クーペとスパイダー、どう違う?
本年6月に英国のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて発表されたマクラーレン570Sスパイダーが、アジア・エリアで初となるローンチが日本で行われた。
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570Sスパイダーはマクラーレンが謳うスポーツ・シリーズ第3のボディスタイルとなるオープンモデルで、570Sクーペのパフォーマンスはほぼそのままに、リトラクタブル・ハードトップの採用によりオープンエア・ドライビングを存分に楽しめる魅力的なモデルだ。
ここでは570Sクーペとオープン化された570Sスパイダーの変更点を中心に解説してゆく。
バックグラウンド
570Sクーペは2015年のニューヨーク・モーターショーでスポーツ・シリーズの第1弾として発表された。
マクラーレンでP1や650Sがスーパーカー・セグメントに属するのに対して、570Sクーペは、マクラーレン初のスポーツ・シリーズとして送り出された点がポイントになる。
F1直系のカーボン製モノセルIIシャシーを基本に構築され、ミッドに最高出力570psを発生する3.8ℓV型8気筒ツインターボ・エンジンを搭載する。マクラーレンのすべてのモデルに共通する象徴的なデザインといえるディヘドラルドアを570Sクーペも備えていた。
スポーツ・シリーズの2タイプ目のボディを持つのは2016年3月のジュネーブ・モーターショーで発表された570GTだ。
基本的なデザインは570Sクーペを踏襲するが、スムーズなボディラインを描くハッチバックスタイルが特徴。ラグジュアリーGTとして企画されたことからグラスルーフと横ヒンジのグラスハッチを与えられ、220Lのラゲージスペースを確保している。パワートレインとシャシーはクーペと共用する。
デザイン
570Sスパイダーのスタイリングは570Sクーペのイメージを引き継ぐが、仔細に見てゆくとAピラー以降は全くの別物といえる。クローズド状態では少々わかり難いがオープン状態にするとスパイダー独自のデザインが見えてくる。
前席の後ろには’50年代のスポーツカーに採用されていたヘッド・フェアリングを思わせる造形を採用。この部分は格納したリトラクタブル・ルーフのフタの役目も兼ねる。リアクオーター・ウインドウはオープン化により廃されたが、デザイン的にラインがアクセントとして残されている。
クーペのクオーター・ウインドウとリア・ウインドウは連続した構造で、Cピラーは独立した「フライング・バットレス」呼ばれる造形が特徴だった。スパイダーではフェアリング風のデザインとなったため、クーペにあった「フライング・バットレス」セクションが発生するダウンフォース量が低下している。
そのため、スパイダーではリアエンドに備わるダックテール型のスポイラーを12mm高めて、減少したリア・ダウンフォースを補い適正な空力バランスを得ている。
リトラクタブル・ハードトップ
570Sスパイダー最大の特徴がリトラクタブル・ハードトップだ。マクラーレンのスーパーカー・レンジで既に使用されているものと同じメカニズムを持つリトラクタブル・ハードトップが570Sスパイダーに採用された。
キャビンのスイッチひとつで操作でき、開閉時間は15秒。時速40km以下であれば走行中でも開閉を行うことができる。もちろん高い耐候性を備え、あらゆる状況下でもキャビン内は快適に保たれる。
オープンモデルの宿命といえる車重の増大は、570Sスパイダーでは570Sクーペに較べて63kgに留められている。これは剛性が極めて高いF1テクノロジー直系のカーボン製モノセルIIシャシーによるところが大きい。そのためシャシー側の補強は無く、増加したのはリトラクタブル・ハードトップのメカ部分とトリムがほとんどになる。
シャシー
マクラーレンはF1マシンで初となるカーボン・シャシーを1981年にMP4/1へ投入し、1993年にはロードカーのマクラーレンF1で実用化するなど、長年にわたるカーボン・テクノロジーを有する。
570Sスパイダーのバスタブ型のセンターモノコックはその血統を受け継いだもので、量産スーパースポーツでは比類のない極めて高い剛性と、僅か75kgという軽さを実現している。またエンジンは極限まで低い位置にマウントされており、高い運動性能を支えている。
サスペンションは前後ともダブル・ウィッシュボーンで、そこにアンチロール・バーに取り付けたコイル・スプリングとアダプティブ・ダンパーが組み合わせられる。
パワートレイン
570Sスパイダーのパワートレインは570Sクーペと共通の最高出力570psを誇る3.8ℓV8ツインターボ・エンジンを搭載する。
ここに7速シームレス・シフト・デュアルクラッチギアボックスが組み合わせられ、ディファレンシャルにはMcLaren Formula 1のイノベーションであるブレーキステアが組み込まれている。
これは、コーナリング時にイン側後輪に制動力を与えることにより、ハンドリングと安全性をさらに向上させるドライバー・エイドのひとつとして採用されているもの。
570Sスパイダー専用装備
570Sスパイダーに用意されたオプションが専用設計の10スポーク鍛造軽合金ホイールだ。サイズはクーペと同じだが、軽量で高剛性なこのホイールはスピーディなコーナリングを可能にし、トラクションとブレーキ性能を向上させている。
ここに組み合わされるタイヤは、570系のスタンダードといえるピレリPゼロ・コルサで、サイズはクーペと同じフロントが225/35R19、リアは285/35R20となる。
ローンチ・エディション
570Sスパイダーのデビューを記念して720Sで好評だった「ローンチ・エディション」が、最初に生産される400台に用意される。現在日本をはじめとする世界80カ国で受注がスタートしている。
また570Sスパイダーの発売に合わせてキュラソー・ブルー、ベガ・ブルー、シシリアン・イエローの3色がボディカラーに追加された。このほかリトラクタブル・ルーフはボディと同色が基本だが、オプションでコントラストを高めて印象的なダーク・パラジウム・グレーを選択することも可能。
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