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車椅子の枠を超えた新しい乗り物?! 不自由を自由に変える日本発信の最新技術を紹介/オートスポーツweb的、世界の自動車

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車椅子の枠を超えた新しい乗り物?! 不自由を自由に変える日本発信の最新技術を紹介/オートスポーツweb的、世界の自動車

 日々、世界各国の自動車にまつわるWEBサイトやSNSを隈なくチェックしているオートスポーツweb新車ニュース班が「これは面白い!」と感じた珍事(?)や情報をピックアップしてお届けする『オートスポーツweb的、世界の自動車』。

 今回は神奈川県横浜市に本社を置き、パーソナルモビリティの生産・販売を行うWHILL(ウィル)社が開発した次世代の車椅子を紹介します。
 
 “次世代”を謳うこの車椅子には、自動ブレーキ、傾き制御機構、音声案内など、最新の新型自動車に搭載されている先進技術が数多く盛り込まれています。

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 早速、次世代の車椅子『WHILL Model C』の詳細を掘り下げていきましょう。

* * * * * *

 WHILL社は、誰にでも気軽に扱える車椅子を開発することを目的に、2012年5月創業した、比較的新しい企業だ。

 開発のベースとなっているのは、「100m先のコンビニに行くことをあきらめてしまう」という、車椅子ユーザーの声がある。

 自宅から最寄り駅までの移動、駐車場から店舗までの移動……たった100m先という距離であっても、そこには段差や悪路などのハードルがある。そのハードルを超えることは、簡単ではない。

 車椅子を利用したことのある方なら経験済みだと思うが、道中の段差や坂道を車椅子で乗り越えるのは過酷だ。

 例えるなら、自重と同じ重さのタイヤを自力で転がすイメージだ。歩行者や自転車とのすれ違うシーンでは緊張感が勝る。また、道は広いところばかりではない。狭い場所では、電柱や看板とぶつかる危険性も高い。
 
 それに加え、車椅子に乗っている姿で、なかなか堂々とすることは難しい。どうしても下を向きがちになってしまう。

 つまり、移動することが簡単ではないのだ。これらのマイナスポイントをクリアした車椅子が誕生すれば、どれだけの人が笑顔で過ごすことができるか……。

 そこで誕生したのがWHILL社だ。WHILL社はマイナスの壁をなくして、誰もが気軽に移動することをサポートするという理念を持っている。

 課題は多いが、その課題をひとつひとつ改善し、最先端の技術を盛り込んだ次世代の車椅子の開発に挑んでいるのだ。

 WHILL社の最初の市販品は、2014年に発売された『Model A』という車椅子。この車椅子は、各国から注目を集め、2015年には日本デザイン振興会主催のグッドデザイン大賞も受賞している。

 そして、2017年に『Model A』のノウハウを凝縮させた『Model C』を発表した。『Model C』も世界各国で高く評価され、多くのデザイン賞を受賞。それにより、WHILL社は現在、注目されるスタートアップ企業として表彰されている。

 WHILL社の車椅子は、日本はもちろん欧米をはじめ世界各国で利用者が急速に拡大している。

 早速、WHILL社の看板モデル、次世代の車椅子『Model C』をご紹介しよう。

『Model C』の最小回転半径は76cm。一般的な電動タイプの車椅子の最小回転半径が平均145cmほどなので、『Model C』は非常に小回りが効くことがわかる。

 段差は5cm、上り坂は10度まで対応することが可能。横断歩道の段差や傾斜は苦にならないということだ。

 『Model C』のサイズは幅 550mm、長さ985mm、高さ740mm。車体は3分割式で、シート部、後輪を含むメインボディ部、前輪を含むドライブベース部に分けれられる。

 これはトヨタ・カローラのようなセダンタイプのクルマのトランクに収納できるように設計されている。

 進行方向の操作は、アームに装着されているコントローラーで行う。座席の調整も可能で、背もたれの角度は90~100度、座席は0~6度、アームの位置は前後45mmの幅でスライドできる。

