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キャデラックだけに許された世界観を堪能できる新型SUV「XT4」とスポーツセダン「CT5」

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キャデラックだけに許された世界観を堪能できる新型SUV「XT4」とスポーツセダン「CT5」

キャデラックのコンパクトSUV「XT4」

スポーツサルーン「CT5」

エアコン、タバコ、食べこぼし、車内のニオイが「車酔い」の原因になるって知ってた?

世界が憧れるアメリカの誇り

オーガスタの森につめかけたパトロンに囲まれ、日本人がグリーンジャケットに腕を通す場面が実際に見られるとは……。松山英樹プロの活躍に感動しながら、同時にアメリカンスポーツの頂点を極めた日本人たちのことを思い出していた。レーシングドライバーの佐藤拓磨、MLBプレイヤーだった松井秀喜、そして大坂なおみ選手などなど。マスターズを始め、インディ500も、全米オープンも、そしてMLBのワールドシリーズMVPといったタイトルのどれもが、永年に渡ってアメリカが築き上げ、守り続けてきた揺るぎない価値観である。そこに挑戦する人たちは皆、そうしたプライドに最大限の敬意を払いながら、頂点を目指す。だからこそ、大きな感動と歓びを世界中の人たちに与えるのだと思う。

当然、プレミアムカーの世界にも、アメリカのプライドを象徴するブランド、キャデラックがある。1902年に第1号車を世に送り出して以来、アメリカンサクセスの象徴として110年あまり、プレミアムカーの頂点にあり続けてきた。今回は、その中から日本に上陸してきたばかりの「XT4」と「CT5」のステアリングを握り、しばしのプレミアム体験へと走り出した。

売れ筋SUVで示したキャデラックの答え

まずはキャデラックのSUVとしてはもっともコンパクトな「XT4」だ。キャデラックにはボディの大きさ順で見ると最大の「エスカレード」から「XT6」、「XT5」、そして今回のXT4と4モデルが並ぶ。人によってアメリカンSUVは「大きいほど魅力的」という人もけっこういる。確かに昨年11月に日本公開されたフルサイズSUV、エスカレードはキャデラックらしい伝統的なデザインを採り入れながら、圧倒的な存在感を創り出すことによって「アメリカのプライド」と呼ぶにふさわしい仕上がりになっていた。

一方でXT4はキャデラックとして初のコンパクトSUV。エスカレードの横に並べてみると軽快さが際立ち、立派感とか押し出し感の強さという言葉では表現できなかった。ただしそれは大きさという1ベクトルでの比較論の話であり、目の前に現れたXT4プレミアムは十分にキャデラックを体現していたのである。ちなみにボディサイズは全長4605mm×全幅1875mm×全高1625mmであるから、日本の交通モードではそこそこ立派なサイズだ。

さっそく乗り込んでみるとしっとりとした手触りのレザーで仕上げられた、少し大きめのシートが体を受け止めてくれる。この辺のゆとりのあるフィット感はキャデラック、というかアメリカ車だと感じさせる部分である。さらに室内には「装備面では一切の不足を感じさせない」といわんばかりのフル装備であり、ここにもキャデラックが守り続けてきた極上の快適さを乗員にプレゼントしてくれるのだ。過去の一時代、ネガティブな印象のあったアメリカ車は作りの荒さは微塵もない。むしろ欧州や日本とは違った「アメリカン伝統のゴージャス感」が上品な空気感の中で実現されている。

さっそく走り出してみると市街地や准高速時にSUVとして気になる重苦しさはほとんどない。急加速時には、最高出力は230PS、最大トルクは350N・mを発生する2ℓの直列4気筒ターボエンジンが少々賑やかになるのだが、自社開発の9速ATがスムーズにつながって加速フィールはプレミアムSUVとしても十分に満足レベルにあって悪くない。

それにしても通常の走行時には静かである。運転支援装置やACCは時間の制約があり十分に走り込むことが出来なかったが、コーナーリングでの車体の傾きなども少なくなんとも安定感があった。終始、ボディのガッチリ感と静粛性を感じながらのドライブはなんとも快適で「小さくともキャデラック」」である。

コンパクトとは言えXT4は、日本の交通事情の中で十分に存在感あるエクステリアだ。

エッジが効いたサイドからリアに掛けてのデザインはスポーティな印象。

金属パーツやレザーなどを適材手書にレイアウトしたインテリアにもキャデラックならではのゴージャス感がある。XT4には全4種類のコーディネートが用意される。

気筒休止システムが組み込まれたエンジンに組み合わせられる9速トランスミッション。

たっぷりとした広さのあるレザーシートが体を包み込む。

XT4の荷室はスクエアで広々としていて、その実用性はかなり高い。

CT5はキャデラックのドライバーズカーにふさわしい走り

満足感を感じながらXT4から降りると新型ミッドサイズセダンとして人気の「CT5スポーツ」が待っていた。サイズ的にいえばメルセデス・ベンツのEクラスなどと同じである。すっかりセダンの影が薄くなった日本市場において、欧州車以外の存在としてどこまでやれるのか? そんな疑問を抱く人もいるだろうが、個人的にはそのデザインのカッコ良さだけでも十分に競争力を持っていると感じる1台だ。

