうだ。なぜなら、2012年にデビューして今にいたるまで、従来型の人気が、フランスを中心にした欧州で衰えをみせないからという。その大きな理由がスタイリングにあるそうだ。
従来型よりキャラクターラインを多めにして、各部にエッジを立てたというものの、イメージは先代に近い。たしかに先代はプロポーションもよく、張りのある面がグラマラスな魅力となっていた。それを引き継ぎつつ、新しいパワフルなエンジンと、充実した安全装備で、アップデートしたのだ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui居心地の良いインテリア
同時に、「やはりいまひとつ評価が低かった」(ルノー。ジャポン)というインテリアは刷新された。クオリティの高い素材を使っている。ダッシュボードはソフトパッドで覆われ、高級感すらある。そこに7インチのモニタースクリーンが備えつけられ、スマートフォンと連携する。
ダッシュボードはシンプルな造型だ。ルノーでは「ガジェットを並べることを避けた」とのこと。そこで、シンプルにすれば際立ってしまう“クオリティ”を追求する道を選んだ。シートも座り心地がよい。後席スペースもおとなふたりに充分な広さが確保されている。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasuiもうひとつ、「ZEN」というエントリー・グレード以外は、BOSEのオーディオ・システム(9スピーカー)が搭載される。とりわけ、ブループリント・アクースティック社の「フレッシュエアスピーカー」なるサブウーファーの採用が注目だ。プレスリリースによれば「車外から取り入れた空気を活用し、豊かでパワフルな低音を再生します」とのことだ。
従来のルーテシアでは、サブウーファーを荷室に置いていたため、ユーザーからは不評だった。今回はきれいにサイドウォールにインストールされている。ちなみに、ラゲッジルーム容量は391リッターを確保している。
Hiromitsu YasuiHiromitsu YasuiHiromitsu Yasui実際のサウンドは、再現力がゆたかであり、かつ低中音の再生がいまの音楽ソースによく合っていると思えるものだった。このシステムのために、「インテンス」あるいは「インテンステックパック」を選ぶ価値があるといえる。
室内は静粛性とクオリティが高く、居心地がよい。かつ、再生忠実度の高いオーディオが楽しめるなど、装備はもりだくさん。走行性能にくわえ、このような価値がくわえられているのも、おおいなる注目点だ。
Hiromitsu YasuiHiromitsu Yasui価格は、装備がやや簡略化された「ZEN(ゼン)」(受注生産)が236万9000円、「INTENSE(インテンス)」が256万9000円、レザーシート、360°カメラ、操舵支援システムなどを備えた「INTENSE PLUS(インテンスプラス)」が279万9000円だ。
Hiromitsu Yasui文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
価格は、ルーテシアより30万円くらい安く。
それ、「ノート」とか「マーチ」って名前になるかもね。