 道路の凹凸による振動対策として、前輪にバイクでも用いられるスイングアーム式サスペンションが内蔵されている。

 走行可能な距離は16km、最高速度は6km。フル充電に必要な時間は5時間で、最大荷重は115kgとなる。

 『Model C』の総重量は52kg。その内訳はシート部14.5kg、後輪を含むメインボディ部20kg、前輪を含むドライブベース部14.5kg、バッテリー2.8kgだ。

 オプション品も充実している。操縦桿はスティック型、グリップタイプ、U字型が用意されている。アームカバーのカラーは8色から選べる。

 注目は、市販の自動車に搭載されている運転アシスト機能が数多く採用されていることだ。

 具体例として、『Model C』には傾き制御機構や下り坂で安全を喚起する音声案内システム、速度を抑制する自動ブレーキシステムが装備されている。

 また、ワイヤレスキーで施錠できるほか、スマートフォンのアプリで遠隔操縦や走行距離を確認することも可能だ。

 『Model C』の本体価格は45万円。介護保険レンタルは月額2700円で展開されている。

 購入方法は、WHILL社のホームページにある問い合わせページ(https://whill.jp/contact)を参照してほしい。

 2020年5月30日からは自転車チェーン大手の「あさひ」全478店舗と、「サイクルスポット」の都内3店舗(今後拡大予定)で無料試乗も実施されている。

■実際に次世代の車椅子に試乗「プレステのコントローラーを操作する感覚」

 実際に『Model C』に試乗した感想をお伝えしよう。

 まず、気軽に移動できる“新たな乗り物”だと感じた。これが一般化する未来を想像すると、携帯電話が“ガラケー”からスマートフォンに移り変わったようなインパクトすらあった。

 見た目の第一印象は、非常にコンパクトだということ。方向舵となる前輪と、駆動輪となる後輪のそれぞれがこれまでの車椅子と比べて、とても小ぶりだ。

 手元にあるスイッチで電源をON/OFF。音声案内に従って操作すれば良いので、初心者でも扱いやすいだろう。操縦桿となるジョイスティックを前後左右することで発進・後退・回転が可能だ。

 操縦は、まるでプレイステーションのようなテレビゲームのコントローラーを操作する感覚に似ていた。

 動き出しは、非常にスムーズ。車椅子に乗り慣れているわけではないが、低速モードでも動き出しが素早いと感じた。加速感は、例えるならEVやハイブリッド車に乗ったときのような印象。走行音もほとんどしないため、静粛性も高い。

 実際に試乗して、改めて旋回半径の小さいことに驚く。狭い場所でも、スムーズに回転することができた。後ろを振り返ることも、無難にこなせた。

 この“超小まわり”には、特殊な形状をした前輪が大きく貢献している。

 操縦桿の形状は好みが分かれるだろうが、WHILL社の車椅子はオプションパーツが豊富に用意されているので、好みの仕様を選ぶことができる。

 分解も試してみた。シンプルな構造なので、ドライバーなどの工具も不要なため、着脱がしやすい。

 性能を維持しつつ、誰もが扱いやすい形状に作り上げられているところに、技術者たちの苦労が垣間見れた。

 懸念点は、パーツが重いことだろう。クルマのトランクに積み込む際などには、力が必要だ。打開策としては2人で行うか、スロープがあると良いだろうと感じた。

 段差は5cmまで乗り越えられるということだが、欲を言えばもう少し高い段差にも対応できると嬉しい。

 今回の試乗は室内に限られたため、残念ながら街中へ出ることは叶わなかった。しかし、今後『Model C』のような車椅子が受け入れられるためには、道路交通インフラの整備、街ゆく人々のサポートなど、車椅子を取り巻く環境の構築が必要不可欠だと、実感した。

 なお、そんな社会インフラへの問題提起も含め、WHILL社はさまざまな施設に次世代の車椅子を導入している。

 2020年6月8日からは、羽田空港第1ターミナルゲートエリア内に『Model C』が導入されている。専用待機場『WHILL Station』から3~7番ゲートまでの移動を自動運転でサポートし、利用後は無人運転で待機場へ戻るシステムだ。

 これによりキャリーケースを引いた多くの旅行客が行き交う環境での利用ノウハウが蓄積されることが考えられる。

 車椅子が快適に共存できる、新たなインフラ環境の整備が進み、街中で『Model C』を頻繁に目にできる日の到来が待ち遠しい。

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