とくにキャデラックのフロントグリルをはめ込み、切れ長のヘッドライトユニットを備えた“睨みのきいたマスク”はスタイリッシュである。エッジの効いたスピード感あるサイドフォルム、さらにはクーペのようなリアのデザイン共々、都会的でスマート、そしてプレミアムサルーンにとっては不可欠とも言えるエレガンスをしっかりと表現し、実に魅力的だ。もはやセダンは欧州車に任せておけ、などと言う少々乱暴な意見に対して、このCT5が「それは違う」という明確な回答になるはずである。60年代、アメリカンデザインは世界のカーデザインをリードしていたが、多様化が進んだ現在は大きな流れを作るというデザインは生まれにくいかも知れない。だが、明らかにCT5は“キャデラック流”をしっかりと確立し、多くのセダンユーザーの心を捉えているのだ。

エクステリアを眺めながらドアを開け、シートに体を預けた。レザーが上質なのは当然だが、ヒーターも蒸れを防ぐベンチレーションも、マッサージも装備したシートは、やはりアメリカ車の良き伝統に従い、サイズ感のある仕上がりで、体をしっかりと支えてくれる。その他の装備面でもキャデラックのスタンダードを貫き、不足を感じさせるようなことはない。この充実装備でありながらも620万円という価格の競争力は高い。

さっそく走り出してみる。駆動方式はスポーツグレードのため4WDである。最初は最高出力240PS、最大トルク350N・mといった2ℓ4気筒ターボエンジンには多くは期待していなかった。悪い意味ではなく“なんとなく想像が出来た”のだが、それはあまりに早計だった。スペックだけを見れば特段に目立つものでもない。ところが実際に走り出してみるとレスポンス良く回転は立ち上がり、10速のATのスムーズネスな加速感と共に、なんとも安定感を伴いながら上品でありながら、切れ味のいい俊敏な走行性を実現しているのだ。スポーツプレミアムサルーンでありながら、欧州プレミアムとは違った味わいの走りなのである。ガチガチのスポーツ感覚の鋭い走りと言うことではなく、アメリカ車が永年熟成してきた“ソフトとハードの程よい配合”を最新のセダンの中で実現しているように感じた。

XT4とCT5をこうして走らせてみて感じたのは、キャデラックは他の何物でもなく、アメリカのプライドそのものであるという事実だった。同時に、プレミアムとは、一朝一夕に出来るものではなく、長き時間と数え切れないほどの経験をつぎ込んで熟成されてこそ、培われ独特の世界観が出来上がるものだと思い知った。決して高価だからプレミアムと言うことではない。だからこそ、マスターズのように誰からも憧れられる存在となるのだ。

CT5スポーツのキリッと締まったキャデラックのフロントマスクとシャープなサイドフォルムがセダンとしてのカッコ良さを際立たせている。

欧州のミドルクラスセダンと真っ向勝負のサイズ。スポーティでコンパクトに見える。

日本仕様でもハンドル位置は左のみとなっている。

視認性に優れたメータパネルは12インチの液晶画面。

内外装デザインと装備の異なる2モデル、ラグジュアリー系の「キャデラック CT5 プラチナム」とスポーツ系「キャデラック CT5 スポーツ」が用意される。

足元の広さも確保され居住性は悪くない。

奥行きも確保され、開口部も大きなトランク。

10速のATミッションのお陰もありスムーズでトルク感のある走りを実現。

XT4プラチナム

価格:670万円(税込み)

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,605×1,875×1,625mm
車重:1,780kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:AT
エンジン:直列4気筒 1,997cc
最高出力:169kw(230PS)/5,000rpm
最大トルク:350Nm(35.6kgm)/1,500~4,000 rpm
問い合わせ先:GMジャパンカスタマーセンター
TEL: 0120-711-276

CT5スポーツ

価格:670万円(税込み)

ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,925×1,895×1,445mm
車重:1,760kg
駆動方式:4WD
トランスミッション:AT
エンジン:直列4気筒 1,997cc
最高出力:177kw(240PS)/5,000rpm
最大トルク:350Nm(35.6kgm)/1,500~4,000 rpm
問い合わせ先:GMジャパンカスタマーセンター
TEL: 0120-711-276

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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