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【欧州は羊の皮的ワゴンが健在】スコダ・スパーブ・スポーツラインへ試乗 271ps

掲載 更新 5
【欧州は羊の皮的ワゴンが健在】スコダ・スパーブ・スポーツラインへ試乗 271ps

珍しい羊の皮を被ったステーションワゴン

text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)

【画像】スパーブの競合 パサートと5シリーズ 全77枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


羊の皮を被ったクルマという仕立ては、欧州でも最近は珍しい。優れたパフォーマンスを、控えめなボディに隠し持ったようなモデルだ。

ファミリー層向けのサルーンやステーションワゴンに、突出したパワフルさを備えたクルマ。見た目はその事実を隠すように、至って平凡な方が良い。特に主要ブランドのクルマであるほど、その差が面白い。

近年はSUV人気に押され、大型サルーンの市場規模は縮小する一方。フォード・モンデオやマツダ6、ボクソール(オペル)・インシグニアなどに用意されていたものだが、今はスポーティなグレードが用意される程度に留まっている。

しかしスコダはフェイスリフトに合わせて、フラグシップとして、スパーブに羊の皮を被ったグレードを設定してきた。まだ、我々は諦めていない、といわんばかりに。

このスポーツライン・プラスに搭載されるエンジンは、ゴルフなどでもおなじみのEA888型2.0Lユニット。1.5Lのガソリンターボモデルと比較して、最高出力は倍近い271psに届く。

フェイスリフト前と比べると、実は8psほど最高出力は低くなっている。WLTPに対応させるため、微粒子フィルターが追加されたのだ。だとしても、スコダとしては最も速く、最もパワフルであることには変わりない。

見た目に関しては、正直いうともう少し控えめな方が良いと思う。交通警察の視線を交わすためにも。

スコダらしい洗練された乗り心地

このハイパワーなエンジンが選べるのは、スポーツライン・プラスというグレードに限られる。ホイールは大きな19インチとなり、上品とはいえ専用のボディキットをまとう。価格もそのぶん高い。

車高は15mm低くなっている。筆者としては長距離移動もこなせる優れた乗り心地を備えてきたスパーブとして、気になる点の1つではある。まずは試乗を初めてみよう。

走り出しはすべてが好印象。スポーツラインのサスペンションと、自慢気味のホイールにも関わらず、市街地でも郊外の道でも、乗り心地が硬すぎることはない。

サイドウォールが集めの、通常のスパーブの方が、より上品に振動の侵入を防いでくれてはいる。だがアダプティブ・ダンパーを装備し、全体的に滑らかでリラックスした、洗練された乗り心地を生んでいる。

英国の道を1日に数百km走ったとしても、自宅にいるように心地良いだろう。市街地に入って制限速度が変化し、思わず別のルートを選びたくなったとしても、このクルマならうなずける。

ボディは大きく、比較的車重は重い。サスペンションは柔らかめだから、ダイナミクス性能の高さだけを狙ったのではなく、しなやかさも残っている。標準のスパーブより姿勢制御は引き締まっているが、ほどほど。このスパーブで思いっきり攻め込もう、という感覚は持たないと思う。

素早く大陸の移動もこなせる

一方で、4輪駆動システムの実力を発揮させれば、大きなドラマや悪い素振りを見せることなく、素早く大陸の移動もこなせる。タイヤ間のトルクを分配してくれる電子制御デフが備わり、グリップ力も安定性も高い。だが、ドライバーが調整を加えていく自由度までは備わってはいない。

パフォーマンスを色付けているのが、パワートレインの設定。エンジンはターボ過給されるユニットとしては、レッドラインまで気持ちよく吹け上がる。2000rpmをわずかに超える回転域から不満のないパワーを生み出し、高回転域まで活発さは失われない。

だがデュアルクラッチATは、ドライブのままでは充分にエンジンを活かせない。アクセルを踏み込みキックダウンを誘っても、適切な段数を選ぶのに少々時間がかかってしまう。

スポーツモードを選択すれば、ある程度改善はされるが、AT任せでは不要に回転数を高めに保つ傾向がある。そのかわり、低速域での変速はとてもスムーズにこなしてくれる。

それ以外、スパーブの良い面はそのまま。同価格帯として並ぶBMW 3シリーズ・ツーリングやアウディA4アバントと比べても、スコダの広々とした後席と荷室空間は明確な強み。ロンドンのワンルーム・アパートのクローゼットより広いかもしれない。

汎用性を重視した評価なら、必要なものがすべて詰まったクルマ、と表現しても違和感はないほど。プレミアムブランドを好む人なら、スコダの控えめなインテリアを見れば、アウディやBMWを選びたくなるはず。だが、スコダも作り込みは充分良い。

性能を知るほど魅力に気づく

派手で高級感のあるインテリアトリムや、色が変化するアンビエント照明は備わらない。かわりにシンプルで人間工学に基づいた、デザイナーの自信を感じさせる雰囲気に溢れている。

一部は1世代前のデザインだと受け取られるかもしれない。少なくともインフォテインメント・システムはしっかり最新の状態に保たれている。

すべてのドライバーが、必ずしも深い満足感を得られるクルマではないとは思う。だが、クルマの走行性能を知れば、その魅力に気づくだろう。性能をひけらかさない見た目でいえば、2020年に選べるクルマではトップクラスだ。

ここまで来て、最後に落とし穴。オプションをいくつか選択すると、4万ポンド(572万円)を超える英国価格が設定されている。性能と見た目、実用性はプレミアムブランドと変わらないが、価格がブランドイメージに追いついていないことも確かではある。

だとしても、人とは違う選択肢としての魅力は充分にある。これまで以上に厳しい環境規制が敷かれる中で、このようなクルマの命も長くはないはず。少し貯金と相談してみても良いだろう。

スコダ・スパーブ・エステート 2.0 TSI 272スポーツライン・プラス DSGのスペック

価格:3万8665ポンド(552万円)
全長:4862mm
全幅:1864mm
全高:1477mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.6秒
燃費:14.0km/L(WLTP)
CO2排出量:159g/km
乾燥重量:1664kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:271ps/5500rpm
最大トルク:35.6kg-m/2000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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みんなのコメント

5件
  • 自分の中では「シュコダ」なんだけど・・・以前北海道で開催されたWRCラリージャパンに来ていたシュコダのワークスマシンには、カタカナで「シュコダ」って書かれていた。
    実際の発音はどうなんだろう?
  • パサートバリアントにアルテオンの動力を与えた理想型。数値よりも力を感じる。新しい7速ミッションの出来は如何に?
    湿式クラッチの6速ではストレスが溜まるので期待
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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